#138 水無月の本②
今村夏子さんを読んだ6月。
1.星の子
芦田愛菜ちゃん主演の映画で話題になっていた「星の子」。
かなしいお話なのだろうかと思っていたのだけれど、たしかにかなしいのだけど、主人公ちひろと母と父はちっともかなしくはない。むしろ愛に溢れているようなくらい。
周りからみたときに異常であり、かわいそうであり、変であり、救わなきゃ!とおもうことでも、本人にとってはそうではない場合だってあることが、大なり小なりある。
「一般的」な感覚、というのは、幸せとイコールではないのだろうな。「一般的」もなんだかわからないし。
だからこそその人が言ったことや思ったことが、私にわからない感覚だったとしても、受け止めたいなと思ったりした。むずかしいことだけど。
どんな形であれ、信じるものがあるっていうのは、人を強くするのだろうな。
2.むらさきのスカートの女
これは「えっ?」という終わり方で、全ては読み手の想像力に任せた!というような終わり方。
主人公の権藤チーフ目線で見たむらさきのスカートの女が終始語られているが、読んでいる途中で権藤チーフって存在しない幽霊的なものなのでは?という気持ちになったりして、
なんだか今まで読んだことのない物語だった。
むらさきのスカートの女の変貌ぶりにも驚きはするものの、やっぱりむらさきのスカートの女に対する主人公の執着、謎の愛情、親しみに狂気すら感じ、そこに注目してしまった。
私はむらさきのスカートの女目線の権藤チーフの物語が読みたい。。
今村夏子さんは「どうして子供の話ばかり書くんですか?」という質問に対して、「私は今までの人生の3分の2ぐらい子どもでしたから」と答えたそうです。
まだまだ子どもだな、と歳を重ねるごとに思い返したりするのだけれど、人生の殆どが子どもだと考えれば当たり前のことなのか、と一瞬で腑に落ちてしまった。
こうやって解釈を言葉で変化させてくれるところが、さすが作家さんだ。この考え方は、忘れたくない。
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