詩) 駅
駅
ここで降りる
するするとホームに到着する電車の音
そこから降りてくる人々のランダムな靴音
私、は居ない
私たち、が居る
理由のない涙こそは
生きることの恍惚の証
空疎で、だけれども透明
そこから滲み出てくる次の一瞬
まるで死の向こう側に居るかのような
そこから眺めているような―――生の時間
贅沢にこぼれ落ち
そして流れてゆく
道、ではなく
2本のレールへと流れてゆく
そこへ吸い込まれてゆくもの
まるで澄んだ川の水のような
美しい銀色のレール
それに従うことの、更なる美
ああ、また電車が到着する
2本のレールに乗って滑るように
その下へと吸い込まれてゆく
そこへと倒れこむことの恍惚
ここで降りる
(2009.11.5)
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