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国際バカロレアが私にマッチした理由

国際バカロレア(以下、IB)における学習カリキュラムは、生徒に、勉強しやすい内的環境を提供することから始まる。そして、自分にとってIBが非常にマッチした理由は以下の二点であった。

1. 「ゼロからのスタート」
2. 各自で設定できる、科目別「レベル設定」


1. 「ゼロからのスタート」
IB生は理科・数学・文学などの各分野から1科目ずつを選択し、計6科目を二年間にわたって修学する。

なお、科目選択の際に各教科の難易度を決めるのは生徒自身。6科目のうち半分はHL(高難易度)、残りの半分はSL(通常難易度)に設定することになる。このシステム自体は、そう珍しく聞こえないかもしれない。しかし、IBと日本の科目選択制度には決定的な違いがある。


実際、日本でも文理選択や講師によるランク分けなど、IBにおける科目・レベル選択と類似したシステムは存在する。これらによって、外見上は生徒に選択の自由が与えられているように見えるだろうが、実際は違う。
生徒のそれまでの成績の積み重ねや、講師視点の客観的な判断などに、選択を大きく左右されてしまうからだ。

それに対しIBでは、そもそも「それまでの積み重ね」という概念が希薄である。というのも、IBは世界的なアカデミック資格であり、取得を志す生徒が世界中に存在する。となると当然、国によって教え方がバラバラだったり、一部の生徒だけ習っていない内容があったりと、ハンデが生じてしまうことになる。

それを防ぐために、IBではまず最初に全ての生徒を平等化する。全生徒に予備知識が全くないという前提でゼロの状態からカリキュラムを始めるのだ。ゆえに、科目・レベル選択をする際に問われるのはその科目に対するやる気のみ。

生徒は、自分が何が本当にやりたいのかを見つめ直し、高校卒業前、大学で専門的学習に入る前の2年間というタイミングにて、究極的には新たなポテンシャルを見出すことが可能な仕組みになっているのだ。

こうした選択肢の提示が生徒にモチベーションを与え、義務感や強制からではなく「自分の意思」で勉強を続けていけるようになるのである。

私が日本の学校で理系科目に関する努力を完全に放棄した経験があるのは、前述の通りである。長きに渡って漠然とした苦手意識を払拭できずにいた矢先、IBの「全員ゼロからスタート」を念頭に置いた科目選択システムは、私の理系教科への再チャレンジを後押ししてくれた。現在では、かつての漠然とした「わからない」点を一つ一つ全て明確化した上で、各ユニットの繋がりを体系的に理解できるまでに成長した。

2. 各自で設定できる、科目別「レベル選択」
IBのもう一つの特色である「レベル選択」について。これも、生徒の効率的かつ意欲的学習を促進する仕組みの一つと言ってもいい。

オーソドックスな方法としては、自分が得意とする教科でHLを選択してハイスコアを狙うやり方があげられる。しかし、戦術として、力を入れなくてはならない教科に十分な勉強時間を配分して点数のバランスを取るため、あえて得意教科をSLに設定して余力を生むという選択肢もある。

私は当初、インターでは高得点を狙える数学をHLで履修することを考えていた。しかし、ただでさえ他教科の内容が未知数なIBのディプロマ・プログラム。数学でも他教科でも困窮した場合、「ある程度の点数が約束されている教科」という逃げ場がなくなってしまう。それを避けるため、最終的には数学をSLに設定した。

その結果、私は安定した気持ちで勉強に取り組むことができ、他教科にも満遍なく時間を割くことができるようになったのである。ビジネス・美術など、レポートの推敲を重視する教科では、特にその効力を実感できた。

小狡い手段に見えるかもしれない。でも、何より重視すべきなのは、生徒が積極的に勉強できる環境を整えることだ。IB特有の科目・レベル選択システムは、生徒に新たな挑戦の機会、そして勉強する上での心的余裕を与えてくれる。これらのおかげで、生徒はモチベーションをコンスタントに保つことができる。「もっとやれるのではないか」という自信が持てる。そして更なる試みへの意欲が湧き、自分の可能性への新たな一歩が踏み出せるのだ。

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