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被災地の家族と東京の私、地震当日のこと

※津波や地震、人命に関する描写があります。苦手な方は注意してください。

今は1月3日22時、少し気持ちが落ち着いてきたので記録。
また、もし似た境遇でどこにも吐き出せない思いを抱えた人がいたとしたら、一人じゃないよという意味も込めて(長文になったので気持ちの所在についてはこちらに書きました)。

能登半島で地震発生

2024年1月1日夕方、友人からの「地震大丈夫?」というLINEで目が覚めた。
大晦日から昼まで起きていたので深く眠っていたのだけど、年に一度も連絡を取らない友人からの唐突なLINEを見て、良からぬことが起きていると思い飛び起きてテレビをつけ、チャンネルをNHKにした。

能登半島で大きな地震が発生していた。震度を見るより先にただならぬ映像とアナウンサーの声で、それが並々ならぬものだとすぐに理解した。
私の実家は富山県氷見市で能登半島の真下にあり、この年末年始は帰省しなかったが家族(両親、兄)が暮らしている。映像では北陸一帯に津波警報が出ていたがそれもすぐに大津波警報に変わった。東日本大震災の光景が鮮明に頭に浮かぶ。

家族に連絡

すぐ母に「大丈夫?」とLINEしたところ、折り返し電話がかかってきた。
出ると母がややうわずった声で早口にこう言った。
「今街にいる(海岸から200mほどしか離れていない)。津波警報が出ているから車で避難しているが、避難する車で渋滞している。全然動かない」
つまりこれから何が起こるか、すぐに想像できた。海岸沿い、停車した車でハンドルを握る母はこれから大津波に飲み込まれる。
道には腰を抜かして立てない人がいるらしいが構わないでと話した。そのまま話していたかったけど「もう切るね」と慌てて切られてしまった。

親は高齢でいつかいなくなると日々思ってはいるが、突然「これから津波に飲まれます」は勘弁してほしい。母親の人生は何だったのか、母が何をしたというのか。嫌だ、でもどうしようもない、でも嫌だ、嫌だ。

怖くてたまらず兄にLINEした。こうしてる間にもお母さんが、お母さんが。お母さんが。
電話がかかってきて、出ると兄も状況を把握していた。それから何を話したか記憶が抜けているのだけど、履歴を見ると何度も兄と通話をしており、その中のどこかのタイミングで母が渋滞を抜け帰路についていることがわかった。
結局この日は大津波は来なかったし、きっと腰を抜かしていた人も助かったはずだ。
ここまでの数分で誰と何を話したか記憶が曖昧になっている。でも履歴を見る限り殆どが兄との通話だった。
兄は昔からしっかりしておりこの状況でも冷静でいてくれたので救われたが、非常事態の渦中、きっと“安全圏にいてケアの必要がない家族”との通話に兄も安心できたのではないかと思う。まあこれは末っ子的傲慢なのだけど、でもそういうことってありますよね?

交通パニックからの二次災害の可能性

安心したあたりからは記憶がある。
兄はキャンプ場でチェックインしている最中だったがすぐに引き返したとのこと。キャンプ道具があるからいざとなれば野宿もできるねと言うとなぜか笑っていたが、兄もきっとパニックだったのだろう。

高速は通行止め、下道は空いてはいるが道路が割れて通れないという。遠回りしてもまた割れている、また次の道も割れており、他に道はなく仕方ないので割れた道を通ったらしい。
小高い場所には路上駐車が連なっており、それも通行の妨げになっているようだ。少しでも高い場所へと避難している人たちの車だが、その下にまで列が伸びて平地でも路上駐車している避難車両がいるらしい。
更に一方通行も一時停止も無視して脇道から飛び出てくる車もいる。「こんな時はおかしなものが飛び出してくるから注意やわ」と話しながら、彼らの気持ちもわかるがこれらは全て通行の妨げとなり渋滞や事故を生み、二次災害に繋がりかねないことを考える。

対パニック性というか冷静さも判断力も個人差が大きく、この状況では誰のことも責められないし統制を取ることもできない。しかし助かるはずのものが助からなくなるような現実を目の当たりにするともどかしく、仕方ないでは済ませたくないなあ、、と誰に相談すればどうなるのかと考えたりする。

とりあえず家族全員帰宅

そうこうしているうちに兄も帰宅できた。家にはすでに両親が帰宅しており、これで家族全員が無事に揃うことができ、4人で少し話した。
我が家は山のほうにあるので津波の心配は無いが、家は基盤から崩れ傾き、家具は倒れ、歩けないほどの場所もあるらしい。しかし停電断水もなく、避難せずとも家に居られる程度とのこと。
(追記:完全な断水とまではいかないがかなり弱く、お風呂は銭湯に行っているらしい)
この状況では例え家がどうなろうと家族全員が怪我もなく無事だったのであればそれだけで御の字、ありがたい。本当にありがたかった。

余談だが帰省していなくてよかったと思うのは、私は寒いのが大の苦手で帰省するといつも自室の灯油ストーブをつけっぱなしにしている。出かける時も。もちろんよくないことなのでこっそりやっており、今回私が帰省していたら家は全焼していたかもしれない。

暗くなってきたので片付けは明日以降。
当然地震や被害も今日だけでは終わらないはずだ。精神的にも今回のことは特に高齢の親には想像を超えるストレスだったはずだし、ローンが終わったばかりの家の状況がひと押しして、どうにかなってしまうかもしれない。どんな最悪の可能性も現実的にあり得る状況。何もわからない。
とりあえず現時点で命は助かった、でも明日からどうなるか本当にわからない。

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