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ドラッカーで学ぶ英語『The Effective Executive』

ピーター・ドラッカーは20世紀を代表する経営学者。

経営学の神様とも呼ばれ、現代でも巨大な影響力を及ぼしつづけている人物です。

今回は『The Effective Executive』という彼の代表書のひとつを読んでみます。日本語版のタイトルは『経営者の条件』。

Effective Executiveというタイトルがすでに訳しにくいですが、直訳すると「効果的な経営者」とか「成果を上げるリーダーシップ」とかになると思います。

本文の文章はけっこう読みやすい。

現代を先取りするアイデアがバンバン登場して読み物としても面白いです。

彼の本を読んでみるとわかるんですが、まず社会の行く末を見通す先見性がすごい。そしてそれに基づいて働き方や組織の作り方をアドバイスしています。

だから、一部の経営陣とか幹部にしか関係のない話ではないんですよね。多くの人が自分ごととして読める名著が多い。だから売れ続けるんだろうなと思います。

まず第1章の冒頭を読んでみましょう。

To be effective is the job of the executive. "To effect" and "to execute" are, after all, near-synonyms. Whether he works in a business or in a hospital, in a government agency or in a labor union, in a university or un the army, the executive is, first of all, expected to get the right things done. And this is simply that he is expected to be effective.

Peter F. Drucker『The Effective Executive』

「成果を上げることが、リーダーの仕事である。結局のところ、「成果を上げること」と「実行すること」は同義語に近い。企業であろうと病院であろうと、政府機関であろうと労働組合であろうと、大学であろうと軍隊であろうと、リーダーはまず第一に、正しいことを成し遂げることを期待されている。要するに、彼は成果を上げることが期待されているのである。」

To be effectiveは直訳すると「効果的であること」ですが、それだと意味がよくわからないですよね。ここでは「成果を出すこと」と解釈しました。

the executiveは「幹部」とか「経営者」の意味。ただ本書はビジネスの範囲を超えて多くの人々に当てはまる普遍的な内容を述べているため、リーダーと訳しました。

Whether he works以下はin a A, in a B, in a Cと同じ形が繰り返される。

「Whether he works in a business or in a hospital, in a government agency or in a labor union, in a university or in the army, the executive is, first of all, expected to get the right things done.」

そしてこの繰り返し構造が途切れた直後に出てくるthe executive isが主語と動詞。

1文は長いですが、構造がガッチリしているので読むのは容易です。

・synonyms 同義語
・this is simply that 簡単に言えば、要するに


ドラッカーはefficiencyの概念をeffectivenessと対照させます。

For manual work, we need only efficiency; that is, the ability to do things right rather than the ability to get the right things done.

同書より引用

「マニュアル作業の場合は、私たちが必要とするのは効率だけだ。つまり、正しいことを行う能力ではなく、正しく仕事を行う能力である。」

「to do things right」と「get the right things done」が対比される面白い文章。

「to do things right」は正しく行うこと。これがやるべき仕事だよと正解が与えられているのが前提で、それをいかに正確に行うかということ。これが旧時代のマニュアル仕事だとドラッカーは言いたいわけです。

それに対比されるのが「get the right things done」で、これはそもそも何が正しい対象なのか、そもそもやるべき仕事はなんなのかを、設定すること。これを行うのがEffective Executiveだと言います。


そのようなEffective Executiveになるために要求される能力は次の5つ。

・時間を効率的に使う
・チームへの貢献という視点で動く
・弱みを埋めるのではなく強みを伸ばす
・優先順位の高い分野に集中する
・複数の見方にもとづく効果的な意思決定をおこなう


最後のEffective decisions(効果的な意思決定)の章から、面白い文章を一段落読んでみましょう。

Decisions of the kind the executive has to make are not made well by acclamation. They are made well only if based on the clash of conflicting views, the dialogue between different points of view, the choice between different judgements. The first rule in decision-making is that one does not make a decision unless there is disagreement.

同書より引用

「リーダーが下すべき決断は、満場一致の拍手喝采ではうまくいかない。対立する意見の衝突、異なる視点間の対話、異なる判断間の選択にもとづいて初めて、うまくいくものなのだ。意思決定における第一のルールは、意見の相違がないかぎり意思決定をしないということである。」

みんなの意見が一致した状態だと、そこから出てくる意思決定も優れたものになるようなイメージありますよね。

しかしドラッカーはそれは反対だというんです。

「They are made well only if based on the clash of conflicting views, the dialogue between different points of view, the choice between different judgements.」

主語のtheyが表すのは前文の「Decisions of the kind the executive has to make」

ButとかHoweverとかの表現なしにいきなりこの文章が始まりますが、内容的には前文との強い対比があります。慣れてくるとそのへんも一発で嗅ぎ取れる。

based on以下は節が並列されている構造。based on A,B,Cというふうに。

Aに来るのが「the clash of conflicting views,」

Bに来るのが「the dialogue between different points of view,」

Cに来るのが「the choice between different judgements」

やっぱり構造がカッチリしているので、慣れると読みやすいタイプです。


次の文章。

「The first rule in decision-making is that one does not make a decision unless there is disagreement.」

厄介なunless(もし~でないのならば)の登場。

返り読みはせずに、左から右に読み下すのが理想です。

意思決定の第一のルールは→意思決定しないことだ→もしそこに意見の相違がないのなら。

この読み方をすると読解スピードが格段に速くなります。

・acclamation 拍手喝采、満場一致


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