泥棒たちの15時半

 一人は頭が切れるが身勝手。一人は穏やかで憎めない。一人は真面目で慎重。

 高級住宅街にあるひとつの家に三人の泥棒が同時に忍び込んでしまったというコントです。


泥棒たちの15時半

 泥棒Aが玄関に近づき、手袋をはめてピッキングをはじめる
 泥棒Bが窓に近づき、手袋をはめて窓を割る
 泥棒Cが裏口に近づき、手袋をはめてドアノブをひねる
 泥棒三人が同時に家に入る
 三人が目を合わせる
泥棒ABC:泥棒ーーー!!!(三人でお互い指をさしながら)
泥棒A:おまえら!何してやがる!この泥棒!
泥棒B:違う!俺は泥棒じゃない!おまえらこそ泥棒だろう!
泥棒C:おまえ窓割って入ってきてるじゃないか!泥棒以外の人間が窓から家に出入りすることなんてあるのか!
泥棒B:そういう気分の時もあるじゃないか
泥棒C:あってたまるか!
泥棒A:(会話を聞いてふと抜け道を見つけたように)まあまて泥棒二人
泥棒C:おまえも泥棒だろうが
泥棒A:いや、私は…この家の家主だ!
泥棒C:はあ?!
泥棒A:見たろう、私は玄関から帰ってきた。それに対し君は私の家の窓を割って侵入、君は塀を越え裏口から侵入ときた。君たちが泥棒で、私は家主だ。侵入するタイミングは最悪だったようだが幸い君たちはまだ何も取っていない。今のうちに帰ってくれれば警察には通報しないでおいてやろうじゃないか
泥棒C:よくもまあそんなデタラメをつらつら言えたもんだな
泥棒B:よかった、じゃあもう今日は退散しよう、なあお前も(Cの肩に手を置いて)
泥棒C:だまされるんじゃないよ。いいかよく見てみろ、まずなんで家主が家の中で俺たちのように手袋をしてるんだ自分の家で
泥棒B:あ、ほんとだ
泥棒A:日焼け防止でね。肌が弱いんだ。脱ぎ忘れていただけさ(手袋を抜き捨てる)
泥棒C:それになんで土足で自分の家にあがっているんだ
泥棒B:ほんとだ!
泥棒A:うちはアメリカンスタイルだからな
泥棒C:しまいにはお前がきているのは俺たち泥棒御用達のブランド、『五右衛門ワーカー』のジャケットだ!
 泥棒BCが同時にジャケットの裏地をみせる(デカデカと「五右衛門」と刺繍)
 泥棒Aが負けを認めるように同じようにジャケットの裏地をみせる(「五右衛門」と刺繍)
泥棒C :決定的だな
泥棒B:でも確かに。そういえばそもそも下調べのときにみた家主と全然顔違うしな
泥棒C:なんで家主の顔知ってるのに騙されかけたんだよ
泥棒A:なんだちゃんと下調べもしてるのか。もういいよ、俺は、いや俺も泥棒だ。
泥棒C:知ってるよ最初から。
泥棒B:でも凄いことだな。3人の泥棒が同じ家をターゲットにして、同じ日付を決行日にするなんて!
泥棒A:まあ確かに凄いことだけどおかしいことではない
泥棒B:なんでだ?
泥棒A:ここの家主一人暮らしの小金持ち。毎週この時間帯は決まって家をあける。稀に忘れ物を取りに戻ることがあるが、この時間帯に戻ってこなかった場合はもう戻ってくることはない。そしてちょうど近所の人通りがすくなくなる時間帯でもある。
泥棒C:しかも今日は一番近くの小学校で運動会があって家を出てる住民がおおい。近所の家からの目撃情報も出にくくなる日だ。
泥棒A:そう
泥棒B:くそーそりゃかぶるかー!まあでも侵入手口が被らなかったのはすごくないか!この家だと玄関か、俺が入ってきた窓、あと…
泥棒C:裏口。ここの家主いつも裏口の戸締りを忘れてるんだ。あとは二階の窓だな。大きな木のおかげで近所からは死角になってるな
泥棒AB:へー
泥棒C:まあまあ、今はそんな運命を感じている場合じゃないだろ。
泥棒A:たしかに決めないといけないことがあるな
泥棒B:決めないといけないこと?
泥棒A:誰がどれを盗むかを決めないとダメだろう。よし、会議するぞ。
 泥棒Aが机と椅子をドカドカと整理してBとCに座るように促す
泥棒A:みんなそんなに下調べしているんだ。大体目星のもの決めてるんだろう。
泥棒C:まあ…(Bをみる)
泥棒B:たしかにな…(Cをみる)
泥棒A:えーじゃあ一旦希望の品を順番に上げていこう。かぶった場合は手をあげてくれ。その都度話し合いで誰が拝借するのに適しているかを検討しよう。(眼鏡をかけメモとペンを出す)
泥棒B:待ってください議長
泥棒C:議長…
泥棒A:どうしましたか
泥棒B:もし他の二人が価値に気づいていない掘り出し物に目をつけていた場合、挙手によってそれがばれてしまう。また逆の立場だった場合も、自分が目をつけていなかったものを他人が希望していたら、『もしかしたら自分が知らないだけでそれには価値があるかもしれない』と思って手をあげてしまう。結果どれをあげても誰もが手を挙げる。目星をつけていた代物がすべて議論の対象になってしまうんではないでしょうか!
泥棒C:順応はやいな
泥棒A:たしかに。それでは日が暮れる…では一旦それぞれ希望の品を第一希望から第三希望まで決め、第一希望から順にせーので指をさす。そこでかぶった場合は話し合い。被らなかった場合は拝借が確定するといったルールはどうだろうか。
泥棒B:うん…たしかに。それなら平等だ。もし自分が第三希望として目星をつけていても、だれかが第一希望として目星をつけていたなら取られてしまっても文句は言えない。あ、じゃあ、もし希望が被ってその話し合いにも負けたらそいつはどうなる
泥棒A:そいつの次の希望が第一希望に繰り上がることにしよう
泥棒B:なるほど。お前もそれでいいよな?(Cをみて)
泥棒C:…んん…まあ…
泥棒A:よし、ではそれぞれ第一希望から第三希望まで決めて、この紙に書いておいてくれ(メモをふたりに渡す)スタート!
 泥棒ABが部屋に散る
泥棒C:いやお前らぜったい泥棒より向いてる仕事あっただろ。というかなんで俺たちはこんな学級会議みたいなことしてるんだ?新学期の委員会決めかこれは
泥棒A:おい、折角これでいこうってなったんだから。だまって希望を決めてくれよ
泥棒B:そうだぞーひとつの家に泥棒が三人入った時点でもう予定通りに盗みなんてできるわけないんだから
泥棒C:まあたしかに…わかったよ
 三人とも部屋をうろつく
 ピンスポットが泥棒Cを照らし心境を喋り始める
泥棒C:まてよ、これ難しくないか…もしあからさまに高価な代物を第一希望においてしまったら当然競争率も高くなる。だったら大穴は狙わずに、被らないが確実に金にはなるものを選べば話し合うこともなく自分のものにできる。いや、そうか。たとえ希望が被ったとしても話し合いで押し勝てば自分のものにできるのか…つまり、希望が被ったとしてもこう言えばいい。「自分は話し合いが嫌だったから、かぶらないような安物を選んだ。希望は被ってしまったがこれは実は大したモノじゃない。一旦これは俺に譲ってくれれば君の第二希望は繰り上がるから、お前は次に必ず希望のモノを盗める」完璧だ。これで相手の第二第三希望を読みながらモノの価値を偽っていけば、俺がだけ価値のあるモノを総占めできる!
 泥棒Cが二人のほうをみる
 ふたりはすでに希望が被ったのかすこしもめている様子
泥棒C:のんきに選んでろ…もうゲームははじまってるっている!!!
 ライアーゲームのBGMが流れる
 BGMがプツンと切れて家主が帰ってくる
家主:あー今日はいつもより随分早く帰ってこれたな。こんな時間に帰るのはじめて…あれ?鍵あけっぱだっけな
 家主がはいってくる。
家主:誰だお前ら!!!
泥棒ABC:うおー!
泥棒B:ちょうどよかった!なあ聞いてくれよなんかこいつがこれは何が何でも俺のだとかいいだして!あんだけルール決めたのにぐずりはじめるんだよ!(家主に馴れ馴れしく近づきながら)
泥棒A:いーや、それは話し合いの必要もなく俺のもんだね
家主:な、なんだお前ら泥棒なのか?
泥棒C:なんだよあんだけ仕切ってルール決めたのあんただろ、ちゃんとルール通りに取るもの決めようぜ
家主:なにルールって。君たち家主帰ってきたのにどっしり構えすぎでしょ
泥棒C:あーいま真剣に選んでるから静かにして
家主:タイムオーバーだよ?家主帰ってきちゃってるよ?
泥棒A:いったん落ち着こう、ちょうどお湯も沸いたしお茶でも飲みながら
家主:なんで沸かしてるの?
 紅茶を入れる泥棒A
 泥棒Bがうやうやしく椅子を家主のために出してくる
泥棒B:どうぞどうぞ座ってください
家主:あーどうも、ごめんねわざわざ
 4人でテーブルを囲む
家主:(いきなり立ち上がる)いやどうもじゃないよ。なにしてるの君たちは
 泥棒たちで顔を見合わせて照れ臭そうにヘラヘラと
泥棒A:いやまあ泥棒なんですけど…
泥棒C:んん泥棒だね
泥棒B:あ、紅茶、砂糖とミルクとかいります?(席を立とうとする)
家主:あ、いや、大丈夫、ありがとうね。いやありがとうねじゃないよ。泥棒じゃん。泥棒三人組じゃん
泥棒C:いや、組んでは、ないんだよな!(ちょっと楽しそうにAとBをみる)
家主:え?
泥棒B:いやすごくないですか?ぼくら別々の泥棒なんですけど、たまたま同じターゲットで、たまたま同じ日に忍び込んだんですよ!
家主:なんではしゃいでるの?
泥棒A:いやでも裏口と二階の窓がいつも鍵を閉め忘れるなんてよくそこまでこいつ下調べしたよな
泥棒C:やめろよ、当然だろ(照れながら)
家主:仲良くなるなよ、当然であっちゃ困るんだよこっちは
泥棒B:たしかになーでも玄関からピッキングっていうのも職人技でかっこいいじゃないですか
泥棒A:よせやい(照れながら)
泥棒B:ぼくなんか窓割って入るってちょっとベタじゃないですか
家主:あー!ほんとだ!なにしてくれてるんだよ!
泥棒B:あー、大丈夫です、もう破片は片付けてあるんで
家主:いやそれ以前の問題だけどね?くそ、わけがわからん!
 紅茶をぐいっと飲み干す家主
 ピンスポットが家主にあたり心境を語る
家主:意味がわからない状況だが相手が3人に対しこっちは1人。へたに警察を呼ぼうとしたらなにをされるかわからないな。でも相手は強盗ではなくてあくまで空き巣。穏便にしていたら理由もなく襲ってくることはないだろう。隙をみてこっそりと通報して警察を待とう。
 照明がもどる
泥棒B:あ、もうポット、カラですね。みなさんまだ飲みます?ぼく入れますよ
泥棒C:おまえしっかりしてるなぁ
泥棒A:ひときわ若いのになぁ
泥棒C:育ちがいいな
家主:育ちがいい人間は泥棒にはならない!
泥棒B:気配りができる優しい人になりなさいって言い聞かされて育ったから
家主:全然守れてないよね?いま泥棒だもんね君。根本的な教育をしくじってるよ
泥棒A:よし、じゃあそろそろ本題にもどろうか
 泥棒BCが「よーし」と席にもどり姿勢を正す
家主:あー、ごめん、ちょっとトイレに行ってくるね
泥棒A:ああ、どうぞどうぞ
泥棒C:はやくしろよー
家主:俺の家だからな…?!
 トイレに入り電話をかける家主
家主:くそあいつら全員頭おかしいんじゃないのか…いまに見てろよ…あ、もしもし警察ですか!いま自宅に泥棒が入りまして!3人も!はいすぐ来て欲しいんです!住所は〜
 携帯をしまう
家主:これで大丈夫だ。とにかくいまは警察がくるまで時間を稼がなければ!警察が来ればこっちのもんだ。それはではとりあえずあいつらの気に触れないように穏便に、穏便に
 トイレからでて席に戻る家主
家主:ごめんね、おまたせ
泥棒A:じゃあ全員そろったし、気を取り直して誰がどれを盗むかを決めていこうと思う
家主:もうこの状況は盗むとかじゃなくなっちゃってるけどね?
泥棒B:じゃあせーので第一希望を指さすんだよな?
家主:そんなルールが…
泥棒C:いくぞー、せーのっはい
 泥棒3人が同時に指をさす
 AとBが同じモノを指差し、Cは1人ちがうモノを指さす
泥棒AB:あーやっぱかぶったー!
泥棒C:ぃよっしゃ!
家主:状況が全くわからないけど君たちがまちがっているってことだけはわかるぞ!
泥棒A:じゃあ被らなかったおまえには、そのままご希望のエレキギターを差し上げます!
家主:差し上げません!
泥棒C:イエスッ
家主:ノーだよ。
泥棒C:これ60年代だろ?すげー
家主:…よくわかったな
泥棒B:じゃあ僕らは話し合いだね
泥棒A:そうだな…ちょうどいい、あんた(家主)はどちらがこのロードバイクを盗むのにふさわしいと思う。あくまで中立の立場として判断して欲しい。
家主:中立も何も私の家だぞ
泥棒C:それぞれがなんでそれを盗もうと思ったのかをプレゼンしてみるのはどうだろう
家主:意地でも盗む気だな
泥棒A:私は趣味がロードバイクなこともありこの自転車の価値をよく理解している。たとえあなたの手元を離れても、私なら後悔させないと誓おう。
家主:おお、おまえロード趣味なのか。いやでもね、手元を離れた時点で後悔なんだよ
泥棒C:中々いいアプローチだ。じゃあ次はお前だな。なんでこの自転車がほしいんです、か!
家主:なんで仕切ってるの?
泥棒B:ぼく今日歩きできたし
家主:移動手段なの?そんな理由で俺の累計150万のロードが取られてたまるかよ
泥棒A:え、130万くらいじゃ
家主:いろいろいじってカーボンにしたりとか…
泥棒A:なるほどなぁそれはいくなぁ
泥棒C:うーん二人の話を聞いた限りだと五分五分ってかんじか…
家主:いや圧倒的にこいつの勝ちだろ!(Aを指差して)
泥棒C:はいじゃあ勝者はこちら!(Aの腕をレフリーのようにもちあげる)
家主:差し上げません
泥棒B:くそーとられたなー
家主:あげてないから
泥棒B:あー、じゃあぼくはこの広重が欲しい。本物だしね、これ。
家主:なんで本物だってわかるんだ
泥棒B:みたらわかるよ。ぼくも浮世絵収集してるし
家主:そうなのか!
泥棒C:あんた多趣味だなぁ。
泥棒A:たしかに
泥棒B:たしかにね
泥棒C:しかもどれも相当好きだろ。
家主:そうなんだ…そのくせ趣味の合う友達もあまりいなくてね。さみしいもんだよ。
 インターホンがなる
 家主が来た来たと玄関に走る
 泥棒たちは顔を見合わせるが、落ち着いていて周りのものを綺麗に元の場所に戻し、手袋をはずし、三人ともテーブルについておとなしく紅茶を飲み始める
警察官:あ、どうも通報をうけて伺ったのですが…
家主:あってます!ここです!きてください!
 警察官を引っ張って部屋にあげる家主
 堂々と紅茶を飲んでくつろいでいる泥棒たち
家主:ほらあの3人ですよ!泥棒!
 あまりに落ち着いた様子に戸惑う警察官
警察官:…えっと…泥棒と言いますと…どのような被害が…?なにかとられたとか…
家主:あ、いや、まだなにもとられてはないないんです
警察官:は?
家主:え?
警察官:えーと…うーん…とくに部屋を荒らされたとかいう様子でもありませんし…あなた自身は?襲われてお怪我とかはなさってない?
家主:あ、いえ、とくに部屋を荒らしたり怪我をするようなことは一切
警察官:はあ…
家主:…んんん???あ!まど!まどを割られました!
 満を持したかのように泥棒Bが声をかける
泥棒B:ごめんってわるかったよ!弁償するから!まさか本当に警察をよぶだなんて
泥棒C:怒る気持ちはわかるけどもさ、警察も暇じゃないだろうし、こんな友達同士の喧嘩で通報なんてするんじゃないよ恥ずかしい
泥棒A:すみませんね、巻き込んでしまって。お茶でもいっぱい淹れましょうか
警察官:ああああ、いいんですよすみません。ありがたいことに今日は警察もひまだったんで気にしないでください。
家主:だまされないでください!そうだ不法侵入!こいつらは不法侵入罪ですよ!たしかにそれ以外はなにもされてないけども!
警察官:(ため息)この表の通りにガソリンスタンドがあるのわかりますか?
家主:へ?わかります
警察官:そこを西にはいって3つ目の信号のところにある煉瓦色のビルの3階
家主:なんなんですかそこは
警察官:知り合いのセラピストの診療所があります。いい先生なので是非。
 帰っていく警察
家主:あいつ俺がイかれてるとでも言いたいのか…
 後ろでハイタッチをしあう泥棒たち
 悔しさで崩れ落ちる家主
泥棒A:なあ、こいつでどっか行ったりしたの(自転車を見ながら)
家主:ん、ああ、北海道に走りに行った時はよかったなぁ
泥棒A:北海道!いいねぇ!
泥棒C:なあこれ音出してみたいんだけど(ギターを持ちながら)
家主:ああ、向こうの防音室にチューブアンプがあるんだ
泥棒C:おお、どこの!
家主:オレンジ
泥棒C:いいねぇ
泥棒B:ねえ他にないの浮世絵
家主:ああ、やっぱり広重が好きでね。五十三次をちまちまと集めてるよ
泥棒B:うわ見たい見たい!
家主:とくにそれがお気に入りだからここに飾っているだけでね、他のは二階の部屋に全部あるんだよ。とってこようか
 家主が案内しようと数歩歩いて
家主:そうだ。北海道に行った時にとった写真のアルバムも2階にあるんだ。一緒に持ってくる
泥棒A:あー見たい見たい!ありがとう
家主:いいんだみせる人なんていなかったからね。そうだあと君も防音室つれて行かなくちゃ
泥棒C:いや、二人のとってきたあとでいいよ。
家主:わるいね、ちょっと待っててくれ
 家主二階に上がろうとしてふと気づく
 ピンスポットが家主を照らす
家主:…楽しい…!楽しいぞ?なんだ…泥棒たちとこんなに趣味が合うなんて…話が合う友人なんて最近全く居なかったしな…好きなものの話ができるのはこんなにたのしいことだったのか…あいつら…泥棒だけどいいやつらじゃないか…そうだよ…これから彼らと友達になることも出来るんじゃないか…?
 家主が部屋に引き戻る
家主:なあ、君らのこと、改めて警察に届けたりはしない。でも一つ頼みがある。今日からぼくと友達になってくれないか。まわりに趣味の合う人がいなくて…
泥棒A:…それもそのはずだよ。あんたの職場、ネイルサロンだもんな。
家主:なんでそれを…(そういえば最初から爪に可愛いネイル)
泥棒A:泥棒だからな。下調べしてあるんだよ。
泥棒C:正直最初に知った時はびっくりしたよ
泥棒B:たしかにロードバイクにギターに浮世絵収集が趣味のネイリストとか珍しいだろうしね
家主:たのむよ!月に一回あそびにくるとかでもいいんだ!友達がいないんだ全然!
 顔を見合わせる泥棒たち
泥棒A:じゃあ仕事が休みの毎週火曜日の夕方頃なら君はだいたい家にいるようだし
泥棒B:じゃああなたがいつも買いに行ってるケーキ屋の焼き菓子とか持っていくよ
泥棒C:あと関係ないけど裏口の鍵、いつも閉め忘れてるから閉める癖つけたほうがいいよ
家主:なんでそんなに私のことをしっているんだ!
泥棒ABC:泥棒ですから
家主:いや、ともあれ、これからよろしく、三人とも。これからはベルを鳴らしてくれ。僕が玄関から迎えよう。
 4人で握手をする
 ガラスが割れる音
家主:なんだ?二階か?
 泥棒3人が顔を見合わせハッと思い出す
泥棒C:二階の窓は近所から死角になっているんですよ
家主:あぁ、そういうことか
4人:いらっしゃーい(上のほうを見ながら)

ー終ー

こちらから投げ銭が可能です。どうぞよしなに。