詩) 帰還

   帰還

既に郷愁の飛び去った、わたし、へと
私は帰るのだ

乾いた音をソロで奏でる
針葉樹の林までが
忍び寄る微風に傷つく―――
そのような・・・世界

跳べ
俯瞰せよ

おお、この両掌(て)を見るがいい
この両掌の犯した数々のわざ
無数の喜悦と悲歎をなだめた者よ
お前の紡ぎ出す空しい慄え

あの樹冠をそよがす波が
俯く懐へと触れてくる

恍惚の中に立ち尽くす木々
それを縫うようにして
私は帰る
私自身にしか辿り着くことのできぬ地へと

          (2004.11.2)

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