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2章-(6)ボストンの思いに思いを馳せる

● ルーシー・ボストン邸内のソファに私は腰を下ろし、厚い石壁や古い絵や、暖炉の石を見まわした。この石は500年もの間、外に放り出されていたものを、1941年に完全に修復した物だという。気の遠くなるような年月だ。

確かに「時」が、屋敷全体のひとつひとつの事物に深くしみこんでいる。  この部屋の中で、ここに座って、古い残り布を手に、パッチワークの作業を続けていたら、まわりから立ち昇る「時」の「気」を感じずにはいられないだろう。

100年前、300年前、900年前の子どもたちの声が聞こえ、動き出したのも、自然のなりゆきだったろう。心を静め、深く物思いするとき、聞こえるはずのない声が語りかけてくることがあるものだ。それは自分自身の心の奥底の声なのかも知れないが、このように古い屋敷に住んでいると、屋敷そのものが語る過去の物語が、彼女の心に聞き取れたのだ。そのことが、心に響いてくるようだった。

● ルーシー・ボストンは古い屋敷に住み、庭園を整え、古い布を生き返らせる作業を続ける間に「自然との調和」「歴史との一体感」によって、現在の自分が豊かにされていることを感じていたに違いない。それゆえ「都市化」や「自然破壊」が押し進められることへの危惧感を抱かずにはいられなかったのだ。

彼女の作品は、ひとつの屋敷内の出来事を描きながら、より大きな世界、  イギリスという国家、人間世界、自然を含めて地球全体の存続への願いを  読み取れるような底深さ、含蓄がある。それが「普遍性」とも言い換えられる気がする。

「古い屋敷はそこに何世代も生き続けてきたからこそ、本物なのだ」、と『グリーン・ノウの石』のロージャー少年は感じ、これからもずっと残り 続けてほしい、と少年は願うが、それは「国家の存続、地球の存続」にも つながっているのだ、と聞こえる。

● また、ボストンの描写の特徴は「繊細で美しい表現力」だが、同時に「臨場感」「躍動感」「豊かな想像力」「対決の瞬間の力強さ」など、彼女自身の精神のエネルギーの強さを感じさせる。老いてなお、情熱を失わなかった人だったのだ! そのことを改めて思い知らされた舘訪問だった。

●1時過ぎ、名残を惜しんでダイアナさんにささやかなプレゼントをする。

” We love Lucy Boston's stories of Green Know.
              Kunitachi Story-Telling Group   in Tokyo
   
と書き入れた、ミニうちわを添えて・・。(夕べYさんに頼まれて、これを書いただけだったのだ!)

● 1階の土産物売り場で、ピーターの描いた絵葉書数枚と、本を2冊買い、ダイアナさんには彼女の書いた『ルーシー・ボストンのパッチワーク』に、サインをして頂いた。ルーシー作の ”THE GARDIANS OF THE HOUSE" (屋敷 の守り手たち)も手に入れた。入り口の「寄付箱」に1£を入れておいた。


●  ボストンのマナーハウスから、ドルフィンホテルまで「フットパス=私有地の中を通っているが、誰でも歩いてよい道」が続いていたが、雨が降り出しており、時間節約もあって、バスに乗った。車内で、ラムホテルが用意してくれた「ランチバスケット」でランチした。その分量の多いこと!パン、チーズ、バター、クッキー、リンゴ、ジュースの他に、チキンの太い片脚がどんっと入っていた。イギリス人のタフさの源はこれだ!と納得した。

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