東京15区補選に思う。

東京15区の補選が取りざたされることが多い。

混戦が報道されているが、その震源地は小池都知事である。乙武洋匡氏への支持を明らかにしているが、その戦局は厳しいようである。

安倍晋三回顧録において、安倍元首相は小池氏を「ジョーカー」と評していた。昨年、「回顧録」を読んだ当時は面白い表現をするものだ、程度に思っていたが、今回の東京15区における補欠選挙において、この「ジョーカー」という表現の重みを感じることになりそうな気がする。

2023年5月19日に本稿で「アメリカ第五の権力 シンクタンク」(横江公美、文春新書)という本について少し考えた際、著者の横江氏が「人権政策」を「ジョーカー」と評していたことを思い出した。

以下に再掲する。(太字は筆者による。)

<引用>
米中関係は蜜月関係にあるといっても、常に不安要素は残る。アメリカが、中国に対する最後のカードとして握っているのが、「人権」という外交カードである。

(中略)

この外交カードは、エース級ではないものの、いつでも切れるジョーカーの役割をしだいに担うようになってきた。イラクの例しかり、対キューバ対策しかり…(以下略)

<引用終わり>

石井妙子氏の「女帝 」で描かれていた彼女の水俣病被害者やアスベスト問題被害者へのパフォーマンス的な取り組み方と読むと、今回も小池氏が論客が批判しづらい「人権」というジョーカーを切ったのではないかと警戒してしまう。今回の乙武氏擁立もパフォーマンスの一環なのではないか、と。

遥か昔だが、筆者は「五体不満足」を非常に感動して読んだことを未だに記憶しているので、叩かれていると心が痛い。そして、そうした心理が票になると見透かされて選挙活動を展開されているとしたら、今度は恐ろしくなる。

最近は有権者を置き去りにして、選挙が過激化、もっと言えばショービジネス化しているようにすら見える。ただ一方で、「女帝」のもたらしたインパクトを見るとまだ書籍による言論の力は生きているようにも思う。

そして、既存のメディアにはもっと報じて欲しい。争点の見えなさすぎる選挙は行くことすら億劫になってしまう。

以上。

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