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「無縁仏になる」というNHKの報道に、物申す

独身で兄弟姉妹のいない女性が、都心のマンションで亡くなったケース。

かなり社交的で友人もたくさんいたにもかかわらず、警察から、
「身元の特定ができず、無縁仏として火葬されてしまうかもしれない」
と言われた
、という報道
がなされていました。

リンクのNHK NEWS WEBのほか、きのう(2023年12月21日)の朝のNHK「おはよう日本」でもとりあげられました。

しかし、事件性もなく自宅で亡くなっているのに、歯形がなければ本人特定できないかのような報道は少々行き過ぎていると感じます。
レアなケースをとりあげ、無用な不安を煽っているようにも感じました。

また仏教系FP&終活専門行政書士として、〝無縁仏〟という表現を、公共放送である大手メディアが使用したことについて、大いに異論があります。

このことは後半で説明するので、最後までちゃんと読んでね!


身元特定できないケースは、かなりレア

「身寄りがない」
「おひとりさまである」
と本人がおっしゃっていても、じっさいは〝子がいない〟というだけで、従兄弟姉妹や甥姪はいる、というかたがほとんどです。

民法では、「6親等内の血族+配偶者、3親等内の姻族(配偶者の親族)」を「親族」と規定しています。

6親等といったら、「いとこの孫」とかですよ^^;
警察は、そんなに遠縁まで戸籍と住民票をたどって探すんです。

そして、すべての人に遺骨の引き取りを断られてはじめて、死亡地の自治体が引き取り、公費で火葬・埋葬を行います。

行政書士事務所に寄せられるお問い合わせも、

知り合いが無縁墓に入れられてしまう

というご相談より、むしろ

幼少のころ1回会ったかどうかなのに、親族の遺骨の引き取りをしろと警察から強く言われて困っている

という相談のほうが、はるかに多いのです。

無縁墓(←無縁〝仏〟ではない)に入るとしても、数年後の話

今回の報道では、タイトルが『「絶対に“無縁仏”にしてはいけない」その時、友人たちは……』であるうえに、文中に

今の日本の法律では、亡くなったあと身元が特定されなかった場合は自治体が火葬。その後、無縁仏として墓に納められることになっています。

「絶対に“無縁仏”にしてはいけない」その時、友人たちは…

なんて書かれているので、あたかも

どんなに友人知人がいても、身元確認ができないと、お参りできないような合葬墓へ入れられてしまう

というふうに受け取れてしまう内容となっていました。

じっさい、私の行政書士事務所にも、この報道をみて、

無縁仏にはなりたくありません! 
何をしておけばいいんでしょうか?

というお問い合わせが複数ありました。

でも正直、NHKが無用に市民の不安を煽ったように感じ、違和感をおぼえました。

公共放送なので、「市役所の倉庫に積み上げられる骨壺を少しでも減らしたい」といった公益的な意図も、あるのでしょう。

しかし、自治体が運営する共同墓地(←俗称〝無縁墓〟。あくまで無縁〝墓〟であって、無縁〝仏〟ではありません!:理由は後述)に収められるのは、骨壺の状態で一定期間(自治体によって規定が異なりますが、数年~5年程度)保管された後の話です。

事前に対策をしておかないと、すぐにでも友人知人がお参りできないところへ葬られてしまうかのような報道のしかたには、大いに問題があると感じました。

じっさいの死亡時の本人確認

私が相続手続きなどを担当するなかでも、ご遺体の状態が損傷しているうえ親族がみつからず、本人確認に難儀するケースはあります。

介護などを苦にしての心中で、親族がいちどに亡くなり本人確認ができず、勤務先の親しい人が証言したこともありました。

隣家でも今年、独居のかたが玄関先で亡くなりました。
異臭で通報があってから発見されたので、お顔は判別できない状態でしたが、警察のかたからは髪型やメガネの形状など詳しく聞かれ、われわれ近隣の証言で「ほぼ本人に間違いなし」となりました。

結果が出るのは数ヵ月先になりますが、DNA鑑定もあります。

現実には、勤務先や近隣の人への聞き込みとDNA鑑定を合わせ、数ヵ月かけて本人特定がなされることが多いと思います。

友人一同が、「本人特定されたらお金を出し合って遺骨を納骨します」と申し出ていれば、警察としても役所としても、むしろ数年間も保管しなければならない遺骨が1つでも減ることは大助かりなので、渡してもらえると思われます。

もちろん、親族の墓を知っている人がいるならば、そこへ納骨することも可能と思います。

ご納骨にも費用がかかるので、ご本人もご両親も一人っ子で、従兄弟姉妹もひとりもいないのであれば、生前にどなたかに死後事務をお願いする内容の公正証書遺言を作成し、ある程度のお金を渡せるようにしておくに越したことはありません。

🔶公正証書遺言の作成や死後事務、墓じまいのご相談は
こちらOK行政書士事務所へどうぞ

〝無縁仏〟という用語は、仏教の教えではない!

ところで今回のNHKの報道で、もっとも問題があるなと感じたのは、〝無縁仏〟という用語を見出しにもってきて、読み手の興味をひこうとした点です。

仏教は、「有縁無縁三界萬霊」(縁ある人も、ない人も、みっつの世界=欲のある世界・ない世界・中間の世界いずれの人も、ひとしく救われる)をうたう宗教であり、〝無縁だと不幸になる〟という考えかたは、仏教にはありません。

そもそも、戒名をいただくということは、家族や親族といった〝娑婆での縁をすてて〟師匠のもとで仏門に入るということ示しているので、戒名もらえばいわば全員が、〝娑婆の親族関係とは無縁になる〟んです。

墓参りや回忌法要は、遺された側が死生観や人生観を確立するためには重要なきっかけとなりえますが、亡くなった人は、お戒名ついていればそもそも家族や親族とは〝無縁〟。

したがって、〝仏〟という文字を〝無縁〟と結びつけ、有縁の仏じゃないと救われないかのように表現する発想じたい、「この水晶玉買わないとたいへんな病気になるよ」と言っているのと同じようにさえ聞こえちゃいます。

公共放送が、市民の信仰心にグサッとくる言葉で煽ることの良し悪し

政教分離を曲解して(※)、公教育で宗教について教えもしない国の公共放送で、ほんらい〝無縁墓〟(※※)と表現すべきところを、あえて〝無縁仏〟と表現したこと。

これ、多くの国民が〝無宗教〟と言ってはいても、「お守りにハサミを入れてみろ」と言われてもできない人が大半なんだろうし、おみくじで「凶」を引いたらたいていの人は気分落ちるし、って具合で、

じつは、いろんな信仰がしみついちゃってる

ってことを、公共放送側もわかって使っていたんじゃないかと勘繰りたくなります。

もしそうだとするなら、完全な心理操作であり、それこそマインドコントロールに近いこと。

※「政教分離の曲解」については、また回をあらためて書きますね。
欧米諸国だって政教分離なんですよ。でも大統領も議員も、議会で聖書に手をあてて誓いを立てたほうが、政策に対して真摯であるとアピールできたりします。

※※合葬されてしまい、個別に手をあわせることが難しくなり、また手を合わせにくる人がいないと思われているお墓を指す用語

まとめ:宗教リテラシーを上げて、身を守ろう!

こういった情報に煽られて不安を募らせてしまうことを回避するには、私たち自身がもっと宗教リテラシー上げて、どっしりと構えることが最重要。

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