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おじさんの七不思議

今年から地域の某役に就くことになり、いろんな会議に出席させてもらうようになったのだけど、そこでいつも感じることがある。

それは、おじさんは何故、自分のことをやたらと語りたがるのだろうということだ。

自己紹介の時も、議会中も、質疑応答タイムでも、自分に発言の順番が回ってくると、必ず「自分のことを延々と説明する」というところから始まる。

自分の過去の職歴、今の役職について、どういう活動をしているのか、そこでの自分の武勇伝・・・云々を、懇々と話してから、ようやく本題に入る・・・というパターンなのだ。

もちろん、爽やかにサラリと上手に話をされる素敵なおじさまも存在してはいらっしゃるけど、そうではなく「独り語りの独壇場」を満喫されている、ちょっと傲慢な臭いを漂わせているおじさんが、ある一定の割合で混じっているのだ。

こういうタイプの人は、とにかく話が長い。長くてうんざりする。みんな聞いていないのに、自分語りをしている自分に酔いしれていて、気が済むまで話を続ける。「この場は会議であり、喋る時間が限られている」という概念が無い。司会者もおじさんに気を遣ってストップがかけられないから、話は延々と続くのである・・・。

今日、私はオンライン会議に参加した。研修も兼ねてのzoom会議だ。

私は自宅でのんびり参加させてもらった。

最初に講師の先生の話があり、私はメモを取りながらじっくり聴講した。さすが先生は日々教鞭を執られている大学教授だけあって、講義の進め方が抜群に上手い。とても分かりやすくて勉強になった。「あれ?もう終わったの?」と思うほど、とても楽しく充実した内容だった。

その後、質疑応答となった。

この時、真っ先に手を挙げて質問してきたおじさんがいたのだけど、とにかく話が長くかった(汗)。

質問タイムのはずなのに、おじさんは、まず自分の肩書きの説明から始め、どうして今の役に就いたのかを懇々と語り、更に、今、自分が取り組んでいる活動の詳細な説明を続けた。(この辺りから、温厚な先生の顔つきが険しくなり始める。) やれやれ、おじさんの活動内容の説明が終わった・・・とホッとしたのも束の間、次は「コロナ禍」の話になった。コロナ禍でいかに活動が大変だったのかを説明し、更に、コロナのせいで活動が中止になったことを懇切丁寧に語り出し、コロナ中止になったけど、気を取り直して何か新しいことを始めることを決意したところへと話が進んだ。

この時点で、もう5分以上は経過している。最初はウンウンと聞いていた講師の先生も少しずつキレ始めてきたのが、パソコンの画面越しからビンビン伝わってきた。参加者もみんな疲れ始めている。

でも、おじさんは話を続けた。ようやく話の着地点が見えてきたような、暗闇の中から一筋の光明が見えてきたような流れになり、このままフィニッシュにもっていくような機運を感じた。よし!もう少しだ!参加者の張り詰めた空気が少し緩み始める。もう少しだ。もう少しで話が終わる。もう少しの辛抱だ。頑張れ、参加者のみんな!

・・・しかし、皆の期待は削がれ、おじさんの話はまだ続いた。もういい加減にしてくれ。皆が「ここで終われよ、ホトトギス」・・・という気分にさしかかった頃、おじさんは話を一気にフィニッシュに持ち込んだ。

よしっ!

おじさんの質問がようやく明らかになるー!

みんな期待に満ちあふれた気持ちでおじさんの質問を聞いた。ところが・・・である。こんなに長く話を引っ張っておいて、最終的におじさんが放った質問とは、「夏に空き地に穴掘りをしてみたのですが、法律やその他の制限に引っかかって最後までできませんでした。こういう場合、どうしたら良いのでしょうか?」だった。

へっ?

何、それ?

これは、素人ペーペーの私ですら「はっ?」と二度聞きしたくなるオチだった。

何故、この講義でその質問をぶつけるの??

私はちょっと混乱してきた。参加者も皆が混乱しているはずだ。

しかし、先生はこの質問をどうとらえているのだろう?

そして、どう答えるのか?

ちょっと興味が湧く。おじさんに寄り添うのか?突き放すのか?

それとも、違う展開に持っていくのか?

この時の先生は、さすがに温厚な表情が消え、固く強ばった顔つきになっていた。(ここでゆっくり話すと、また質問者のおじさんが唐突に話し出すような嫌な雰囲気だったので)、軽く質問内容を復唱して確認したあと、先生は早口に、

「あのですね~。それは穴を掘る前に、まずは法律やその地域の制度について勉強をされて、できたら事前にその道の専門家に相談しましょう。」

と答えた。

それを聞いて、おじさんはまた何かを言おうとしたけど、先生は、

「何かを始められる時は、ちゃんと事前に専門家に相談してくださいね!」

と力強く答えて、一気に押し切った。

ひぇー!すげー!力技だ。大学教授の威信を感じさせる堂々とした解答である。

こうしておじさんの質問はチーンと終わった。

この様子は、さながら「幕尻力士が横綱に果敢に挑戦したけど、はたかれて土俵に手をつき、あっけなく終わった一番」・・・そんな感じであった。

その後、会議は粛々と進み、平々凡々に終わった。

とにかく、前講が長すぎるおじさんが多いんだよね・・・。

自分の肩書きやキャリアの前講はいいから、サクッと本論に入って欲しい。

たかが質問なんからさ。

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