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JA掛川市が主催!栗の樹の剪定講習会に参加しました

こんにちわぐり!

皆さんは栗の生産者さんが忙しくしている時期をご存じでしょうか? 秋の収穫の時期はもちろんのこと、実は、毎年1~2月も繁忙期になります。それは、樹の休眠期に剪定作業を行っているためです。

大きくて甘い栗を育てるために、強い芽を見極めて残す必要があります。また、病害虫を防ぐために、樹形もさっぱりと整えなければいけません。このように大切な剪定作業ですが、一定の技術や経験が必要な作業でもあります。

そこでJA掛川市では、実践で学べる剪定講習会を毎年開催してきました。これまでは年に1回の開催頻度でしたが、遠州・和栗プロジェクトが始まったことで、2024年から年に2回の開催に。

 1月と2月の2回に分け、それぞれ幼木と成木の剪定作業について学びました。この記事では、そんな剪定講習会の様子をお伝えします!

樹の生育を助けるだけではない、剪定作業が欠かせない理由

剪定とは、不要な枝を切り落として樹形を整える作業のことです。栗の樹の場合は、大きな実を付けるために、結実の期待できる充実した枝や芽を残し、周囲の枝をあえて切り落とします。

そのほか、剪定作業を行う目的は、おもに次の4つです。

  • 樹の生育を調整し、適正な生産量と品質を確保・維持する

  • 樹高を低く抑えることで、栽培管理をしやすくする

  • 樹形を整えることで、まんべんなく光を採りいれ光合成を活発にする

  • 樹の内部の風通しをよくすることで、病害虫の発生を防ぐ

新芽の状態を見ながら、強い芽を残すようにして、周囲の枝を間引きします。それにより、残した芽に栄養が行きやすくなり、大きな実の収穫が期待できるとともに、結実しやすい芽を残すことで生産量を確保できます。

また、樹の自然な生育に任せてしまうと、年によって収量が偏ってしまいます。「生り年(なりどし)」といって実が生りすぎた年は樹が疲れやすく、翌年の結実が減ってしまうこともあります。一定の収量を保つためにも、生育すべき芽を見極めて残すことが大事です。

生命力の強い栗の樹は、高いもので高さ15メートル、幹の直径は80センチメートルほどまで育ちます。しかし、樹が高くなればなるほど枝や実の管理が難しくなるので、剪定によってつねに3.5メートル程度の低樹高に抑えます。

不要な枝をはらうことで、病害虫の発生を抑制するとともに、生育にたくさんの光を必要とする栗の樹に日の光が当たりやすくします。

春が来て樹の成長が盛んになる前、冬のうちに剪定作業を終えなければいけません。もしこのタイミングを逃してしまうと、切るはずの枝や芽に養分が使われることになり、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。

※品種は、筑波、丹沢、石鎚を想定しています。

樹齢によって異なる、成木になるまでの仕立て方

1月の講習会は、樹齢7年以降の成木を育てる生産者向け。2月の講習会は、樹齢が3~6年の幼木を育てる生産者向けに開催されました。

あいにくの雨天につき、2月の剪定講習会はJA掛川市直売所「さすが市」の会議室で開催となりました。

講師は、JA静岡経済連の技術コンサルタント、鎌田憲昭(かまだ・よしあき)さん(写真左)です。栗の剪定作業の講師ができる技術者は、県内では貴重だそうです。剪定のポイントを交えながら、鎌田さんの講義の様子をお伝えします。

苗木の植え付け時のポイントは、高さ60~100センチメートルで枝を切り返す(強い新梢を発生させるために、長く伸びた枝の先をあえて切り落とす)こと。こうすることで、幹を強く太く育てることができます。その後、植え付けから3年目程度までは、主枝の生育を中心に行います。

思い切ってバッサリと

主幹(樹の真ん中の幹のこと)から枝が分岐しているので、植栽の翌年には剪定作業が必要になります。3本の主枝候補を残して、それ以外は間引きます。主枝の先端部は切り返して、枝のさらなる成長を促進します。こうすることで、幹を強く太く育てることができます。

樹齢が4~5年目になると、主枝のほかに亜主枝(主枝から分かれた側枝で、結果の期待できる芽を持つ枝)も将来の主枝候補として養生していきます。この樹齢になると、ようやく実もつきはじめます(ただし、出荷できるレベルまで品質・大きさは安定していません)。

樹齢6年目以降は、主幹の枝を1~1.5メートルの高さで切り返します「心抜き(しんぬき)」といいます)。主枝や亜主枝に重なる枝は剪定し、樹の中心部に空間を作るようにします。この樹齢になると、実の大きさや品質が安定してくるので、ようやく市場に出荷できるそうです。

続いて、実際の剪定作業を見てみましょう。

剪定のポイントは、樹形を意識して思い切って間引くこと

基本は、切り返しと間引きにより、樹形を整えていくそうです。剪定作業のポイントは、以下の通りです。

  1. 樹全体の形を最重要視する

  2. 枝を間引く

  3. 花芽(はなめ)を残す


1.樹全体の形を最重要視する

資料提供:静岡県経済農業協同組合連合会

主幹から45度の角度に伸ばすイメージで、3本程度の主枝だけを残すようにします。日の光が十分に各芽にあたるように、主枝から伸びる側枝同士が重ならないように意識して間引きを行います。

成木の場合は、側枝の生育を促すため、主幹付近に枝を残さないようにすることが大切です。

枝が1年で1メートルほど成長することを見越して、樹高がおおよそ3メートルに収まるように樹形を整えます。栗の樹の剪定作業では、この樹形を作ることが一番のポイントとなります。

2.枝を間引く

昨年に実をつけた結果、弱くなった枝を整理します。一方で本年の結実を見込んで残す枝は、発育枝または前年に実を付けた結果枝の中で強勢なものになります。主枝と競合する亜主枝も整理します。

残す枝の目安は、長さが50センチメートル以上あり、主要な部分の太さが6ミリメートル以上かつ先端部の太さが4ミリメートル以上あることです。

3.花芽を残す

本年に発生した芽の中でも、ややふくらみの強い芽が、花が咲いて結実の期待できる花芽になります。花芽を残して間引きをしたら、花芽の先端で枝を切り返し、枝の生育を促進して花芽に栄養がいくようにします。

枝が複数に分岐している箇所は混雑を招くので、つねに整理を心がけます。花芽の付いている発育枝の方を残し、分岐しているそのほかの側枝は間引きます。

かなりの枝葉を切り落とし、樹全体がスッキリしました。

剪定における注意点とアドバイス

栗の剪定には細かな注意点もあります。

  • 思い切って切ることが大事

  • 枝を調整してから数年は収量が一時的に少なくなる

  • 成木よりも若木の方が間引きによる樹への負担が大きいため、ていねいに剪定を行う

  • 品種により結果母枝(花芽には結実せず、翌年その花芽から新たに伸びた枝に実が生った枝)の取り扱いが異なることに留意する

  • 成木期以降に太枝を間引くときは、切り株を残さないように分岐部に沿って切り落とし、病気予防のため保護材を塗布する  など


剪定作業に慣れていないと、「この枝を切って大丈夫か」と慎重になってしまいますが、残した主枝があらわになるまで、思い切って間引くことが大事だそうです。

また、若木の剪定は成木よりも見極めが難しいため、剪定会で学んだり栗部会にアドバイスを求めたりするのがよさそうです。

主枝の見分け方や、雄花と雌花の残し方など、そのほかのポイントもまとめた以下の過去記事もご覧ください。

カットバックと呼ばれる技術も実演

(Before)管理の難しくなった老木

栗は樹齢が15年以上にもなると、枝が発育しすぎて低樹高を維持できなくなってきます。実の収量も落ちてくるため、枝をすべてはらって役目を終わらせることもあるそうです。

しかしながら、栗は生育が旺盛なので、間引いた付近から新たな枝が生え、少なからず実が採れます。そこで、骨格として残っている主幹を樹高2メートル以下まで大胆に切り返し、実の生育を助けることがあります。

この作業を「カットバック」といい、栗の樹が超低樹高となり作業を省力化できるほか、枝が若返るので大きな実の結実が期待できます。

(After)カットバックを施した老木

園地に老木がある場合は、カットバックを検討してもよいでしょう。老木の管理がしやすくなるとともに、成木ほど手間をかけずに一定量の収穫を期待できます。

「岐阜ではこうやっていたよ」、「過去にこうやったらうまくいった」など、生産者同士で情報交換する様子も見受けられました。このように仲間がいて、先輩方の知恵を頼れる環境というのも、安心して栗の生産に取り組める要因の1つではないかと感じました。

JA掛川市 剪定講習会のまとめ

栗の樹の剪定は、枝の生育が活発となる春の前に、毎年必ずしなければいけない重要な作業です。

栗の選定作業では、日の光が花芽に十分当たるよう樹形を重視し、栽培を管理しやすい樹高に整えていきます。樹形の基本を押さえながら、思い切って枝を間引くことが重要です。

とはいえ、剪定に慣れないうちは間引きを怖く感じるかもしれません。そんなときは、栗部会の先輩にアドバイスを求めたり、選定講習会に参加したりすることも有効です。

これまで年に1回だった剪定講習会も、2024年は2回の開催となり、今後も同様の開催頻度を見込んでいます。JA掛川市では、培ってきたネットワークを通じ、栗栽培を支援するそのほかの技術講習会の開催や、生産者同士で栽培支援を行う仕組みづくりも検討しているとのこと。今後の更新情報にもぜひ注目ください。

講習会で剪定した栗の樹が芽吹きました(4月下旬)

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