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詩) マリア

   マリア

夏の訪れを予感させる雲と海風が
あなたが握りつぶそうとしている思い出を再び息づかせる
絶望的なまでに磨耗し、擦り切れ、怯え切った自己
僕はただ道化師となるほかはなく
ひたひたと砂浜をなめる海水のようにつかず離れず―――

その眼差しは、ひたすら合わせ鏡の奥へと吸い込まれてゆく
一つ目の像の歪みは、二つ目の像の歪みへと
二つ目の像の歪みは、更に三つ目の像の歪みへと
そして更に四つ目の像の歪みへと
次々と譲り渡されてゆく

体験の届かぬ理知
感覚を拒否した数列
そのような干からびた創造に狂わされ
置いてきぼりにされた痛みを取り込み宿すこと―――
あなたを置き去りにした者たちの「未来」というもの・・・

夢魔に取り憑かれたアルゴリズム
権威主義の旗に引き寄せられる論理
それらがあなたにとっての精子となり
あなたは孤独の中で受胎を繰り返し
呻き、悶え、産み続けることを強いられる

(そこからあなたを力ずくで引きずり出すことが
 果たして適切な友情と言えるのであろうか )

鏡のような冷え冷えとした雲が拡がってゆく
それに吸い寄せられるようにざわめく波頭
その中でまたひとり生まれ出る者―――
僕はそれを育て上げねばならない
受胎と分娩のみに狂うあなたの傍で・・・

          (2009.9.21)

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