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小屋の屋根と置き石

田畑や漁港のすみに建つ小屋に魅せられて、あちこちを巡っています。有益な情報はございませんが、どうぞしばしお立ち寄りください。

小屋に限らない話ですが、建物の外回りで最も過酷な環境にさらされているのは屋根ではないでしょうか。屋根は私たちが安心して生活する上で欠かすことのできない存在です。にも関わらず、普段はあまり気に留めることすらありません。
小屋の屋根には、一体どのようなものがあるのでしょうか。一例を見てみましょう。

石置き屋根の小屋

上の写真の小屋は野麦峠へと通じる岐阜県の道沿いで出会いました。いかにも時間が経っていそうな古い佇まいです。屋根をよく見ると、薄い木の板を葺いていました。その上に横木と石を置いています。おそらくは風に吹き飛ばされないようにするためだろうと推測できます。

横木は針金で固定されている。無骨な手仕事感が伝わる

大正から昭和初期に農山漁村の家屋を調査した「日本の民家」(今和次郎著/岩波文庫)にも同じように置き石屋根のスケッチが載っていますから、古くからの葺き方なのでしょう。

現在では、板葺き屋根はおそらく茅葺き屋根以上に稀です。火災に弱いですし、葺き替えの手間もあります。その代わりに使われるようになったのが、このブログではすっかりお馴染みの材料=トタンです。
置き石にも代用品が色々と現れました。どんなものが代わりになり得るのかを考えてみると、
・わざわざ買うほどではなく、
・身近にあって、
・落下しにくい(これが一番大事なのかも)もの。
その代表格が廃タイヤです。側溝のフタや土嚢を見かけたこともあります。

漁港の小屋の屋根にはタイヤだけでなく鉄の錨ものっていました
土嚢から生えた草。茅葺き屋根に生えた草花を思わせる。

この話をよそでしたところ、「『ど根性ガエル』の主人公ひろしの家の屋根には石が置かれていた」という貴重な情報が寄せられました。また、つげ義春の作品『無能の人』の中でも、主人公が石を売る掘っ立て小屋の屋根の上には石とタイヤが描かれています。
作家の観察眼、おそるべし!です。

屋根材や置き石に何が使われているのか、そんな些細なことを観察するのも面白いかもしれません。(了)
2022.04.14

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