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愛に包まれる、毛皮のコート

先日、ソウルに住む友達Мちゃんと一緒に写真を撮った。
冬だし二人で毛皮のコート着て、ということで。



随分と長い付き合いになったМちゃん。
私がソウルに住んでた時知り合った同い年の日本人ママだ。
配偶者が韓国人であることも、子供の数とその年齢もほぼ同じ。



私も忙しく、売れっ子日本語教師の彼女とは
時間合わせが難しいので頻繁に会えるわけでもなかった。



ソウルに行く時ふと思い出せば「元気?会える?」と声をかけた。
会える時もあれば会えない時もあった。
会えば短い時間でお互いにがっと喋って笑った。
大急ぎで食べながらの1時間とか、
30分だけお茶して別れる事もあった。
それでも彼女のさらっと言う言葉の中に
「あ、いいな、この軽い感じが良いな」と
気持ち良く感じるものがあった。
またね~といつも楽しく別れた。



そんなに沢山喋る人じゃないけど、長い付き合いの中で色々話した。
どういうわけだか彼女は自分の事を喋ってしまうと、
後にそれをすっぽり忘れてしまう事が多かった。
「そーだっけ?」「そーだよ、そう言ってたじゃない!」
その話をしはじめると、当人のМちゃんより私の方が周辺事情を記憶している事があった。Мちゃんは思考型じゃなく感覚人間らしい。
出来事の詳細よりも、その時どんな感覚だったかだけが残るという。



そんな話の中に「毛皮のコート」の話があった。
もう10年以上前になると思う。私がふと彼女に聞いた。
「ねーМちゃん、本物の毛皮のコート持ってる?」
「うん持ってるよ、シオモニ(義母さん)に買ってもらったの」



いいなあ~うらやましいなあ~と瞬間思った。
毛皮のコート買ってくれるシオモニなんて
うちの嫁ぎ先では考えられないなあ、、、



ところが続きがあった。
「私がシオモニに買ってあげようと、一緒に百貨店行ったんだけどね、
逆に買ってくれちゃって」
「!」




これだよなあ~。
この人、何でもひょいひょい上手くいってるように見えるけど
狙って「調子がいい」のではなくて、
基本心暖くて優しさがあって、その動機で動くから
結局「拍子がいい」人生の人。
最初の「芽」の気持ちが尊いな。
すごい!尊敬する。私もそうでありたい。




私にも「伝染して!」と思った。
伝染るには傍にいるのが一番早い。勝手に似てくる。
ただ計算ずくでそんなことやっても不快だと一緒には居られない。
なんだかんだでお互い学ぶ所のある心地よい友達だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれから何年も過ぎた。
今の私のクローゼットには毛皮のコートがある。
シオモニじゃなく夫が買ってくれたものだ。
シオモニ恨めしやとと思ったあの日はもう遠い。
シオモニどうか安らかに(生きてます笑)


「Мちゃんリアルファーあったたな」の記憶が私にあったので、
「ソウルで一緒に毛皮着て写真撮ろうよ」と誘った。
丁度撮影してくれる人もいた!
結局二人での毛皮を着るのはやめになったけど
撮影当日に彼女が着てきたのは前述の毛皮だった。




「20年前のものだけどね」と彼女は小さく言った。
素敵に着こなしてて、全然古く見えなかった。
黒いファーに黒いインナーをインして足は黒いロングブーツ。
光るアクセサリーをジャラジャラつけた彼女は
すご~くカッコよかった。大人の黒、大人の迫力。




私は「これがあのコートかあ!」とその黒いコートを眩しくみた。
お金だけでやってきたのじゃない。
「思いやり」のエネルギーが先に行き交って
Мちゃんの手元に届いたコートだ。
すごいなあ~それって愛だなあ。
物としては服なんだけど、愛に包まれてるのと同じだと思った。
それが20年前の事だっていうのだから、年代物のウヰスキーみたいね。
そんなの一朝一夕には出来ない。
嫁ぎ先のお姑さんが揃えてくれた一生ものの着物みたいな。





わーこんな由緒あるコートを纏った人と
一緒に並べるのが光栄~と思った。
この友達の暖かいマインドに私が誇らしい~。
しかもこんな素敵な思い出でも執着せず(本人がすぐ忘れる笑)
心軽やかな彼女が愉快。
私は私で自分が大好きな服を着ていたので
とてもいい気分で一緒に写真に収まりました。



嫁ぎ先のことをお互いに愚痴った事ってほとんどない。
会える楽しい時間に「嫌な事」なんて喋ってどうする。
頭にいれないのが一番!と
いつも二人で「こうありたいね」を喋ってきたと思う。




毛皮のコートを買ってくれるような義母さんて
財力と能力がある人だろうから、
存在感も大きいだろうし後ろに下がるタイプじゃないと思う。
愚痴りはしなくても嫁は結構大変なんじゃないかと思う。




その黒いコートは50代の今の彼女にとても良く似合っているけれど
購入当時はどうだったろう。
誰の趣味を優先して選んだのだろう。
義母さんの「これが良い!」推しが強かったんじゃなかったのかな。
と、勝手に勝手な事を思ったりもした。
韓国の60代~70代の元気なアジュンマは時々人間台風か戦車だ。
彼女らが通った後は草も生えない笑
若い時はもっと強烈だったと思う。




Мちゃんは二年位前かな、手術して入院してた事がある。
去年は大好きな日本の御家族が亡くなってしまったという。
腹にも心にも傷。
女も50年超えて生きてたら、本当に色々あるよね。
国際結婚は面倒くさい事もいっぱい。
夫を愛していても韓国人の男と嫁ぎ先は実に面倒くさい!
でもなんとか虫喰いの穴あきのボロボロにならずに
ちゃんと生きてる。恨みで頭をいっぱいにせず心は光を見つめてる。
お互いよく頑張ってきた~、そこ称え合おう。




だからこそ!
「今からもっと楽しく自由にやりたい事やっていこう!」と
彼女も私も心から強く言えるのだと思う。





Мちゃんはなにしろ吹っ切ってる。
だから笑顔がデカい。
元々美しい人だけど、ただ綺麗なだけじゃない。
普通、加齢であちこちくすんでいくけど
彼女は、どんどん透明になっている感じがある。
手間と時間の掛かった黄金のコンソメスープみたいな澄んだ人。
アクもとれてて胃にも優しい笑



人生捨てたもんじゃないよね。
楽しい事はこれからも起こる、と思って生きていきたい。



Мちゃんも私もまだ、10代の子が家にいて、
完全に子育てが終わったわけじゃない。
(果たして子育てに終わりはあるのか?)
だけど、そのうち一緒に海外旅行もしよう~
海外航路の豪華客船ものってみたいねって!
山ほど服と靴を持ちこんで笑





そんな事を気楽に軽く喋り飛ばせる友達がいるという事が
本当にありがたいこと。
適度に距離を保ちながら、
お互いがお互いを大切にしてきたから
笑って肩を組める今があるんじゃないかと思う。




キロロの歌にそんなのあったね。

あなたの笑顔に何度助けられただろう。
ありがとうありがとう、ベストフレンド。
ずっとずっとベストフレンド。




今書いたこの内容がいつか「嘘こけ~!」になってしまってもいい。
今、心からそう思ってるから。



心はいつも変わる。
だけど心なんてお天気で変わるのさ!
変わっていい。心は。


それを自分に許していけば、
人の心変わりだってなんてことない。

「この先どうか」なんて大した問題じゃない!
ただ今この瞬間
あなたを愛して尊敬している。それだけ。

幸せだなあ~

そう思える事が。



ありがとう、Мちゃん。これからもよろしくね。
私信か?ブログなのに笑。
ありがとうございました。



























































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