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選択

   選択

無数の小さな抜け穴が
その道には用意されている

もしくは

無数の分れ道が
その道のすぐ脇を通っている

もしくは

おやつを載せたトレイが
ひっきりなしに目の前に突き出される

もしくは

誘惑的な煙草の煙が
かすかに漂い続けている

もしくは

無数のチャンネルが明滅し
視覚と聴覚のみを働かせる

もしくは―――

私は手を伸ばす気になっている
少しだけ
ちょっとだけ
隙間を埋めるだけ
それだけのことだろうから―――
それが麻痺作用のあることを知ってから
私は手を伸ばさない
拒む必要の無いもの、であろうと
滋養のあるサプリメント、であろうと
私は手を伸ばさない

「自身」と「感覚器官」とは
互いに愛撫しあいながら
全く別の存在として生きている恋人のようなもの・・・
「自身」の欲望を満たすこと、と
「感覚器官」の欲望を満たすこと、とは
私という同じ場の中で生じている反応なのだ

私の手は求めている
私の手は小刻みに震えている
選ぶこと―――
それを目前にして

          (2007.5.26)

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