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【麒麟がくる】脚本家 池端俊策氏 講演会 内容まとめ③

池端俊策氏(脚本家)講演会
脚本家の仕事~NHK大河ドラマ「麒麟がくる」を振り返って(2023年1月23日埼玉県蕨市開催)
講演内容まとめの続き

池端先生の講演会 内容まとめ
①はこちら
②はこちら
④はこちら
⑤はこちら



かっこよくない光秀を憂う長谷川さんを説得



このあたりで、池端先生
「僕、話長くなっちゃうんですよ~笑」 と
やはり自然に出てしまう可愛さ

1 主役はご飯 / 2 本能寺が待ってる / 3 古代からの地政学
 三本立てで、憂う長谷川博己さんを説得


①主人公はご飯 そして本能寺がある!


1年の撮影を通して一番疑問を向けられたのが、
光秀そんなにかっこよくないということ

信長はかっこいいし、
仲間で悪な感じで面白い人たちがいるけれど
肝心の光秀はどこか中間にいる
ヒーローではない

それはそうで、40歳から出てきた人が
すぐにヒーローになれるわけがない
側に信長がいるから影はどうしても薄い
そういう人はどの時代にもいる
その人なりの魅力が必ずある



長谷川博己さんは撮影中、頻繁に電話してきた
後半になると頻度が多くなり、

長「僕、そんなにカッコよくないですよね
 信長はファンが多い、帰蝶も皆すごく面白いと言う、
 周りの人物は面白いけれど、光秀は
 エアポケットに入っている気がしませんか?
」と、

池「いいの!!」
 「ドラマの主人公は食事でいうところのご飯
  そんなに濃い味でなくていい。おかずは濃くていい
  そうじゃないとバランス取れない
  あなたはど真ん中にいて毎回出てる
  そんなに濃い味の役をやったって飽きちゃう」

 「最後に本能寺があるんだから!

 「それはあなた我慢!」と伝えた笑 

この部分は何でも言い合える関係だからこその
(カッコよくないんですけど〜!先生〜!)
と、いった会話のニュアンスと受け取った 笑

先生の言葉のトーンから、
フランクなやりとりができる間柄だと伝わって感動 
 
いいの!のところは子供に言い聞かせるような感じで
先生の可愛さ〜





②地政学的に日本には光秀のような存在が中心に必要


ーこの項目の要約一
・古くは聖徳太子、光秀の時代も、現代も、
 地政学的に絶えず周囲を見まわす必要がある日本

・日本という国をまとめ、平和を維持するには
 周囲を見回すことができる光秀のような
 “けっしてかっこよくはない” 存在が中心に必要



(ご飯の話に続けて長谷川さんに話したのが、)

大河ドラマ太平記を書いた時、
聖徳太子を書いた時、
麒麟がくるを書いてる現在(今)、

いずれも同じく、日本人が、日本が、
その時々で《今》どういう時代を
過ごしているのかを思う


古代からの日本
古代から中国と朝鮮半島があって、
そことのやりとりの中で日本の政治は動いていた
文化は大陸から流れてきている
日本人とはそもそもそこから流れてきた人達で
作られている

日本人というのは聖徳太子の時代からどの時代も、
今の日本と同じような悩みを抱えている

三国時代の日本
例えば、朝鮮半島が新羅と百済に分かれて戦っていて、
その上に高句麗(北朝鮮)。三つに分かれている
そうすると百済・新羅というのは
左右に分かれていていつも争っていた

百済につくか、新羅につくか日本はいつも迷う
そして日本は百済につき、百済は新羅にボロ負けし、
日本は百済の敗北に巻き込まれた

朝鮮から船で帰ってくる時、
日本海が血の色をしたというくらい
日本も百済の兵隊も死んだ
その時百済から流れてきて日本に居ついてた人達の
子孫が今の日本にいる

参考 テストに絶対でるとこ


鉄砲が伝来した時代
中国という国があって、
どこかのタイミングで鉄砲というものが伝来してきて、
戦う物として有利だぞ
ということがそのあたりの時代から始まり、
そうなると鉄砲をたくさん作るにはどうするか?
と考え、外国からどんどん輸入するということに

信長の時代、キリストの伝道師が来て、
当時の武士・権力者たちはひじょうに興味深く
そこからヨーロッパの文明のにおいをかいでいる

そういったスタンスの武士や権力者がいる一方で、
日本には日本の八百万の神があるので、
外国文化が入ってくることを当時の朝廷は喜ばない
という側面もある

信長は何か武器を持ちたい。
ヨーロッパから来た何かを手に入れるということが
非常に有利じゃないかと考える


今の時代
そういうことを考えると、
今の日本と状況はそんなに変わらないんじゃないのと

《敵はどこなのか》それはその時々で変わってくる

現在も、
大陸があって朝鮮半島があってアメリカがあって
日本という国は島国で絶えず左右を見まわしながら
自分の国を維持していく
ということを考えざるおえない
そういう国であることは、今も昔も変わりない

と、いったことを長谷川さんに言うのです笑 


光秀も長谷川さんも同じ日本人
あなた日本人なんだよと。
光秀もやはり周囲をいつも見まわしながら
信長に付くか、足利に付くか、天皇方に付くか、
そういう心理状態にある

「はっきり俺は〇〇だ!」
という旗印を上げる人はかっこいい。

でもそれで、
国をまとめていけるのか、平和を維持できるのか、
そういうことが問われる

だから色んな立場の人の
その中心にいる光秀というつくり(構図)にした
それが自分に一番しっくりくる光秀像だった

長谷川さんやっと納得
この話をして、長谷川さんが最終的に、
分かりました、分かりました。やります!」と

この繰り返し感、実際そうだったのだろうなと 笑

壮大な池端先生の説得により、長谷川さんは
光秀はヒーローではないが、
「エアポケットには入ってない」存在だと理解
周りより”かっこよくない”という満たされてなかった
長谷川さんの心のエアポケットは無事埋まる 笑


40話過ぎたあたりから、いろんな話がやってきて
信長と決定的に争うことになる。
そうすると今までじっと我慢してきた分、
光秀がひじょうに立ってきて、我慢の分が生きてくる

だから信長との戦いはひじょうに劇的に見える

そうすると、長谷川さん「いいですね!」と。笑

最後の4話は、
彼(長谷川さん)はノリノッてやっていた
信長を象徴する大木を夢の中で切るというのを
夢中になってやっていて、そういう仕事をやったんです
(※)

この時の先生の言う「いいですね!」の言葉、
長谷川さんが言ってるのを想像できる響きで、
なんだかアツくなった

(※)〜そういう仕事をやったんです、の部分
おそらくニュアンスとしては、
長谷川さんが池端先生の説明で納得し、
最後4話、光秀がずっと我慢してきたことが
生きる役のあり方(仕事)を表現できていた、
ということだと理解




脚本は今生きている時代を呼吸して書く

一過去も現在も扱う時代は違えど
 《同じ日本》を生きる人々を、
書いている今の時代を呼吸(吸収/反映)しながら書く一

 
ドラマを作るときには、
自分が《今》生きている時代を
自然に意識したり、吸収したりしながらやっている

人間とは生きていく中で、
時代と切り離せないものであり、
社会と全く隔離された “あるフィクション”の中で
生きるということは、リアリティがない

どこかで生きている時代というものを
吸収しながら呼吸しながら生きていく

その中で
犯罪が起きたり、恋愛をしたり、家庭崩壊をしたり、
あるいはとてもいい生き方をする人もいたり、
いろいろそれがドラマになる

大河ドラマといえど、
やはり今の時代と全く切り離して
不思議なSF的な世界をやると、
見る人違和感を感じる

時代は違えど、どこかでやはり同じ日本人で、
どこかで似たような呼吸の仕方をしている。
そういう人間が活躍するから、主人公に感情移入できる

そういうものを作らなければならないと思っている

つづき④はこちら   


一番難関のまとめ ③なんとかカタチに
メモしながら 講演会中に理解しきれなかった部分
解読して理解できた〜
池端先生の壮大な頭の中を知ることができた喜び

※念のためですが、記事については
 あくまで個人作成のものであり公式ではありません
※うろ覚えのところもあり
 一部正確でない部分もあるかもしれません

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以下は参考まで

池端先生の ↓ このトーク部分、蘇る過去の記憶



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先生のしっくりくる 光秀像はモテモテ


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