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ウズベキスタン旅行記④~砂漠でぽつんとユルタキャンプ~

ヒヴァの街から走り出した車はひたすらまっすぐな道路を進んでいく。周りに民家が見えていたのも束の間で、やがて農地や荒野の中を走るようになった。しばらく走るうちに雨は止み、私とTちゃんはホッと一息ついて、窓を流れる景色を眺めていた。

向かうアヤズカラはウズベキスタン内にある自治国カラカルパクスタン共和国の中にあった。カラカルパクスタンはウズベキスタンの面積の約37%をも占め、独自の憲法も持っていて、一番有名な観光スポットといえば、環境汚染で干上がったアラル海だろうか。アヤズカラはキジルムク砂漠の中に紀元前4世紀から紀元7世紀頃まであった古代ホレズム王国の古城(カラ)遺跡だ。、近くにはユルタと呼ばれる遊牧民が使用していた伝統的な移動式住居に宿泊できるユルタキャンプがあった。ガイドブックに載っていたのを見つけ、事前に宿泊と送迎を予約していたのだ。英語ができる人がいたようで、英語でも問題なく予約ができた。

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大きなアムダリヤ川を越えてしばらく進んだ後、まっすぐ道の先、周りに何もない景色の中に突如あられた巨大な門。これがカラカルパクスタン共和国への入り口だったのかも?運転手のおじちゃんは英語が全く通じなかったため、確認はできなかったけれど。途中で小さなお店に寄り、水のペットボトルを買ってくれた。約2時間のドライブの終わりに、ようやく小高い丘の上にあるアヤズカラが見えてきた。周りは人家どころか本当に何もない砂漠で、こんな広い地平線を見たのは初めてかもしれない。

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私たちが車を降りると、ユルタキャンプの女将さん、ラニアさんが笑顔を迎えてくれて、私たちが泊まるユルタへ案内してくれた。

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中にはシングルマットレスが2つ並べてあり、毛布が用意してあった。外側は何枚も布で覆われて、しっかり風除けがされている感じ。扉は布製の帯で結んで止めるようになっていて、鍵は付いていなかった。すぐに食事ができるから、と食堂になっているユルタにも案内してくれた。キャンプにはこうした宿泊用ユルタが12個ほど並んでいて、シャワーや洗面所、トイレのある小さな建物もある。周りにはラクダも数頭。確かここでは申し込めばキャメルライドもできるんだっけ。疲れてはいたけど、初めての経験にとてもワクワクしていた。

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食堂ユルタ内は、入って両側に低い長テーブル、正面に小さなテーブルがあり、刺繍が施された座布団に座って食事できるようになっていた。右側にはとても背の高そうな白人のカップルが1組、左側には賑やかなスペイン人の一行が座っていて、私たちは正面のテーブルに一人で座っていた初老の男性と相席になることに。しかし、席に着いたのも束の間、Tちゃんは明るいうちに外の写真を撮りたいと言って出て行ってしまったので、残った私はその男性としばし2人で食事を進めることになった。

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相席だし、喋らないのも気まずいので、男性と話をしてみた。彼はカナダ人の大学教授で定年退職を機に奥さんと旅行に来ていたのだが、奥さんが具合が悪くなり、ユルタで寝ているので、一人で食事をしているということだった。名前は聞いたのにすぐ忘れたので、以降私とTちゃんとの間では教授と呼ぶことにした。物静かな口調で話す教授は、どうやら私たちと似たルートでウズベキスタンを巡るようだった。

テーブルの上に所狭しと並べられた料理は、カットされたナン、肉じゃがによく似た煮込み料理、ミネストローネのようなトマト風味のスープ、サラダ、ナッツ、ドライフルーツ、素麺みたいなパスタときゅうりとディルを和えたもの、チャイとビスケット。どれも美味しかったし、なんだか昔食べたことがあるような味に感じた。お酒や飲み物は別料金だったが、食事の途中、上機嫌なラニアさんが食堂にいたみんなにウォッカを1杯振舞ってくれた。旅先で慣れない食事を食べるとき、ウォッカを飲むのはとても良いと思っている。私のポーランド人の祖母は、私がお腹を壊すとよくウォッカを飲めと言っていた。消毒の意味なのか分からないけど、ウォッカを飲むとお腹がかぁぁと熱くなって、体がポカポカした。

食事の後で外に出ると、すでに真っ暗だったけど、空は曇っていたため、星は一つも見えなかった。本当は満天の星空が見たくてユルタキャンプ宿泊を決めたんだけどな。ちょっと残念だったけど、仕方ない。前日の不衛生なシャワー体験がトラウマになっていたTちゃんと私は「きっと砂漠地帯だし、水はチョロチョロしか出ないに違いない」と同意して、シャワーを浴びずに寝ることにした。自分たちの部屋へ戻り、ウズベキスタンに着いてからこれまでたった1日半くらいしか経っていないことに驚愕しながら、旅の感想を話し合った。あまりにも異世界で、思いもよらないトラブルも続いたので、私たちはまだ、ツアーではなく個人旅行にするという判断が正しかったのか決めかねていた。それでも空港でツアー団体を見たとき、団体行動が苦手な私たちはその中に自分たちが属していないことにホッとしたのも事実だった。明日はアヤズカラのほか、トプラクカラとキジルカラなど遺跡を案内してもらい、夜にはブハラに発つことになっている。全ての行程が無事うまくいくことを願いつつ、眠りについた。

夜中、大雨が降っていたこと、獣の唸り声が聞こえたこと、あれは夢だっんだろうか。


〜続く。

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