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メディアが教えてくれないUTMF完走のヒント〜前日やレースで注意したい必携装備について~

1本目、2本目が思いのほか反響があり3本目。準備の話から打って変わってもっと具体的な「UTMF」対策と注意点。これこそメディアが教えてくれない、走った人にしかわからない情報かもしれません。

わたしはできるだけ「現場」で、「選手目線」で、「タメになる情報」を取材したいと思っています。参加選手であるみなさんならこの重要性はわかってもらえると思います。

そんなわけで、UTMFのシリーズを3度走った過去を振り返ります。特に2018年は雑誌の企画「ランスタトレラン部」メンバーのSTY完走、2019年は同企画のUTMF完走のためにかなり慎重にレースのことを調べ、当日の取材を行いました。UTMFで注意したいことを今回のテーマにしたいと思います。

過去のUTMFシリーズ参加レース

2014年STY(まだわけもわからなかった頃、今とは全然コースが違う)

2014年はトニーことアントン・クルピチカ、ジョー・グラント、ヌリア・ピカスが来日

2018年UTMF(生理の不調、眠気で中盤苦戦しつつ、最後は元気に完走)

雑誌RUNNING Styleの企画「ランスタトレラン部」supported by POLATEC
この頃は人手不足で取材(プレス)とサポートを兼ねていましたが今年から禁止になりました
(サポートは登録制&プレスは選手へのサポート兼任、サポート行為禁止)

2019年UTMF(わたしの記録は山中湖まで)

スタートから雨、天子山系の下りはズルズル泥んこ滑り台。麓以降は雨が止んだ。
photo by Takashi Ueda
が、しかし後半の忍野~山中湖間の大平山 山頂直前でまさかの降雪。大会は中止に。
photo by Takashi Ueda
河口湖に戻ると真っ白な富士山が青い空に浮かんでいた。選手も運営もボラもみんな涙を呑んだ。

装備チェックは世界基準

トレランレースといっても、ローカルレースやカジュアルなものから世界中のトップ選手が参加するようなビッグレースまで様々。国によって文化の違いはあれど、例えばUTMBでは近年ルールが厳格化されており、オリンピックレベルのプロスポーツのようにドーピング等についても言及されています。中国で起きた死亡事故(dogsorcaravan記事)のように山は天候の急変や救急救命の難しさ故、自己責任と言えど「選手の安全を守る」「“防げたはずの事故”を起こさない」ためのルールはやむを得ないと思います。

UTMFも鏑木さんを筆頭に海外で得た国際的な視点でルールや受付、必携装備品チェックが行われていると感じます。例えば国内ならIzu Trail Journeyが近いと思いますが、これまでのレース経験によってはUTMFのチェックが厳しいと感じる人がいるかもしれません。しっかり競技規則に記載されている内容を、その意図まで理解した上で準備する心構えが必要だと思います。

感染対策による変更があるかもしれませんが、2019年の様子を紹介します。

顔写真付きIDや誓約書、スマホで表示するQRなどの準備も忘れずに!
ひとりひとつプラケースを受け取りそこへ必携品を広げます。車や宿に置いてきた!では必携チェックに並び直しです。
ボランティアスタッフの方が必携品の一覧を持っていて、一緒に確認していきます。小さくパッキングしていたとしても、中身を広げてくださいと言われることもあります(嫌な顔をしないように。笑)どっちみち詰め直しになるのでわたしは大きい袋にガサッと入れていきます。
レインウエアは上下広げて裏のシームテープをチェック。ライトの点灯チェックもあります。
シューズの裏を洗う必要があります。事前に洗って行くといいですね。

<注意したいポイント>
詳細コースマップ
大会公式サイトに掲載されている詳細図を紙にプリントしてください。
この表記、見落としていませんか?「地図データを携帯電話などにダウンロードしておいても、それをマップとして認めないことにしました。電池切れ、通信・表示不良などで使えない可能性があるからです。必ず紙にプリントした詳細図を用意してください。雨天時でも使えるように透明なビニール袋などに入れてください。」と書いてあります。

2018か2019か忘れたのですが、忍野ではエイドに入る前に必携品チェックがありました。携帯電話とエマージェンシーシートです。この時、スマホの電源が入らない人が、使用できる状態の携帯電話とコースマップの不携帯としてレース続行を認められないとして揉めていました。エイドにさえ入れないのです。その後コンビニまでバッテリーを買いに走る云々と話していましたがどうなったかはわかりません(ちなみにエマージェンシーシートを使用した後にその手前のエイドのゴミ箱に捨ててしまって引っかかってる人もいました)。1人だけでなく複数人いたんじゃないかと思います。そういったトラブルから、今回の紙のマップ所持に変更されたのだと思います。スマホでOKとするレースが多いので、必携チェックで引っかかってコンビニへコピーしに走る選手が目に浮かびます。

〇水1L以上
必携チェック時に中身が入っている必要はありませんが、ボトル等は1L以上であることを提示しなければなりません。

〇ライト2個、それぞれの予備電池
点灯チェックがあるかもしれません。球切れしていない、バッテリーが充電されている等事前にチェックしておくこと。

〇点滅ライト
同じく点灯チェックあり。自発する点滅ライト、です。反射板(リフレクター)はNGです。昔はリフレクターOKだったからか、引っかかっている人をよく見かけます。

〇サバイバルブランケットとテーピングテープのサイズ
明確にサイズ表記があります。意外と基準を満たすものを探さなければならなくて焦ったりします。この2つは広げて計ってチェックまではされないと思いますが、細かい数字まで決められている意図を汲んでルールどおりのものを用意しましょう。ニューハレではレギュレーション専用のテープを売っています。小さいパックに入っていて便利!

〇レインウエア上下
過去にパンチングのベンチレーションが付いているレインウエアでNGになっている人がいました。「完全防水」である必要があります。防水かつシーム加工されていても、極端に耐水圧が低いものは許可するかどうか議論されていた年もありました。(現在は耐水圧や透湿性の数値記載はないが薄くて軽いレインウエアが多いので注意が必要)

〇保温のための手袋、耳までを隠す帽子
以前は、指抜きグローブはNG、ネックチューブはNGといった表記があった気がしますが、今年のルールには表記がありません。が、過去ダメだった例があるので、5本の指すべてを覆うグローブ(or指ぬきにオーバーグローブがくっついているタイプ)ビーニーなどの帽子を用意しておいたほうがいいと思います。これらも必携装備で「これは認められません」「なんでだよ!」と揉めがちな項目だと思いますが、大事なことはそれが意味すること・なぜ必携装備に指定されているのかをちゃんと理解することだと思います。

〇ナンバーカード(ゼッケン、ビブ)
「誤ったナンバーカードの取り付け方をすると、失格になる可能性があります。」とあります。これは前から指定されていますが、注目したいのは、小さく折り畳む&パンツなどの下半身もNGという部分です。海外の走れるレースで「マジ?それでいけんの?」っていう軽装スタイルで走り抜けていくイケイケのトップ選手の姿は格好良くて(笑)、ビブを数字ギリギリまで小さく小さくして、これまた履いてる意味あるかなと思うくらいめっちゃ短いランパンの裾にちょこんと付けてあったりします。でも、UTMFではダメです。衣類の中に隠れてしまうのも×とされているのでやっぱりゼッケンベルトが最適解かなと思います。

出典:UTMFオフィシャルページ

必携装備品はレーススタートからフィニッシュまで「必携」

コースマップの部分でも触れましたが、過去のレースでは、レース中に装備チェックがありました。聞いてないよ!と文句は言えません。海外レースでも抜き打ちチェックはよくあることです。トルデジアンではランダムチェックがありました(選手全員ではなく、突然声をかけられる)

2014年くらいまでは、屈伸チェックなんていうのもありました(笑)天子山脈が竜ヶ岳くらいまで続いていた時代で、ほぼ遭難レベルに天子から下りて来れない人がいたからです。

フィニッシュ後に装備チェックが行われることがあるかもしれません。上位選手にドーピングチェックが行われることもあります。

この点で気を付けたいのは、スマホ電池切れ・ライト電池切れ・サバイバルブランケットあたりでしょうか。サバイバルブランケットって、広げると畳み直すのは不可能に近いですよね。ザックに入れ直せるかー!って。でも必携装備としてルールに書いてあるんですもの。持っていなきゃきけないんです。ドロップバッグに予備を入れておくと良さそうですね。サポートにもバッテリーやサバイバルブランケットの予備を渡しておくと安心です。

ほんとに!?って思うけれど、ボトルの破損もレーストラブルあるあるです。ストロータイプのストローが抜けて紛失、転んだ拍子に穴が開いた、転んだ時に崖に転がり落ちて失くした。考えただけでゾッとしませんか?それでDNFしたという人も聞きます。水1L以上が必携です。

2109年のUTMFでは、不運なことに奥宮選手のザックが破損して続行不可能→途中棄権するというトラブルがありました(勝山あたり)。わたしもレース中にザックのセンターファスナーが噛んで無理やり引っ張ったら大破損したという事件がありました(ARTにて)。センターファスナーのみのザックだったので、安全ピンを友人からもらって留めてみたものの走っていたら弾けてしまい、テーピングでぐるぐる巻きにして(中のモノ出せない!笑)、バックパックを途中で借りて入れ替え、フィニッシュしました。困っているわたしの話を聞いて、家まで取りにいってくださって、初対面のわたしに貸してくれた方がいたんです。感謝しかありません。

ザックの替えまで用意するかと言われればキリがないですが、シューズの穴やソール剥がれも考えられます。ダクトテープ(超強力なテープ)や安全ピンなどを用意しておくのは大事ですね。

ルールを熟読する大切さ

様々なスポーツに言えることだと思います。ええっ、なんで失格?みたいなトラブルはプロスポーツのテレビ放映でもたまに見かけます。優勝候補だったのに!とかね。

UTMFのWEBサイトでは明確にペナルティについて触れられていませんが、ところどころで「選手が失格あるいはペナルティを受ける可能性があります」といった表記が登場します。

協議の上で〇分のペナルティを与えるとする
協議の上で失格とする

なんてことが、トップ選手からテールエンダーまで十分に有り得ると思っています。THAILAND BY UTMBでは競技規則のところにめちゃめちゃ細かくペナルティが記載されていました。

罰則は、即時失格、15分のペナルティ、1時間のペナルティ、生涯即時失格(!)まで。

ルートのショートカット、必携装備の不携帯(種類によって即時失格と1時間のペナルティに分かれている)、携帯が電源オフ&機内モード、ゴミをわざと捨てる、許可エリア以外でのサポート、ビブの不携帯などすごく細かい!そのほか、危険とみなされる行為、ケアが必要な人を助けない、他者への敬意の欠如、運営や医師の命令に従わないなど、運営側の裁量で決まるものもあります。

トルデジアンではコース上で寝ることを禁止しています。わざとでなくても勝手に身体がオフになるので、「大丈夫?」と肩を叩かれたらビクッとして「ちょ、ちょっと考えごとしてただけだよ(あはっ)」というシーンがあちこちでありました(笑)でも、こっそり隠れて横になり睡眠を取っていたのを他の選手にチクられ、見つかってビブを切られて泣き叫んでいる選手がいました。別のレースでは、トップ選手がエイドを出たとこらで、置き忘れた?ボトルをサポートから受け取って失格になったり、ショートカットしていたことがレース後に判明してペナルティで順位を落としたり失格になった例もあります。

2019年のUTMFでは、天狗や熊森あたりのズルズルの下りで渋滞して誰もがもどかしい状況で、列を外れて下りて行く選手がいました。九十九折れを真っ直ぐぶったぎっていく人には、「ショートカットしないでください!」と叫びました。一瞬振り返って目があったけど、その後も真っ直ぐ下りていきました。これはわたしが見ただけの出来事ではありません。毎年起きていると思います。

もし他の選手にビブナンバーを申告されても文句は言えません。正直なところ、自分の胸に手を当ててみれば、過去のあれはルール違反じゃなかっただろうかと心配に思うこともあります。(前を譲ってもらうために少し脇へ外れる時、ハンガーノックになっている選手に食料を分けたこと、ARTでザックを借りたこともですね)

だけど、基本的には、あくまで度を超えたわざと行われるルール違反に対する罰則ではあると思います。ルールを熟読してちゃんと理解して、他人に敬意を払い、運営に素直に従い、迷った時は一瞬でも立ち止まり考えるようにすればこれらの問題でレースを無駄にすることがないと思っています。

UTMFはロングレースに慣れた人が多いと思います。直前で用意できちゃうかもしれませんが(笑)すでにテーパーリングに入っているであろう今週末は、必携装備と競技ルールをいまいちどじっくり読んでみるといいかもしれませんね。思いもよらない形でレースを終えてしまわないように。


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