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AIは人のシゴトを奪うのではなく、より機会均等な世界を作ると思う。

長いこと、AIが人間の仕事を奪うと言われています。

僕もAIのことを中途半端に理解していた時は、なんかすごい人工知能がどんどん人間の存在を脅かしていくと考えてい増田。人工知能を作ったり理解できる一部の人だけが全てを支配するロボット資本主義というディストピア。

でも、AIについて知識を貯めるにつれてその考えも変わっていきました。

何が奪われるかではなく、どんな性質のものなら奪われないのかを考えると、AIはむしろパソコンのOSをアップデートするように、個人の可能性を進化させるのでは、と。

AIとの上手な付き合い方を考える上で参考になったのが、ドイツの経営コンサルティング会社の日本代表を務める長嶋聡さんの書いた「AI現場力」です。この本を下敷きに、AIと人のディストピアじゃない未来を考えてみました。

「AI現場力」はタイトルの通り、AIの力を組織開発や事業成長に適切に取り入れるためにはどうしたら良いかについて日本企業向けに特化して書かれた本です。

「はじめに」でドイツのAI技術の取り組み方を「少数の天才がほぼ完璧なAIを作り、それに9割のブルーワーカーが従うロボット資本主義」と批判しています。その上で日本人の国民性や日本企業の良さを生かしつつ、超トップダウンにならずに個人と個人、部署と部署、企業と企業のコラボレーションを進めるためのAIへの向き合い方を紹介しています。

AIの得意・不得意について

そもそも、AIって何が得意で、何が不得意なんだ、というところを本書の言葉を借りつつ簡単に整理します。

AIが得意なのは、「コピー&ペースト」です。一定のチューニングさえしてしまえば、単純作業は人間よりも圧倒的に速く、正確に行ってくれます。大量の情報をルールに沿って分析し、数値化やラベルにより整理してくれます。例えば、裁判での判例を探す際に、事件の内容をラベルで因数分解して、そのラベルと同じ判例をさっと見つけ出してくれます。

一方、AIが不得意な領域は三つあります。一つ目は「全体像の把握」、二つ目は「ゴール設定」、三つ目は「阿吽の呼吸」です。

ざっくりと言い換えれば、AIは自分の範囲外の作業が考えられず、人間が設定したゴールにしか進むことができず、咄嗟の切り替えができない、全く融通の効かない人間のようなものです。

つまり、AIが人間の仕事を奪うと言っても、まだまだ奪えない領域はたくさんあるわけです。2045年にAIが人間の知能を超えるシンギュラリティが来ると言われてますが、そもそも僕は人間の考えると、人工知能の考えるは異なると思っているので、AIによる完全支配はないかなと思っています。(話が異なるのでまた別の機会に書けたらと)

ポケモンの能力値のように、人の可能性を可視化する

AIの特徴がわかった上で、どうやったら人間のOSをアップデートできるのか。僕が考えてたのは、個人の能力を技術とマインドに分けて可視化することです。イメージとしては、ポケモンやパワプロの能力値のような感じです。職種によってとかではなく、より抽象度の高い形で可視化する

例えば、スーパーのレジで働いているお母さん(仮にヒロコさんとします)がいるとしましょう。レジ打ちはコピペが簡単な作業なので、AI代替される可能性は十分にあります。ですが、レジを打つことだけがヒロコさんの能力ではないはずです。もしかしたら、毎回のレジ打ちの時にお客さんと心地よいコミュニケーションを心掛けているかもしれない。他のレジの様子を見て、全体最適を図っているかもしれない。レジ打ちという表面だけでは見えないヒロコさんの潜在スキルは絶対あるはず。

もし、レジ打ちに紐付いたヒロコさんのスーパーでの仕事を抽象化して数値でパラメーターにできたとして、仮に顧客対応能力が高かったとしましょう。そしたら、顧客対応能力を活かして、別の仕事に就ける可能性は十分あります。カスタマーサポートやカスタマーサクセスができるかもしれない。

ここで、でもどうやってそのスキルを身につけるのか、という話があがるでしょう。それも、AIで解決出来ると思います。AIはルールとゴールさえ決められれば、圧倒的な速度で学習します。そのすごさは囲碁で有名だったりしますよね。

カスタマーサクセスのプロがいて、その人がなにゆえプロなのか、匠の業をAIに学習させれば、そのデータを元に最短距離でスキルを身につけられます。

実践でもAIからのFBによって足りない部分をどんどん伸ばせるでしょう。スポーツの世界ではありますが、ハンマー投げの室伏選手は鉄球にセンサーをつけて回し方がどれだけ理想に近いかを微調整していたそうです。カスタマーサクセスの唯一解はないとしても、確度の高い事例と自分の行動の比較はできるはず。

こうしてカスタマーサクセスのスキルが身についていけば、レジ打ちができなくなっても、活躍できる。その人の経験ではなく、ポテンシャルや人としてのスキルをベースに転職活動ができるようになるはず。

匠の業を全部流出させたくないという意見も出ると思いますが、であれば途中まで無料で公開して、入社してくれた見せればいい。もしくは、信用スコアのような形でお金を借りれる仕組みを作って、優良でも視聴できるようにすればいい。信用でローン組めるシステムは「Global Mobility Service」が車を借りるローンで実際に行っていますし。

AIを人のソフトウェアをアップデートする形で活用できれば、学歴などに関係なくより多くの人に活躍の機会があると思います。

肝心なのはルールの決め方

ここまでAIが人の可能性を拡張すると書いてきましたが、基準値を決めるのはあくまで人間です。その基準がどういう風に作られるかがとても大事です。特定の人が利益をうけたり、もしくは被害を被るようなパロメーター設計は避けられるべきです。

また、全てを数値で判断するのも100%良いわけではないと思います。例えば、アニメ「psycho-pass」では「犯罪係数」と呼ばれる人の心理状態でその人が潜在的な犯罪者かどうかを図るシステムがあります。劇中ではそのシステムをかいくぐった犯罪者が全く警察に捕まらない(厳密には捕まえられない)という事態が起こっていました。

人の能力値と犯罪係数の測り方は違うとは思いますが、どちらも人がルールを作っていると言う点では同じです。「psycho-pass」の世界でのルールが間違っていたとは言い切れませんが、人を数値化するとどこかにほころびがでます。

現実の世界でも、アメリカで犯罪者を認識する画像認証の技術で白人よりも黒人の方が犯罪者だと見なされる確率が高かったという悲しい結果も出ています。

モラリティで判断基準を作る

では、何に則ってルールを作ればいいのか。判断基準として用いられるべきは、「倫理観」や「道徳観」だと思います。結果だけを見て数値が良かったとしても、過程で倫理に外れたことをしていたら数値を下げる、といった具合です。

哲学者のロックスターとも呼ばれているマルクス・ガブリエルは「倫理資本主義」を掲げ、利益の最大化よりも、社会のモラルの進歩がこれからの時代求められる、と述べています。企業を図る基準だけでなく、個人を図る基準としもモラルが用いられるべきです。

彼の思想を借りるなら、モラリティは文化も人種も関係なく誰もが平等に持っているモノだからです。例えば、誰かが赤ん坊を窓から投げ捨てようとしたら九割九分の人がそれを止めるでしょう。そうした道徳的規範で物事を図っていく。人間性の良さ(という定義も曖昧ですが、、)があらゆる物差しになれば、やっぱりその人の出自関係なく、AIがサポーターとして入ることで、人の可能性は拡張されるはずです。

さらに言えば、パロメーターの数値に応じて組織内でチーム編成をしたり、M&Aなどを行うことで、ジクソーパズルのピースのように相性の良いチームや組織が沢山生まれるのではないかと思っています。

誰かの仕事を奪って終わりではなく、むしろあらゆる人の可能性を開くような形でAIが進化していって欲しいと思うのです。



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