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ラブライブのリアルユニットはリアルだけで楽しんでもいいのでは?~声優ユニットはイタコであろう論~

ラブライブのファン界隈を観測していると、キャラクター主体でラブライブを見る人と、キャスト主体でラブライブを見る人との乖離が目立ってきてると感じています。

それ自体はまあ有り得る話なのですが、キャラ主体で見る人がライブには興味がないかといえば、むしろ、全通したいのにバッティングするのはおかしいと批判したりむしろライブに関して大変積極的だったりする。

そのことが本当に不思議で不思議で仕方なかったのですが、アイマスの初期~中期を支えた石原章弘氏はこのような指摘をしていて腑に落ちることがあったのです。


アイマスの仕掛け人の教え

僕(石原章弘)はプロデューサー(ファン)がステージの上に見ているのは「演者本人」ではなく、演者の後ろにおぼろげに見える、ゴーストのようなスタンドのような「担当アイドル」(推しているキャラクター)だと思っています。…(中略)…極端なことを言うなら、アイマスのステージの上の演者はもともと、巫女やイタコのようなものだと思っています。

https://dengekionline.com/elem/000/001/189/1189870/・強調および()内は引用者

つまり、ファンがキャストのリアルライブに求めているのは一体なんなのか、実に興味深い指摘です。どっちが先かは知りませんが、これアイマスファンの間ではよく言われることで、まず2次元有りきでコンテンツがあるとして、じゃあなんでわざわざ声優にライブをやらせるのかといえばそれは、次元の違うものを世に降ろすイタコなのだということです。

声優のライブはイタコ芸である

イタコや巫女という表現が宗教がかって嫌だとか問題だと言うなら、「舞台の芝居の音楽ライブ版」であって「イタコ」は「舞台役者」と言っても良いのかも知れないですが、とにかくライブというものは自分たちの次元にないものを擬似的に投影させ、再現をする儀式の場所ということになります。

そこに求められるのは、ともすればパフォーマンスのレベルそのものよりも「『演技』のうまさ」であって、断じて演者自身がアイドルとして観客にステージを披露する場ではないし、ステージの評価基準も絶対的なパフォーマンスの拙攻よりも、如何に2次元のものを現実に引き出せたかということになるのです。

また、こうしたスタンス「声優はあくまで裏方であるべき」という伝統的な考え方とも合致し、ダンスや歌もそこまで実力は求められていませんから、ライブコンテンツに非常に相性がいいやり方となるし、普段ライブに行かない人も行く人は出てくる。

彼らは「舞台役者」とか「イタコ」として声優を見ていて、ライブも「アニメを再現する」ということにやたらこだわる。故に、そうした儀式から離れたと言える、CDのジャケットに顔写真だしたり外部のフェスにズラズラ出てくると「出しゃばりすぎ」となる。

けれど、運営はリアルアイドルのような振る舞いをする声優をコンセプトにしてしまった。この違いというのは微妙であるが決定的で、声優系ユニットでもi☆RisやTrySailあたりと比べても全く違うものが求められているのです。

更に如実なバンドリ

このあたりが更に如実なのはバンドリで、ポピパ以外ステージではアンコール前までは、ずっとキャラクターの役がやっている体裁で演奏しています。だから作中のMCも例えば、「相羽さん」じゃなく「友希那さん」と言っているし、仮面をつけるバンドなら実際にキャストも仮面を付けてもらっているわけです。

しかし、とある人から「バンドリなんて『声優の割には凄い』って安い評価でとどまっているうちにはコンテンツも本人も充分に育たない。『MyGo!!!!!』や『AveMujica』なんて最初は声優を隠してたけど、そんな声優当てクイズみたいなことをやっている場合じゃない」と言われて当時はそうかな?と思っていたのですが、今にして思えば全くその通りだと思えるのです。

結局、バンドリはプロセカがリリースされてからゲームの人気が急落したわけで、プロセカと比べても差別化要素になりえそうな、声優が生演奏するリアルバンドというコンセプトは必ずしもお客のつなぎとめにはなっていなかった。

当時はボカロのカバーが売りだったわけでお客は「ジェネリックボカロ」としてしか考えていない人が多かった。リアルバンドだって合同ライブで横浜アリーナでライブは出来ても、あれだけバンドが居ても地方でアリーナツアー打てるのはRoseliaくらいしか居ない。

RASやモルフォニカは、プロのスタジオミュージシャンとして一線級の活躍をしてきた人を連れてきても、ある程度はブランド力でも売れても頭打ちになったのだから、「イタコ芸の限界」と言えるのかもしれない。

蓮ノ空はイタコ芸の極地である

さて、Liella!を低く評価する人ほど、評価が高いのが、蓮ノ空なのですが、キャストが配信系コンテンツでしていることは、3次元じゃなくCGではありますけど、脚本を起こさないと、本来は動くことがないキャラクターを自らのアドリブで動かしているわけで、その様は「舞台役者」ではなく「イタコ」そのもので、活動記録のストーリーの良し悪しより、「キャストが2次元のものを我々のもとに憑依させる」という「彼らが見たいもの」と、「提供しているコンセプト」がピタリと一致しているのです。

予算や人出のふんだんにつかたMVをやめて、人気のイラストレーターを起用したリリックビデオだったり、キャラデザも室田雄平さんが一切関わっていなかったり、表層的には「今までのラブライブの癖をとったシリーズ」という感想でしたが、それを期にせずに受け入れてくれた感じがあります。

私が思うに、蓮ノ空とLiella!はキャストの選び方が微妙に違っていて、蓮ノ空は元乃木坂46の佐々木琴子も声優事務所に移籍しているわけで、オーディションの次点で「声優を生業として生きていく」ことを選んだ子から選んでいる感じがある。

それに対して、Liella!は「芸能界で声優にとどまらずいろんなことをやりたい」「芸能界で生きていく上でできることの幅を広げるうちの一つが声優」という子を積極的に選んでいる感じがあるし、例えばミス・ワールドを受賞した人が配信で全く炎上せずに面白い話を続けられるというなんて言う人材んてそうそう居るわけがなく、「Liella!とくらべてステージのパフォーマンスの実力差は劣っているかな」と私は思っていますし、そこは妥協したのでしょう。

しかし、そうした悪いところも受け入れてくれるいわば相思相愛の関係だし、『ラブライブ!』というIPが「イタコ芸」を続けるには、「蓮ノ空のコンセプトこそが決定版ともいえるもの」であると私は確信を持って言えます。

リアルアイドル路線とイタコ芸は似て非なるものである

さて、リアルアイドル路線というのは、コンセプトとしては面白いし続けてほしいのですが、一方で、リアルアイドル路線とは似て非なるものである、「イタコ芸」を求めるへの配慮が足りなかったのでないか。あるいは意図的に誤解させて売るようなことをしていたのではないかと思うことがあるのです。

数百項目もツッコミどころを羅列するような人とか、推しのキャストがあんな糞アニメにキャリアを縛られていると敵視する人もがいるけど、そういう状態に至るのはそもそもコンセプト自体が制作者の意図(それ自体の良し悪しの評価は別の問題なので注意)と、その人の欲しいものとズレているのだろうと思うのだけど、ちゃんとこのアニメは「君の見たいものと違うんだよ」と教えてあげてることができなかった。これは運営の見せ方の問題であり、運営の責任であると思うのです。

さらにいえば、「リアルアイドル路線」と言うなら「アニメに興味はないけど、リアルユニットを楽しむ」という楽しみ方もあって然るべきで、ファンの間でもっぱらアニメとリアルが抱き合わせ販売みたいになっている現状があります。

だけど、もしフェスとかでユニットを知ったお客さんもアニメは敷居が高いと諦める人もいるかも知れないわけし、あの子達かわいいと言っている人も「アニメなんて見なくて良い」とかいうネガキャンに負けずに、ちゃんとユニットを追いかけてくれるのかとい不安になってしまうのです。

3次元と2次元の違い

そのあたり、アニメを楽しんで、なんなら投げ銭感覚でディスクメディアも買うけど、ライブには来ないって層も居るし、むしろそうした層の方が遥かに多いと思うのだけれど、アニメかユニット、どっちかだけ楽しんでも良いんだよ(もちろん両方来てもらったほうが嬉しいにしても)という楽しみ方を提案出来なかった運営にも責任があるのではないかと思うのです。

それこそ前回のコラムで偉そうに「『アニメ発』の呪縛から脱するとき」と大見得を切ったわけですが、例えば、伏線もなしにサプライズで新メンバーというのはリアルのアイドルならまあ普通の話です。

しかし、「ただ進学するから新メンバー」というのは現実ではリアルだけど、アニメでは「おかしい」と言われてしまうし、蓮ノ空なんて『Dream Believers』の歌詞とは裏腹に相当にギチギチにレールとロードマップを引いて動かしている(はず)で、いつ何を出すのかというのは、綿密な計画があるけど、逆にリアルアイドルというの反響で路線変更も平気でしちゃうけど、それをやったら「無計画」と言われてしまう。

もし出すなら相応に布石を打っておかないといけない。それこそ『MyGo!!!!!』だって最初は覆面バンドとして出して、「実は香澄たちの通ってる学校の生徒です」と明かして、アニメを出して、そしてガルパに登場させるまで1年以上の時間と(おそらくリアルのアイドルと比べ)多額のお金を投じてなじませた。それがリアルとリアリティの、3次元と2次元の違いというものです。

『ラブライブ!』という作品はスクールアイドルというアマチュアのアイドルさえだせば、男子アイドルでも、ハイファンタジーの魔法世界でもなんでも良いのかも知れないですが、キモでも鬼門でもあるのはリアルユニットの売り方です。

正当な手段で入手したものであればお客は推理小説を巻末から見るのも自由なわけで、タレントに対する楽しみ方は人それぞれなはずです。

世界中で開かれる出演イベントを追いかける人もいる。在宅で番組だけ追いかける。中には出先にアクリルスタンドを持って、イマジナリー彼女(彼氏)のロールプレイングのようなことをする人もいますが、それらはストーカーなどの触法行為しない限りは自由なはずです。

フェスやバラエティに出るのはそれだけ戸口を広げる意味がありますが、営業的な施策なのはわかりますが、その先の楽しみ方も広げていかないと彼女らの努力を水泡に帰すことになるということを肝に銘じてほしいものです。

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