失恋の、周りに理解されない事情。カサンドラ症候群。

大学四年の秋、1年半付き合っていた彼氏に突然フラれた。
「価値観が違いすぎる」とかいう、こっちからしたら都合の良すぎるズルい理由。
がんばって彼に歩み寄ろうとしていた私の努力を全て否定された気がした。

周りに愚痴を言い過ぎたこともあるのだけど、「とっくに冷められてたんじゃない?」とか「あいつは良い奴だよ」とかそんなことをみんな言ってくる。

そんなことは分かっているのだ。
良いところがあるから付き合っていたのだ。それに、常に私が怯えていたのは「彼に冷められてるんじゃないか」という不安だった。

どうにもこうにも周りの発言は元彼を肯定し、私を否定するもののように感じられた。
というのも、元彼擁護派はすっかり元彼の外面に騙されているからである。

私は専門家でもないし、完全に私の主観でこの文章を書いているので、もし誰かを傷つけてしまったのなら本当に申し訳ないと思う。

このような前置きをしたうえで述べたいのが、おそらく元彼がアスペルガー症候群のグレーゾーンで、私はカサンドラ症候群になっていた、ということだ。 元彼にはアスペルガーと医者に診断された身内がいた。

好きで好きでたまらない。理解したい。なのに得体の知れない壁がいつも私たちの間にあって苦しい。
その壁は元彼の外面によって上手く隠されて、周りには見えていない。
見えているのは壁の前で暗い顔をして不幸な話ばかり、自己嫌悪に浸るメンヘラな私だけである。
周りからしたら、「元彼はメンヘラな彼女とよく続いているね」といった感じである。

本当につらかった。
私は「元彼が誰よりも優れている」世界観に囚われていた。
彼は私の前でよく、私の友人も含めた周りの人を見下す発言をした。
私の趣味や楽しかった話をつまらなさそうに聞き、私の好きなものにケチをつける。
自分の好きなものについては、私が興味なくても話し続けるのに、「君とは会話が続かない」とか言う。

たいして私を褒めたり、愛情表現したりする訳では無い。自分の興味のないことなら話を流す。「俺は褒められたんだ」とか、「俺はみんなに好かれている」アピールをするくせに、私ががんばったことは「ふーん」で片付ける。「〇〇されると悲しいからやめて欲しい」と言うと拗ねるだけで改善しない。

「彼は優秀、彼にはたくさんの支持者がいる。私はそれ以下の人間」という世界観の中に、いつの間にか取り込まれていた。
だから、周りには私を大切にしてくれる人がいたにも関わらず、全ての人を疑い、自分はダメなやつだ、周りはどうせ元彼の味方で私なんかどうでもいいんだ、と思い込んだ。
そして、信じてくれる人に八つ当たりしたり愚痴ばかり話したりした。
(彼女たちが未だに私を受け入れてくれていることには本当に感謝しかない)

すごく素敵で好きな人。
でも何故か心の距離は遠くて、向こうは私の「存在」以外の部分に興味がなさそうで。
もっと私が彼を理解していれば、私がわがままを言わなければ、何であんな良い人に酷いことばかりしてしまったのだろう。
付き合っている時から別れた後まで、ひたすら自分を責めた。

何かがちぐはぐだった。
好きなのに、向こうも私を「好き」と言って甘えてくるのに、普段の彼の行動はそれに伴っていない。

周りから見たらすっかり倦怠期のカップル。
でも、二人きりで会う時は楽しく仲良く過ごしていた。

気がついたら私は元彼の世界を生きていて、自分の好きなことややりたいこと、将来の目標を見失っていた。
元彼の共感を得られる自分を演じるあまり、他人にばかり尽くして自分自身は放ったらかしだった。

結局、心がボロボロになって、用事のない日や時間はベッドの中で泣いて、時には授業をサボって、「ごめんなさい」と周りの人への謝罪を呟いて、自分で自分を責めて、インターネットで「死にたい」と検索した。

変な例えだが、心はまるで水溶き片栗粉のようなのだ。
普段はどろどろとわだかまっているのに、彼に会う時、気を遣う知り合いと接する時は無理やり力を加えて、固く、どろどろとしていない自分を作り上げる。
「悩みなんてないよ」という笑顔を無理矢理作ることにはやはり無理があって、でも周りは暗い人間とはわざわざ接したくないだろうからがんばる。1人になった時には「これ以上がんばれないよ」と泣く。

せっかく心療内科に行っても、彼が落ち込みの原因だとは認めたくなくて、彼には関係の無い別の悩みしか話せなかった。
それに、何故か心療内科に行く時は元気で、先生に「問題なさそうよ」といった態度を取られる。
「睡眠は大事だから」と睡眠薬を試しに処方してもらったが、頭痛やぼんやりとした感じが続くだけだったのでやめた。

その後、私は迷走した。
ポジティブな自分とネガティブな自分の間を。
別れて急に重たい足枷が外れたように気分が楽になった。
元彼は地味で垢抜けない私が好きだったけれど、私はそれを望んでいなかったことに気がついた。
友だちがとても気の利く子で、失恋して落ち込む私を連れ出してくれて、美味しいものや綺麗なものに触れる機会を作ってくれた。すると、失恋の負のエネルギーは見事にそちらに向けられ、可愛いお洋服や化粧品を買うなど、ばーんとお洒落に目覚めた。
自分の好きなものはなんだったか思い出して、友だちと楽しく過ごしていた。

その反面、寂しさを紛らわせたくて、仲の良かった後輩とセフレになってしまい、最終的には気まずくなってしまった。セフレがいたことはなかったけれど、これを機に当たり障りのない関係性を求める、泥水をすするような日々が続いた。
結局割と早く、2人目のセフレがクズっぷりを発揮した時に目が覚めたが、1年弱はちょっとだらしがなかった。

改めて、決してアスペルガーを否定したり、差別したりしたいわけじゃない。アスペルガーだという証拠もない。
ただ、なんかちょっと周りの人には想像しづらい恋愛事情だったような気がしてしまうのだ。

理解したくても越えられない壁かあるんだな、お互いが苦しいだけだよな、ということが身に染みた恋愛だった。

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