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「“気持ちよさの解像度を上げる” 生理用吸水ショーツ制作秘話」 #EMILYWEEKここだけの話 vol.3企画 村井亜弥

「JOURNAL STANDARD」や「IENA」などのファッションブランドを運営するベイクルーズから生まれたEMILY WEEK(エミリーウィーク)」。生理週間を軸に、女性の4週間のバイオリズムに寄り添ったライフデザインを提案するブランドです。

ブランド設立から3周年を記念し、このnoteシリーズでは『EMILY WEEK # ここだけの話』と題して、EMILY WEEKの今までとこれからをチームメンバーに尋ねます。

第3回は、10月23日から発売開始されたオリジナル吸水ショーツ「オーガニックコットン エコサニタリーショーツ フォーリセット」がテーマ。

コンセプターの柿沼あき子が「ブランドのコンセプトを体現する製品になった」と振り返る同品の制作秘話について、下着企画デザイナーの村井亜弥、下着メーカーのご担当者である小池さんと共に語ります。

「第4のサニタリーアイテム」と称される吸水ショーツの国内外の事情や、今後の下着をめぐるあり方についての内容にも注目です。

下着と洋服の生産は「似て非なるもの」?

ーー 第1回のnoteでは、「ファッション性の中に機能性をもたせたアイテムの開発をできることにブランドとしての成長を感じる」という話がありました。今回の吸水ショーツは、まさにそういった製品では?

柿沼 はい、今回発売された吸水ショーツは、エミリーウィークの定番ブラと合わせてファッション感覚で楽しめるもの。RESETシリーズブラの「ブラック」、NEUTRALシリーズのナイトブラの新色「オールドブラウン」とコーディネートが可能です。
吸水量はナプキン約1枚分(10ml〜13ml)程度で、生理が始まりそうなときや終わりかけなどに心地よくご利用いただけるアイテムです。

生理のときはもちろん、夜寝るときも上下合わせて気持ちよく着ていただける吸水ショーツって国内外を見ても、新しいアプローチの製品だと思っていて。立ち上げ当初から念願の企画だったのですが、昨年下着業界でのキャリアが豊富な村井がジョインしてくれてから一気に話が進みました。

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▲ EMILY WEEK オーガニックコットン吸水ショーツ

ーー 村井さんはこれまでどんなキャリアを積まれてきたのですか?

村井 服飾科出身ですが、当時就職難で縁あった下着業界に飛び込みました。新卒から企画デザイナーとして勤務し、大手通販下着メーカーでの8年半のキャリアを中心に、「姿勢美」に特化したブランドや、セクシー系のブランドなど、様々な路線の下着づくりを経験してきました。リサーチのため、海外で下着事情を学ぶ機会も多かったですね。

―― エミリーウィークにジョインした経緯は?

村井 長年、下着トレンドは「寄せて上げる」がメインでしたが、だんだん時代的にも自分の感覚的にもエフォートレスというか、寛いだ感覚がいいなと思い始めて。エミリーウィークが立ち上がっていたことは知らなかったのですが、お声がけいただいてブランドコンセプトを伺って、タイミングがすこんとハマったという感じです。

ただ正直言うと、最初は物づくりの面で大変さがありました。ベイクルーズはアパレル企業なので、私が長年いた下着業界のやり方とは違う部分も多かったから。私もこの業界に入って知ったのですが、実は洋服と下着って似て非なるもの。ですから、小池さんが所属されている下着メーカーにも入っていただき、下着作りのやり方を根本から見直したんです。

柿沼 ウェアと下着って生産の工数が違うんですよね?

村井 洋服の場合は2週間で上がってくることもあるんですけど、下着は生産期間が大体90日間ほどかかると言われています。なぜ下着はそんなに時間がかかるかというと、まず型紙を分解したときのパーツが多いから。それに、生地の色と副資材と言われるゴムなどの色を揃えるのに時間がかかる。縫製前の下準備が結構必要なんですね。

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▲ EMILY WEEKの下着は全て国内の縫製工場で生産

柿沼 これまでは社内スタートアップとしては、まずはベイクルーズの本領であるウェアの延長線のところでの下着作りでしたが、村井から下着独自のサイクルをガイドしてもらえたことで、生産スケジュールや予算の取り方も見直しました。今回、吸水ショーツと定番ブラとのコーディネートにこだわったのですが、生産サイクルの違うウェアとの色合わせは、そう簡単にはできないということも学んだり。

―― 専門の方が加わって、下着開発において、すぐにできることとできないことがはっきりしたということですね。村井さんが小池さんの会社をパートナーに選ばれた理由は?

村井 すごく思いやりのあるお仕事をされる企業なんです。とくに、エミリーウィークみたいに着心地や肌触り、品質などを気にするブランドとしては、細かく気づいてくださったり、こちらの想いに寄り添ってくださったりするところと取り組みたいと思って。メーカーさんにも色々あって、効率よく生産することに特化したところもあるけど、エミリーが組むにはちょっと違うかなって。

小池 うちとしても、肌ざわりや着用感というのはずっと大事にしてきたメーカーなので、今回の吸水ショーツのお声がけは嬉しかったです。実は、会社で高機能であったり、素材にこだわった下着を多く作ってきたこともあって、エミリーウィークが最初に青山でポップアップストアをされたときも伺っていたんですよ。

柿沼 え、初回のポップアップに来ていただいてたんですか? ありがとうございます!

小池 はい、立ち上げのときから存じていたので、そこに携われるという感慨があって。うちでは、サニタリーショーツや布ナプキンについてはよく分かっているのですが、吸水ショーツで手がけたのは高齢者向けや術後向けの尿ケア用。ファッション性の高い吸水ショーツというのは、個人的にもぜひやってみたい企画でした。今回販売開始からかなり売れていると聞いてホッとしています。


「吸水ショーツ事情」の背景

柿沼 生理用の吸水ショーツって、海外では2011年ごろから「THINX(シンクス)」などから発売されていましたが、日本ではここ数年で話題になってきたという感じですよね。この違いってなぜなんでしょうか?

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取扱中、NY発「THINX(シンクス)」ショーツ

村井 逆に「サニタリーショーツ」と呼ばれる、防水布が付いたショーツは日本独自のもので、海外ではあまり見かけないんですよ。

柿沼 そうなんですね。

村井 海外ではサニタリーショーツはなくて、タンポンや月経カップを使っている方が多い。おそらくだけど、それらと併用するのに吸水ショーツが都合が良かったということじゃないかな。漏れたときに普通のショーツだと汚れちゃうから。

柿沼 なるほど。日本では吸水ショーツよりも先に、月経カップが海外から入ってきて話題になっていましたね。でも、日本ではタンポンの使用率が海外ほどでないせいか、タンポンに使用感の近い月経カップは今でもそれほど浸透していない印象です。その代わり、吸水ショーツはナプキンと似た感覚で使えて抵抗が低いようで、徐々に海外製品が話題になってきて。それで去年ぐらいから、日本のメーカーでも吸水ショーツの開発が検討され始めたと認識しています。

村井 そうして去年私がチームに加わったとき、「エミリーウィークでも一つの選択肢として、吸水ショーツをオリジナルで開発したい」という相談をしてくれたんですよね。

柿沼 えぇ。日本でもこれからきっとたくさんのブランドから吸水ショーツが発売されると思うんですが、エミリーウィークでは生理期間のデリケートな肌に合わせ、ストレスの少ない肌触りと履き心地を追求したくって。そして、小池さんの会社のご協力も得てようやく完成しました。

小池 お問い合わせをいただいてから、弊社でもエミリーウィークさんが目指される吸水ショーツ作りについて検証して。それで、資材をゼロから作るのは現実的に大きなハードルがあったので、既存の吸水パッドを利用しつつ、いかに履き心地のいいものにするかという点で試行錯誤しました。

柿沼 そうですね。最初は吸水力が高い方がいいことを意識してサンプルで作っていただいたものが、オムツに近い感じのがっしり感で。確かに吸水力は抜群だったのですが、やっぱりエミリーウィークは、「憂鬱な生理期間でも、自分の気持ちをちょっと上げる」みたいなところが重要なブランド。履き心地もそうですが、デザインも定番ブラと同じようなお洒落さも欲しかったりして…。

村井 それでデザイン的落としどころで、内蔵の吸水布に吸水と防水機能の両方を持たせた3層構造にしたことで、マチ部分をスッキリさせました。既存の吸水ショーツって、割と吸水と防水の生地が何層にもなっているということを訴求しているところも多いのですが、それだと生地が厚くなってしまう。うちのはマチが薄いので、着用したときの違和感が少ないのが特徴かと思います。

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マチの部分をスッキリさせたこだわりの仕様


ニーズを分けることで完成度を上げる

―― 今回の吸水ショーツをカタチにするうえで、生産工場の現場での難しさは?

小池 全面をおおうオーガニックコットン主体の生地と、吸水層、防水層の部分でそれぞれ伸び方が違うので、それらを縫い合わせて一体にして履いたときに、ぴったり心地いいものにするには職人的な微調整が必要になりました。

柿沼 中で見えないとはいえ、構造上どうしてもシワが寄っちゃうところも、綺麗に縫って処理していただいて。生地の厚みを目立たなくするのも本当は二重にしっかり縫った方が簡単なのですが、見た目的に気になってしまったので、無理を言って1本で処理していただいたり。

小池 ラインや色の出し方にも、一般的な下着ブランドとはちょっと違うファッション的な目線が入っていて、私たちも新鮮でした。アパレル業界と下着業界のどちらの知見も活かされた吸水ショーツができたのかなと感じています。

ーー まさに村井さんはアパレル業界と下着業界の間に立って調整されたと思います。今回の企画で一番のポイントは何だったのでしょう?

村井 ここにたどり着くまで色々な話し合いを重ねたのですが、最終的なブレイクスルーポイントは、「ニーズを2つに分けた」こと。実はこの後、今回の吸水ショーツよりも、もっと吸水量に特化したショーツを準備中なんです。というのも、吸水ショーツの認知度が上がって、各社製品の品質も向上する中、「吸水量が多い」ことが大きな売りになるのは間違いありません。

一方で、エミリーウィークの強い信条として、「気持ちいいものを作りたい」ということもあります。だったら、その2つニーズを切り分けてしまおうと。それで、第1弾の吸水ショーツは、「大量には吸水しないけど気持ちよさを追求したもの」になったというわけなんです。これで、気持ちよさの解像度を上げることができました。

柿沼 シンプルなものができあがったなって。個人的に色んなブランドの吸水ショーツを買って履き比べているのですが、肌面の気持ちよさには自信があります。生理の最後の方に履いていたら、生理がいつ終わったのか分からなくなるぐらい、ふだんと変わらずストレスフリーに過ごせました。

村井 生理期間は肌も敏感になるので、ずっとナプキンをあて続けるのもストレスになりますよね。だから最初と最後はこれで、真ん中の量が多い日はナプキンや、後発で出てくる吸水量の多いショーツ(注※ 開発段階のため発売日など未定)を着用すると負担も少し減らせるかと。1枚で完璧なものを作ろうとしていた時期もあったけど、そこから方向性を分けることで、1つの製品としての完成度が上がったいう手応えがあります。

あとは、おりものが多いときにも使えますし、タンポンを使われている方は、併用して履いていただくのもすごくおすすめ。タンポンを吸水のメインにして、万が一漏れてしまったときのために履いておくと肌面が気持ちいかと。みなさんの想像以上に使う機会が多いアイテムだと思いますよ。


「自分のために下着を選ぶ」という選択肢

ーー 下着業界に長くいらっしゃるお二人からみて、ここだけの話、日本の下着事情について思うことはありますか?

柿沼 それはぜひ私も聞きたいです(笑)。

村井 海外と比べて、日本の下着の流れってあんまり変わらないなと感じることがあって。「寄せて上げる」や「ピンク系」とか、わりと“売れるセオリー”みたいなものがあって、それが長年固定化したりする。でも、下着も洋服と同じように、もうちょっと自分で好きなものを楽しむようになったらいいな、という思いは常に持ってきました

小池 確かに、一回ブームが来ると市場がそういう製品ばかりになるところはありますね。

村井 使い分ければいいと思うんですよね。セクシーな気分の日はセクシーなものを着ければいいし、生理期間やリラックスしたい気分のときは体に負担が少ないものを着けるとか。女性は時期によってむくんだり、すっきりしたりするので、そのときどきの自分の体に合わせて下着を選ぶというのも一つの選択肢です。一年中「私はこれ」、「下着ってこういうもの」と決めてしまわないで。

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▲ 2020AW新作レースベロアシリーズ

柿沼 エミリーウィークのお客様からも、「生理前に胸が張って痛くなる」というお悩みをご相談いただくことが多いんです。そういうときは、ノンワイヤーのブラなどをおすすめしていますが、生理前後で2カップ分変わることもあるそうですね。

村井 そう、自分の体のことを把握すると色々な面でもっと快適になると思うんです。エミリーウィークの「4週間のバイオリズムに寄り添う」というコンセプトはまさに“自分のため”じゃないですか。女性が自分のために主体的に下着を選ぶというところに個性があるし、しかもそのときファッション性も決して損なわないというスタンスに、下着業界が長い私からみても新しさを感じます。

小池 今回デザイン性の高い吸水ショーツに携わらせていただいて、手術後の尿ケアショーツなどもこんなデザインのものになったら、抵抗なく使える方がもっと増えるんじゃないかと感じました。それから、中高生などの若い方たちにもきっと喜ばれるものなんじゃないでしょうか。

―― 吸水ショーツをやむを得えず使うときも、まだ使い慣れてなかったりするときも、デザイン的にも素敵なものがあれば、気持ちが少しは安らぎそうですね。

村井 選択肢があるのがいいことだと思うんです。最近日本でも、個人でブランドを立ち上げている方が増えてきて、徐々にそれぞれの想いが際立った、個性ある下着が増えてきたように感じます。増えてきた選択肢の中で、自分の価値観に合った下着をチョイスして欲しいと思うし、その中でエミリーウィークが魅力的な選択肢であるようにという、良い緊張感を持って仕事していきたいです。


文・編集 皆本 類

村井 亜弥 / EMILY WEEK 下着企画デザイナー
東京都出身。
女子美術短期大学服飾科卒。下着会社入社。新卒から下着の企画デザイン担当。5年勤務。1年間英国留学。大手下着通販会社にて下着企画デザイナーとして8年半勤務。
別の大手通販会社にて、姿勢美などに特化した補正機能重視の下着企画デザインやセクシー系下着ブランドの下着企画デザイナーを経て2019年EMILY WEEKに携わる。
EMILY WEEK CONCEPT
「日常を、心地よいリズムに。」
EMILY WEEKは生理週間を軸に、
女性の4週間のバイオリズム:Reset-Active-Neutral-Balance
に寄り添った新たなライフデザインを提案します。
日々を頑張るすべての女性へ、それぞれに合った心地よいリズムをサポートしたい。
EMILY WEEKを通じて自分と向き合うことへの喜びに出会えるよう願って。

EMILY WEEK 店舗情報

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