退職日記2 よなす止まらず

人事に呼び出されたついでに全くもってタイミングを外した退職宣言をした二日後、直属の上司に呼び出された。どんな風に何を言われるかとファイティングポーズで向かったところ、
「勉強したいって言われたらさ~もう引き留められないよ~」と苦笑いで言われ、話はあっさりと退職に向かって進んだ。人事の言っていた「多分、相当引き留められると思うけど…」という言葉は幻聴だったらしい。

 とても助かるけれど、せっかくだから一往復ぐらいは「考え直してくれないか。」「いやぁ…」というやり取りをしてみたかった。ちなみに飲みで「あ、ここは奢るからいいよ」と言われたら「あざーっす」と即、財布をしまう。一往復もしない。

つるつると舌の滑る今後の話をして、これまでの仕事の話をして、有給消化の話をすると、最後に上司は
「人事に呼び出されたのは別の要件だったんでしょ?何だったの?」
と聞いた。
「覇気がない、というタレコミがあったそうです。」
と言うと、彼は小さく吹き出して
「そんなの、いつものことじゃんね。」
と言った。僕もちょっと笑った。その時初めて、この職場を手放すのは惜しいかもしれないな、と少しだけ思った。