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AIが人を上回って、人が政治でできること

 emadurandalです。タイトルが大仰で恐縮です。

 いわゆる「強いAI」(汎用AI)を作ることは極めて困難、とされている一方、特定の最適化問題において、AIは既に人間の専門家を超える結果を出し始めています。


 人類の統治・運営という意味でも、やがて人に変わりAIが徐々に担っていく領域が増えていく可能性を私は感じています。

 政治は意思決定と利害関係者間の交渉・妥協が繰り返される世界です。その中で、特に意思決定に関しては最後まで人がやるべきという意見は多かろうと思います。私も最終的な意思決定については同感です。

 しかし、こと最近のウクライナ侵攻や、かつての第1次、第2次世界大戦、そして冷戦時代の両側の支援を受けた独裁国家などでの為政者の振る舞いを見ていると、人間が無理に意思決定をやらない方が良いのでは、と思わざるを得ないケースが多々見られます。

 為政者を決める統治機構で、確実な賢帝を輩出できることを担保できない以上、最終的な意思決定者が一人であることは、どこかの世代で悲惨な結果が生まれる、もしくはその時降りかかる国難を乗り越えられない可能性を孕みます。

【歴史上で一番の“暴君”って誰なの?】歴史に名を残す暴君 三選!

 そんな時、AIが優れたサポートとして為政者やその政権チーム、議会の認知バイアスの歪みを修正できるなら、今までの人類が犯してきた悲惨なケースの多くを回避できるかもしれません。

 少なくとも現段階のAIがもう少し進歩すれば、まずは民間や政府系シンクタンクの機能の多くをAIで代替できるかもしれません。シンクタンク業には個人的な憧れもあり、決して貶める意図はないのですが、シンクタンク機能は対象領域の情勢報告・提言がその主な役割です。

 つまり本質的には、入力さえあれば答えはAIがネット上のデータをOSINTすることにより、多くのアウトプットを作れてしまいます。情勢報告や提言には強い人の意志は必要なく、インフォーメーションだけでなく、短期的なインテリジェンスの生成程度なら現行のAIでもある程度は可能と思われるからです。

 実際、AI技術の立役者であるGAFAMがシンクタンクを超える提言力を持つようになるのでは、という指摘の声も見られるようになりました。

宮家邦彦のWorld Watch「AI時代のシンクタンク」(産経新聞)

 また決議についても、一般に平時においては少数人による意思決定ではなく、多くの意見を集合した方法で物事を決めた方がバランスに優れ、より好ましい状況を作ります。
 今後はもっぱら人の集合知とAI、それぞれの意見を共に重用するようになっていくでしょう。例えば既に投資の世界では、専門家によるレビューとデータによるレビューが、ほぼ同格の指標として判断材料になりつつあります。データによる客観指標の生成に、AIが担う部分がより増大していくイメージです。

投資情報サイト「SeekingAlpha」のQuant Rating画面。アナリスト評価と同列の評価指標として運用されている。

Quant Ratings & Factor Grades FAQ

 そうした中で、人に残された知的活動の役割とは何か。

 よく言われることですが、AIの汎用化が進めば進むほど、人に残されるのは、「ヒトでなければできない、ヒトならではの部分」であります。
政治の場であれば、それはやはり為政者や政策決定者の、人としての意思決定の部分がその代表格と思われます。既存のデータだけでは最適解が出せない部分を、数値化してAIに渡せない、長年のカンやセンス、信念などによって「えいやっ」と決めなければならない部分です。

 その際には、AIは悪魔の代弁者の役割を担当しても良いでしょう。

 AIが手厳しい優秀な参謀にまでなれるかは分かりませんが、王様に唯一、無礼を言うことが許される宮廷道化師のような存在であっても十分価値がありそうです。為政者に逆らえる者が実質誰もいない状況において、政治や地政学がどうなってしまうか。それは昔も今も世の中を見渡せば明らかだからです。


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