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詩) 暮らし

   暮らし

からからと笑う―――
その自分の顔やら
しゃれた骨董の家具やらを映す
つるつるに磨かれた床

静かなので
小鳥のさえずりや
風にそよぐ葉擦れや
人声以外の全てが豊かだ

流れるものは水や空気であって
時間ではないのです
思い出されるのは何ヶ月も前のことであって
昨日や、先週のことではないのです

今は皆、出かけているので
もうずっと、こんなふうに過している―――
暮らしというものを感じるには
こんなふうでなければならないのですね

つつつ、つつつ、と
涙が流れてくるのは
哀しいときではない、と知りました
心が晴れ晴れとなる時なのだ、と知りました

広い居間のフランス窓の傍に立ち
かつて居た街へ、うねうねと通じる道を眺め
ああ、今日もまた誰も訪れず
そしてまた僕は旅立たなかった、と呟くのです

この手首に残る傷跡―――
それも既に微かなものとなって
消えかかり
僕自身の生命の一部に過ぎなくなっている

毎日は、ほんの少しずつ
ほんの僅かずつ異なっており
新しく生まれてくるものなのでした
そこに、現在は暮らしているのでした

夕日が沈みかかる頃
からからと笑ってみると
オレンジ色のリボンのような陽光が
部屋の中の灯りを点してくれました

今は皆、出かけているので
もうずっと、こんなふうに過している―――
暮らしというものを感じるには
こんなふうでなければならないのですね

(こんなふうに過すことができるとは・・・)

          (2009.3.4)

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