見出し画像

手触り

     手触り

マンホールの中をのぞき込む
曲がっている線
血が固まっては融ける―――繰り返し

あらゆる者が大衆から抜け出し
自由という名札を胸に留め
ああ、再び煽動者を求めている

   晴れ間の覗いた灰色の空から
   時折落ちてくる滴は、まるで
   生物の体内から出る滴りのようだ

   凍りつき、そして融解した
   ふにゃふにゃの碧い茎を折ると
   わずかに粘性を帯びた水が指にまとわりついてくる

切れる寸前の縄がかすかに軋む
無数の黄色い小さな渦巻きが
現われては消える―――とめどなく

なまあたたかく、同時にひんやりとした唇
感覚器と化した我々の口そのもののように
既に放棄された機能を探し出すのは不可能だ

ある固定観念があるとする
それを蹴飛ばしながら歩いて行く者が居るとする
その者はいずれ嘔吐することになるだろう

   古びてゆく都市が見える
   憐憫という文字を失った者たちが見える
   落ちぶれた者は蹴飛ばせばいい・・・

          (2008.2.9)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?