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パストライブス/再開 感想

 私の初恋は幼稚園年長さんだ。

 なぜ恋に落ちたのか、いつ恋は終わったのかすら覚えていない。

 だが、数十年経った今でもその気持ちだけは鮮明に覚えているし、未だにその子と同じ苗字の人と出会うと思い出してしまう。

 嫌なやつでも、あの子と同じ苗字だし…と、踏みとどまってしまう。くそ。

 そんな新鮮な思いを呼び覚ましてくれる映画があるらしく、レイトショーにて鑑賞してきた。


感想(ネタバレ含)


 あ


 りそうでなかった。まさか、2024年公開のラブロマンスでその感情を存分に感じることができるとは思わなかった。


 韓国で幼くして出会った普通の2人。直感的な、だが、純粋な恋心。表層化することなくすれ違ったまま、時が経ちアメリカで再開する2人。しかし、もうすでに既婚者とパートナーがお互いにはいた。


 どこかで聞いたことのあるような設定と関係性
と、初めは思った。



 まず、シンプルに画がいい。
 主にアメリカ、ニューヨークで2人が12年ぶり、実際に会うのは16?17?年ぶりに再開する場面がメインなので、ニューヨークの観光地を存分に旅行できる。男性側のヘソンが韓国から休暇を使いノラの元へやってくる。ヘソンの観光のためにニューヨークのザ・観光スポットを巡る。その見せ方が素晴らしい。

 日の入り方、遠近感を駆使した2人の距離感を絶妙な配置にし、かつそのバックに現れるニューヨーク。見入ってしまう。

 そしてそして、何よりも今作で心動かされ、先述した新鮮さを感じたシーンがラストシーンだ。正直全てがここに集約されているかのようなあまりにも美しく切ない素晴らしいラストだった。


 タクシーを待つまでの間。ここまではまだ迷い
が見えたと思う。2人は多分、一緒にいたいと思
えば2人で一緒になれたんじゃないかと思う。や
ってくるタクシー。向かい合う2人。ここの間。
あ、もうこの2人が結ばれることはないのだ。そ
しておそらく、もう2度と2人が再開することは
ない。セリフがないのだがおそらくそうだ。それ
をわからせる2人の表情とカメラワーク、構図、
間。全てが完璧。そして、見ている俺もそれが2
人と同じタイミングで気づいてしまった。


 そして極め付けの来世で会おうのヘソン。別れ
た後泣き崩れ夫に抱かれるノラ。ニューヨークの
街並みを儚く見つめるヘソン。ここでエンドロー
ル…


 言語化できない、誰もが心のどこかに住み着いている初恋と、その終焉。

 それをここまで完璧に、綺麗に、切なく描いた作品はまさに、ありそうでなかった作品であろう。

 素晴らしかったです。

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