ボルダリングから考えた組織のあり方

最近、ボルダリングにハマっている。そう話すと、「腕の筋肉めっちゃ使いそう」とよく言われる。僕もボルダリングにガッツリとハマるまでは、同じような認識だった。

だが、実際に何度も登ってみるとわかるのだけど、腕の筋肉はほとんど使わない。もちろん、突起をグッと掴むための握力だったり、大事な時の踏ん張りで肩や背中の筋肉を使うこともある。だけど、大半は下半身の踏ん張りやかきこみ、重心移動がキモになってくる。

実際、ジムに通うと実感するが、登っている人には30歳の自分より年上の人も多いし、自分よりも筋肉量が少なく見える方が、自分より難易度の高いコースを登っていたりする。

体の使い方と同じくらい大事なのが、「オブザーベーション」と呼ばれる脳内作戦会議だ。これも登ってみるとわかるのだが、少しでも斜面がついた壁は想像以上に疲れる。腕の筋肉は体全体の約10%しか占めていないため、登っている途中でコースに迷ったりするとすぐに乳酸が溜まって登るのがしんどくなる。

経験者は皆、登る前にどのようなコースで登ると良いのかシュミレーションをする。そこで考えたコースで登ったとて、毎度うまくいくわけじゃない。自分が思ったように掴めなかったり、登ってみて初めてわかることがある。自分がなぜ登れなかったのか。どうすれば登れるのか。筋トレや体の使い方はもちろんだが、シュミレーションを数多くこなすこともボルダリング上達には不可欠だ。

腕の筋力より重心移動と足。休憩中のオブザーベーションが大事。こういった発見自体、ボルダリングを続けなければ気づかなかったことだ。つまり、対象を遠くから観察しているだけでは、その本質にはなかなか気づかない。

ビジネスの世界でも、ティール組織と呼ばれる組織体は、お客さんに最も近い現場のメンバーが、自分達が何をすべきかを自分達で決めて行動する。だが、そういった組織体はまだまだ少ない。なぜか、現場のメンバーよりも管理職のメンバーの方が、良い意思決定ができると思われがちである。そこには、数字に基づいた目標があり、自由意志よりもマネジメントをした方が、効率よく結果を出せるというバイアスがあるように思える。ところが、ティール組織にまつわる本を読んでみると、現場が自由に働く方が数字はもちろん、メンバーのモチベーションも高まり、総合的にみて良い成果が出ているという結果がある。

現場メンバーがベストな意思決定をできない、というのは間違っていると思う。むしろ、彼らが最善の意思決定ができるよう、彼らの中に眠る無意識にどう働きかけるかが、いわゆる管理職と呼ばれる立場の人たちが務める役割ではないだろうか。人生経験や知識の多寡というのは、どうしても生まれてしまう。しかし、どうすれば良い体験をお客さんに提供できるかというのは、そんなものに関係なく考えられるはずだ。

企業選びの際に、どれだけ裁量権があるのかを気にする人が増えていて、それに伴い、裁量権の移譲を進めている企業も多いと思う。一方で、そもそも裁量権を分けていくという考えではなく、それぞれがすでに裁量権を持っていて、それをどう活かすのか、どうやって無意識を言語化するのか、という視点に立ってみると、違う組織のあり方が見えてくるのではないかと思う。

とはいえ、ボルダリングも何度も失敗を繰り返さないと登れないように、組織づくりも一発で完璧な組織を作るのは不可能だ。ボルダリングでは登っている時に、全く知らない方が「がんば、がんば!」と声をかけてくれることがある。それと同じように、互いに「がんば、がんば!」と応援できるマインドを持つのが、何より大事なのかもしれない。



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