詩) 雪夜
雪夜
漆黒の暗闇を降りしきる雪の
その軽々とした睡(うま)いのゆるやかさ
結晶の格子の上に積み重なるにつれて
わずかな瞬きを蓄えてゆく
わずかな風が動くたびに
一団の結晶たちが少しだけ風下へ流され
木の陰、斜面の足下へ吹きだまる
森の中では地面の傾きが積もってゆく
少しずつ、少しずつ格子を解きつつ
冷気を増して沈んでゆく
呼吸を失いながら
凍りついてゆく
無数に舞い落ちる雪の静かな着地を
音もなく受け止め続ける者もまた
雪、雪、雪―――
その軽々とした掌
あらゆる鼓動は気配を吸い取られ
隠されているだけで
ひそかな営みとして
生きつづけている
楽しげな、温かな部屋が見えないか
雪たちの深い眠りの向こうで
やわらかに守られているのを
感じないか
無数に舞い落ち、静かに着地する
音もなく受け止め続ける者がいる
雪、雪、雪―――
その軽々とした掌は、あたたかい
(2005.2.6)
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