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おひとりさま日記

夫が「出張ついでに帰省してくる」と、息子も連れて島根に行ってしまった。

ふいに訪れたひとり時間の記録。

2月21日(火)

いつもどおり保育園へお迎えに。息子は「今日しまねにいくの?いぇーい!!」とテンションが上がっている。担任の先生に「ママも帰るの?」と話しかけられた。「いえ、ひとりで残るんですよ。何して過ごそうかなぁって」

静かな日々を想像して寂しい気持ちになっていたけど、先生が「いいじゃないですかー!羽を伸ばせますね。映画見たりとか」と明るく言うので、少し気楽になった。よし。羽、伸ばすぞ。

駅へ向かい、夫と合流。「お母ちゃん寂しいよー」と息子をギュッとするも、ノーリアクション。心はもう島根にいっている。

息子は小さいときから、母と離れることになんの文句も言わない。おれたち、心は繋がってるもんな。それにしても1ミリも母の不在を気にしていなさそうで、なんだよぅ、と思った。

ホームへのエスカレーターを降りていくふたりを、見えなくなるまで見送った。

さて。とりあえず、帰るか。

息子のいない帰り道はとても長かった。手を繋いでお喋りして帰るのって、すごく楽しい時間だったんだなぁ。

先生の言うとおり、夜は映画を見ることにした。プロジェクターを持ってきて、壁に映す。

夫とふたりのときには絶対見ないであろう『花束みたいな恋をした』を選択。出てくる作家の名前や曲の名前は全然分からなかった。想像していたよりも爽やかな映画だったな、と思った。

2月22日(水)

しごと。朝はいつもより少し遅く起きた。

夜、同僚との食事の予定が延期になったので、ひとり神楽坂へ繰り出す。あてはない。とりあえず歩く。

序盤のほうで、小さなブルワリーが目に入った。ここ、店内で食事もできるんだ。客はまばら。どこも見つからなかったらこの店に戻って来よう、と思った。

「いま、どんな気分?」

自分の感覚をしっかり確認しながら歩く。店選びを間違えると今夜が台無しになる。いくつか入店を迷った店があったが、中の様子が見えにくかったり、大きな笑い声が聞こえてきたり、自分の手前で大人数が入っていくのを見たりして全部やめてしまった。

1時間くらい歩いただろうか。喉が、乾いた。酒が飲みたい!

結局序盤のブルワリーへ入り、ビール飲み比べ(3種)とピクルス、唐揚げを頼んだ。私のほかに客は一組しかいない。店員さんの淡々とした態度がちょうどよかった。

食事が終わる頃には店は満員になっていた。3種のビールでほどよく酔って帰宅。すぐにプロジェクターを立ち上げる。〆に残り物の豚丼を食べながら、『蜜蜂と遠雷』を見た。

2月23日(木)

祝日。息子からのビデオ電話で起きる。今日は何して遊ぶの?と話しかけるも返答なし。ろくに顔も映さずにしばらく放置されて、「もういい」と切られた。えぇぇ。息子はいつもこんな感じだ。

お腹があまり空いていないので朝食は抜きにする。身支度をして近所のコーヒー屋さんへ。顔なじみのオーナーさんが店頭に立っていた。軽く言葉を交わして2階の席へ。

カフェラテと軽いおやつをお供に、持ってきた本を読む。堀井美香さんの『一旦、退社。』発売前に予約していたのが、最高のタイミングで届いたのだった。ところどころ、じーん…としながら一気に読み切った。

お昼ごはん、どうしようかなぁ。

なんとなく早稲田方面へ行きたくなったので、気分にしたがって歩く。家族で何度か行ったことのある、いい感じのお店でランチすることにした。

周りは若いカップルや家族連れ。おひとりさまは私だけかな。「実は私、夫も息子もいるんですよ〜…」と心の中でアピールしつつ、家族とセットではない、ただの自分として過ごしていることに新鮮さを感じた。

「本日のパスタ」のボードに、「カモとほうれん草のクリームパスタ」と書いてあったので迷わず注文した。カモ大好き。

でも、待っている間に嫌な予感がしてきた。もしや、「カモ」ではなく「カキ」だったりしないか…?いやでもどう見ても、カモ。「キ」だったら最後の一画はまっすぐ書くよね?ボードの字はぐにゅっと曲がってるもんね?

残念ながら予感は的中。カキがもりもり乗ったパスタが運ばれてきた。カキ、そんなに好きじゃない。

それでもこのランチを失敗にしたくなかったので、「いや、でも美味しいよ。うん。美味しい。」と考えながら食べた。

半分食べたところでお腹いっぱいになり、「夫がいたら分けて食べられるのになぁ」と思ったりした。ご飯は残さない主義なのでしっかり全部食べた。

店を出て、近くの庭園へ。家族で来たのはいつだったか。ずいぶん久しぶりな気がした。

芝生に座ってぼーっとする。ぽかぽかしてて最高。

寝そべって空を見上げたら、コンタクトレンズについている汚れみたいなものがめちゃくちゃよく見えて、空に集中できなかった。すぐ起き上がって、またぼーっとした。

思う存分日光浴をして気が済んだので、帰路につく。本屋さんへ立ち寄ったけれど、これは!という本に出会わなかったので手ぶらで帰った。

ドラッグストアで買い物をして帰宅し、ポッドキャストを聞きながらゴロゴロ。いつの間にか眠っていた。うたた寝して目覚めたときの心許なさって何なんだろう。寂しい気持ちに飲み込まれないように、動画を見たりあたたかいお風呂に浸かったりした。

夕飯は残り物の粗食。明日のために炊飯器をセットし、味噌汁を作っておく。忘れないうちにと、生協の注文も済ませた。

明日は仕事。おひとりさま生活は、あと2日。

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