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日本語人ガメ・オベールさん

『ガメ・オベールの日本語練習帳』ジェームズ・フィッツロイ(青土社)を読んだ。

読んだのは去年の12月。2021年の師走に近所の本屋で目に留まり、一旦は買わずに帰り、また数日たっても心の中で気になっていたので購入した。
”ガメ・オベール” ”ジェームズ・フィッツロイ” どちらも聞いたことのない名前であった。しかも海外文学の横の外国語随筆・エッセイのコーナーに置いてあるのに翻訳者の名前がない。どういうことなのだろう?と疑問だらけの印象であった。J.フィッツロイさんがガメ・オベールという筆名で日本語で書いていた(書いている)ブログを書籍化した本だというのは、本を読み始めた後からわかったことだ。(そして私が彼を知らなかっただけで、心ない人たちから嫌がらせのコメントを粘着されるほどちょっと名の知れたブロガーだったのでした。)本屋の設定した売り場が適切なのか疑問が残るが、私がいちばんよく眺める棚にあったことでこの本の存在を知り彼の書くものを読めたのだから良しとしよう。

売り場で本の中身をぱらっと読んだとき、何がそんなに気に入ったのか、それは本の帯にも書き出しが印刷されている最初の1編である。

帯写真

おこがましいかもしれないが、彼の書いていることがよく”わかった”。そして自分のつらかった日々(10年以上前だ)を思い出して、今つらい人のことを思って、これからつらくなる人(できるだけいない方がいいんだけど)を受け止めるセーフティネットのような文章だと思った。

言及するテーマは多岐にわたっているので興味の持てない記事やなんやもあるけれど、これからも彼が日本語で書くことに耳を傾けたいと思った。(もっと文章を読みたいって事なのに“耳を傾ける”って変だね)

本に収録されているトピックで特に良かったのは、言語と詩のこと。私は詩と仲良くありません。定型詩の短歌や俳句を読むことは好きだけれど創作はからっきしで、自由詩は読むのも難儀する。詩こそ言語の根幹だという話を読んで、あぁそうかそうだよなぁ私に足りないのはそこだよなぁなんて気づいたり…。詩に明るい人の書く散文は総じて素晴らしいもの。

他にもいろいろ感想はあるのですが、ガメさんに興味のある人はまずは今公開されているブログを読んでみるといいと思います。

↑ Amazonのレビューを覗いたら熱いコメントがたくさん寄せられていた。みんな仲間ね。


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