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新春に古今和歌集の春の巻を開いてみる

新年あけましておめでとうございます。今年も楽しくうきうきするような香りの話や古典やアートのお話をして行けたらいいなと思っています。

新年のことを新春と言い表すように、かつては新年というのは春の訪れをあらわすことでもありました。(今年なら2月1日です)そんな新年の最初にぜひ見ていただきたいのが古今和歌集。

古今和歌集は醍醐天皇の命で作られた最初の勅撰和歌集です。紀貫之、紀友則、凡河内躬恒、壬生忠岑が選者である、ということは学校のテストで出たかも~。ですね。
それぞれの部(季節や恋や旅)の中に時間軸や気持ちの移り変わりを描くという作りになっていまして、春も新春から晩春へ、恋なら出会いから別れへ・・・そしてこの時の移り変わりが大変見事なのですよ・・・!
ぜひぜひ知ってほしい!というわけで
古今和歌集春歌上の最初の歌を見てみましょう。

年の内に 春はきにけり ひととせを 去年とや言はむ 今年とや言はむ

在原元方の歌です。二十四節気は太陽の運行(冬至という一番日照時間の短い日から数えて15日刻みで季節を進める考え方)を基にしていて、その4番目が立春。ところが暦は月の運行(29,5日)を基に進めていました。すると、当然暦と太陽の運行にズレが生じます。ほうっておくわけにはいけん、ということになります。それを調整するために閏月といい、約三年に一回一カ月がまるまる増えることになりました。
という暦上の問題で、立春が新年より前にきてしまったのよね、という歌です。つまりこれ、基本的には前年の年の瀬、ってこと。去年だけど、ことしなんだよね、という不可思議さ(なこころの動き)を描いています。

そして、古今和歌集の二首目がこちら。

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つ今日の 風やとくらむ


紀貫之の歌です。礼記によると、「東風解凍」という言葉がありまして、ようするに、この風が春を運んできた。という春立つ日に詠んだ歌。そう、この日は立春。
ところが暦の上で春が来たところでまだまだ寒さが続くのは今も千年前も一緒なのね、というところが面白いですよね。

春霞 立てるやいづこ み吉野の 吉野の山に 雪は降りつつ

だよね。まだ雪降ってるよ。吉野の山は桜の名所。春は吉野、秋は竜田川というくらいだけど、そんなことないよ!吉野は雪だよ!!(てか山だし)まだ冬で寒いよ、寒いよ!!となっているんですね。この歌はよみ人しらずの歌です。


雪の内に 春はきにけり うぐひすの こほれる涙 今やとくらむ

二条の后の歌です。ここまでの四首を順番に見てみてください。
去年のうちに春が来てしまった。そして立春となるが→春霞はまだた立たない→こぼれる涙→いまやとくらむ
なんですね。季節のわずかな変化や、時の流れを感じさせる歌がつながっているんですよ!!いやはや、この和歌で時の流れを作った人は天才だな。このあとにできる勅撰(そうじゃない)和歌集もこういう運びで作られているんですね。恋なら出会って恋に落ちて、そしてすれ違って別れる・・・という。もう見事すぎます。

ちなみにこの二条の后は『伊勢物語』でおなじみの藤原高子さんです。藤原高子さんは『伊勢物語』の第六段で、駆け落ちしたあのお姫様ですよ。振り返ってみましょう。

白玉が何ぞと人の問ひしとき
露と答へて消えなましものを

二条の后についてはいろいろあるので、またの機会に。。。

雪の日にはお香を

先日、関東にも雪が降りました。雪や雨の日は古くからお香日和だと言われています。本来、香りを引き出すためには湿気があったほうがいいとされています。湿度が高いと香りの分子がよく運ばれるのですね。
ですから昔はお香をたく部屋の外には池を作り、湿度を上げられるようにしています。
「源氏物語」では.急に来た来客のために部屋に香りをくゆらせようと女房が急いで煉香を香炉に入れてパタパタ扇であおぐ女房に光源氏が苦言を呈する場面があります。
「お香っていうのは、そんなに煙を出して急いでたきしめるものではありません。さりげなくそれとなく香るのがよいのですよ」
香りで部屋を演出するのはおもてなしの一環でした。

ちなみに湿気による不快指数的なものはお香でかなり軽減できるのでおすすめですよ。
はじめての方には匂い袋からでも良いと思いますよー




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