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ユニークさを全面に出したビジュアル / SMアーティストビジュアルディレクター キム・ソヨン編 / EQL FOUND TALK 日本語訳

決定的なビジュアルに毎度驚く。
SMアーティストビジュアルディレクター・キムソヨンは、強烈な好奇心を発揮してそのどんな夢も現実として作り上げる。
同時代に愛されるアーティストのイメージを作り上げるということは、大小含めいくつもの努力である意味十分に実現可能な目標であるかもしれないし、巨大で深く険しい谷のように真っ暗に見えることかもしれない。
確かなことは、彼女の多様な分野に渡る探究的な趣向は、仕事を進める動力であり、時が流れても話題になり続けるビジュアルを作り出すための過程になっている、ということだ。

Found Keyword 1 "探究"

大学での専攻とは別に、ニューヨークでファッションブランドでのインターン、マガジンアシスタントからエディター、そしてSMエンターテインメントのアーティストビジュアルチームの一員になるまでのストーリーを教えていただきたいです。

経営学科を卒業して、ニューヨークのファッションブランドでのインターン、マガジンアシスタント、エディター、スタイリングなど20代前半〜中盤はずっと経験をしながら自分を探している過程でした。専攻とは違う、離脱した線にいましたが、したいと思う仕事の中心にはファッションがあって、その大きな枠の中で、私は私の選択に疑いはありませんでした。
今のSMでの始まりは、NCT DREAMのアルバムからスタートしました。スタイリングに参与したのを良い機会に、全般的なビジュアル企画業務で仕事をしてみないかという提案が来ました。現在ではアーティストのビジュアルをディレクションしつつ、ファッションブランドとのアーティストパートナーシップ関連でコミュニケーターとしても業務をしています。
好きなことを生業にして生きたいし、いつも上手くやりたいという気持ちに変わりはありません。

似ているように見えて全く違うそれぞれの経験の中で、一番大きく変わった点があるとしたら何でしょうか?

ファッションに特化した仕事をする時は一つの分野の専門性と深みに没頭してきたとしたら、今は人物、コンセプト、伝達力により留意している方です。音楽という媒介体を基盤に絵を描こうとすると、全般的な企画の理由がもう少しはっきりしていなければなりません。アーティストが魅力的に見えなければならないことを基本として、ビジュアルが直感的に説明されたものでないといけないでしょう。音楽とコンセプト、ファッション、この三拍子がすれば、単にファッションというよりかは、もっと長続きすることのできる文化を作り出すものだと考えています。ファッションをメインにする仕事であるのと同時に、一つの文化の中にあるという点がとても興味深いですね。

新しいアルバムが出る度にその斬新さに驚くことが多いです。アーティストに対する研究を経て結果物に盛り込まれているものなのかもしれないし、ただアーティストビジュアルチームのスタイルが投影されたものである可能性もあります。どちらの方が近いでしょうか?

アルバムジャケットのコンセプトとデザインを決めるチーム、ミュージックビデオチーム、いくつかの専門化された部署で協業しながら制作に入ったりします。そこでは私は、もう少しアーティストがどう見え得るか、どんなキービジュアルが音楽とコンセプトに一番ぴったりなのか悩みながら、細心に掘り下げる側です。アーティストに対する研究を一番優先します。これまでやってきたアーティストの色合いとムードを理解して、今回のアルバムではどんなビジュアルとして見せられるかが重要です。もちろん人がする仕事なので、個人の好みが滲み出ることもあると思います。主観的な解釈がかえってアーティストにマイナスになることもあるので、私の好みは少し後回しにしようと努力しています。そうしてまとめられたこれまでのアーカイブを基に、時代的なトレンド、アルバムに対する解釈、音楽とコンセプト、パフォーマンスの伝達力に対する研究が先だとわかります。

Found Keyword 2 "ビジュアル"

同時代のアーティストのイメージを後押ししてくれるのは、独特の感覚的なビジュアル制作が土台になっているからだと思います。ビジュアル制作のアイデアはどのようにして生まれるのでしょうか?

キーワードを決めることが、企画の一番最初の順序として始まります。音楽とアルバム企画、そしてアーティストを考慮しながら、一晩中ビジュアル制作の参考にdiggingします。これまで私を興味深く楽しませてきたこと、好きだったこと、つまり「これはいつかこういうアーティストに取り入れたら良さそう」という私だけのアーカイブをもう一度見返してみます。既存のものと経験を基に、新しいものの形態を作る方なんです。その次にはディテールを掴んでいきます。ディテールが掴めなかったら誰でも簡単にマネできる仕事だと思っています。その過程の中で、たくさんのオプションを加減しながら基準を設定します。基準を決めなければ一緒に制作する人たちを導くことはできません。私の周りで一緒に仕事をする能力のある方達も、いつも同じ気持ちなんです。結局は良い制作物に向かって走り抜けます。アーティストやその周りの制作者の方々のためにも、かなり責任感を感じて、こだわって没頭するタイプですね。

今まで作ってきたビジュアルのほとんどがアーティストが持つ雰囲気と似ているように見えます。企画する過程でインスピレーションを得る素材があるとしたら?

海外アーティストの制作物とアートマガジン、Spotifyをよく参考にします。目新しいものを探究して私なりのムードボード*を積み上げるのが好きなんです。いろんなイメージを見てみると、たまにはアルバムとは別に「これはいつかアーティストに適用してみたい」と思いつきます。私なりの変形を与えつつ描かれた絵を想像するんです。急いで進行される制作状況でも素早く対応することができるし、長い間描いてきた絵が適材適所で使われて、結果物は間違いなく良いものだったと思います。

*ムードボード(mood board):コンセプトを伝えるためにデザイナーによってつくられたコラージュ。

クリエイティブな悩みの跡が集約された新しいアルバムは、いつも期待が先立つものじゃないですか。ファンが新しいアルバムに直面する時、アーティストがどんな印象として記憶されることを望みますか?

アーティストが今の時代的にクールに見えつつ、音楽とビジュアルで表現しようとするコンセプトが明確でなければなりません、実は私は、究極的に「時が流れても話題になるビジュアルを作ろう」というのが仕事の目標です。直感的でありながらも私たちだけが表現できる唯一無二を全面に出さなければ、時が過ぎてもそう見えるものにはならないと思います。例えば、ファンダムの理想郷を追いかけた世界から枠を広げて、専門家の分野でも認められるアイドルの姿です。世界には素敵なものがあまりに多くあります。その中でも他とは違う新鮮さ、細心のディテールが込められた完成度の高い印象としてアーティストが記憶されることを願います。

Found Keyword 3 "OLD AND NEW"

退勤後、オフィスや現場から離れて個人的に過ごす時間が気になります。また、仕事をする時としない時のシンクロ率はどうでしょうか?

よく走ります。雑念を打ち消すにも良いし、走りながら歌を聞くのも好きです。遊び盛りの時は外でよく遊ぶ方だったんですが、最近はよく家で時間を過ごします。友達もたまに招待したりしますが、なんとなくベッドに横になって曲を聞いたり、本を読んだり、映画も集めて見る、寝る前の1時間くらいが一番幸せな時間です。やっぱりオンとオフ、大きく変わりません。実はまだ私も私自身がよくわかっていないのですが、確かのは、親しい友達に会えば幼い時の自分の姿に戻るということです。

クラシックなギャラリーに展示された現代美術作品からアーカイブブック、ビンテージ衣類と家具など、古いものを現時点から楽しむのがお好きなんですよね?

古いものを今の視点で楽しむのが好きなんです。家を飾る時も "エッツィ(Etsy)" や "イーベイ(Ebay)" を一晩中探して私の好みに合うものを見つけました。何かを探究して発見して、その中で美しさを見出すのが好きなんです。購入する過程まで一つの経験だと感じられます。それから、今のものと適切にマッチするようにしました。私も変化の多い人間なので、ある一つのスタイルに決めることができないみたいです。数々の選択の中で、私が好きなものを探して、古いものと新しいものをうまくマッチさせる過程の中で、美しい調和を追求するタイプです。

最近見た展示の中で視線を引くものは何でしたか?それから、見る価値のあるビンテージ家具及びインテリア編集のショールームをお勧めしていただけるとしたら?

最近、大好きな先輩とデザイナー "ジヨン・キム(Jiyongkim)" のアーカイブ展に行ってきました。ただ日差しの自然光だけで生地にブリーチをさせる作業のやり方、アイデンティティが触れ合うKINFOLKとのプレゼンテーション、デザイナーのプライドが感じられる細心なキュレーション。久しぶりに、自身の色がはっきりしていて新鮮さと完成度を同時に兼ね備えたブランドに接した気がしました。単なる衣服を超えて、それより大きな価値を基にコレクションを展開しているんだと思いました。色合いが本当に直感的ではっきりと際立っていました。また、引っ越しをしつついろんなビンテージ家具のショールームを見学してきました。小規模でもセレクトが珍しくて、長く置ける家具に焦点を置いて探していたところに "グレイニームーブ(grainymove)" を発見しました。ネーデルランドのデザイナー、マーティン・ヴィッサーのアームチェアーを買ったんですが、とても満足のいった買い物の一つです。

Found Keyword 4 "夢"

偶然の出会いというまた別の経験からも、大きなインスピレーションを期待しますか?

もちろんです、なんだかロマンチックですね。私にとって新しい経験と新しい感情は大きな刺激になります。最近、ドラムを習いたいと真面目に思うようになりました。ハリー・スタイルズのコンサートで実物として対面した魅力的なドラマー、サラ・ジョーンズはもちろん、ドラムが壊れるほどプレイしていたニューヨークバーのお年を召した年配のジャズドラマー、ミラノ公演でのグレゴリー・ポーターのドラマー、エマニュエル・ハロルドなど、昔から夢見てきたドラマーの姿と現実で向き合った時間でした。今が本当に学ぶ時かと思います。私にも、経験できなかった慣れない何かがまだ多く残っていて欲しいなと思います。

過去や現在に関係なく、どんな形態でも心理的・精神的に刺激を与えるものは何でしょうか?

友達、周りの人との対話、両親の心配そうな小言ですね。私を愛と愛情のこもった視線で接してくれる人たちから多くの力をもらっています。一人で悩んで考えている時間も多いのですが、そうすればするほどもっとつらくなるんです。周りの人たちのおかげで刺激をもらうし、また他のことにも進んでいける力を得ている気がします。

ご自身を見てビジュアルディレクターを夢見る方たちに、一番必要なアドバイスをするなら?

最近は会社員とクリエイターの役割の中で、私が妥協して誰かを説得しなければならないことが多くなりました。当然正しいと思えることを進めないといけない時、思っていたより壁が高くて、難しい部分が多いです。執念的に入り込んで仕事自体を好んでする能力が、持っていなければならない個人としての必須条件だというなら、その能力を進められるスキルも業務的に持っていなければならない必要条件です。よりスケールの大きい業務は、いろんな協力と同意が必要なことなので、一人でやり遂げることはできません。これは私自身も越えなければならない課題だったりもします。

Found Item キム・ソヨンの好み代表アイテム

ビーチ・ボーイズ [Surfin’ USA] アルバム

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