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読書記録:「結局、人の悩みは人間関係」

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渋谷でボサノバのレコードがかかっているワインバー、Bar Bossaのマスターでかつ作家活動もされている林さんの一冊。文化系の大好きなお店で、渋谷でお友達とご飯を食べた帰りの「もうちょっとだけお話しよう」な場面にピッタリ。

先日も、食後に訪れて友人とカウンターでスパークリングワインを頂いたあと、入り口に置いてあった一冊を購入して拝読しました。実は、林さんがその前日の日記で体調が悪いという話をされていて、縁起でもないのだけど万が一林さんがふいに亡くなったりしたらワカメまじ後悔するわ、と思ってお店に買いに行ったという背景。(言い方!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)でも私の表現の杜撰さを棚に上げてあえて言うと「もう2度と会えないかも知れない」って終わりを意識しながら人と接するのはすごく大事だとおかげで思い出させてもらった。「尊敬してます」って言いながら本も買ってないとかおかしいもんね。毎日を(あるいはせめて毎月くらいの単位で)、嘘がないようにちゃんと筋を通して生きよう。

という、ちょっとした出来事があった上で改めて読んだのだけど、林さんのいつものコミュニケーションについての考察が詰まった素敵な本でした。日記を購読されている皆様は買いましょう、いつもの記事がぎゅっと濃くなってます。日記を購読されていない皆様も買いましょう、林さんワールドのエントリー本としても楽しめます。

特に私が気に入ったお話と感想を3つご紹介。

#1. 面倒くさい人と思われたくない

 例えば、「飲食店で『おすすめは何ですか?』て聞くのは、そんなにおすすめできない」っていう文章を書いたことがあるんですが、それを読んだお客様から「あ、そうだ。林さんに『おすすめは?』って聞いちゃいけないんだった」って言われたんです。それで、「ああ、もしかして、自分、面倒くさい人って思われているかも」って思い始めたんです。

親切や知恵のつもりで誰かに伝えても、実は相手からしたらただの面倒な人になっているかもよ、というお話。

これ、自分もそうなりかねない!って思うことはよくあって、例えば私のチームメンバーは帰り際に「お疲れ様ですー」って行って退出するのだけど、私は心の中で「いやいやそれ、『お先に失礼します』だよね」って毎回思ってることとか。でも、そんなこと言い出したら面倒くさいBBAだと言われそうなのでもう10年くらい黙っています。その他にも、社内で同僚に対して「弊社はこういう方針ですよね」って自社を弊社って言っているのも誤った謙譲語だし、「xyzさんに仰って頂いた」みたいな二重敬語もおかしいと思うし、三十人以上の会合の乾杯にちゃんとした挨拶がないのとかゆるすぎでしょ!!とかとか、私なりに20年の社会人経験で多少の痛みを覚えながら学習してしまったことから、他者に対してダメ出しの心が湧いてくることが色々あるわけです。でも、私も聞かれない限り黙っていることにしています。求められてないフィードバックは、ぼやを起こすだけだというのもあるし、別に誰も私のことを社会人のお手本みたいには思ってないから、きっと私に言われても素直に従いたいと思わないだろうし。いや、悲しいけど、ほんとに。

#2. 自分と自分の仕事を切り離す

 自分の作品、あるいは自分がやった仕事に対して、「全然ダメだな」って言われるとすごく傷つきますよね。自分の作品や仕事って、「自分と同じ存在」だと、僕たちは錯覚しやすいからなんです。
 でも、そこで傷ついていたら、自分の作品や仕事は、「より良い方向」には行きません。まるで誰かの作品や仕事のように「見られるようにすること」によって、自分の作品や仕事を、より良い方向に持っていけるわけです。

これはある漫画家の仕事場でのポリシーに絡めてのお話で、翻っていかに私たちも自分と自分の仕事を切り離すべきか、ということで100%同意なのだけど、実際この世界観を生きるのはすごく大変なのも私は毎日実感している。外資テック企業ではしばしばフィードバックカルチャーが自己成長に必須!フィードバック・イズ・ア・ギフト!(フィードバックは贈り物やで)と声高にいうけれど、フィードバックの作法も知らない人が罵詈雑言(と思われるコメント)を安全な場所から匿名で投げてかけてきた時に、自分の心にはその投石が当たらないようにして、いかにエレガントに受け取れるか。自分だけ目隠ししてるドッチボールみたいなスポーツのように感じてしまって、私はまだまだ道なかばだなあと毎日のように思う。

結局のところ、その誰かが発した言葉(例:「ワカメのプレゼンはわかりにくかった」)に付随するイメージを、勝手に脳内で膨らませてそのまま単細胞の人物評価として受け取る(例:Aさんはワカメのことを無能だと思っている)のではなく、あくまで「ある日ある時間にあるキャラクターがある事象について発した断片的な一言」として受け取るのが大事なのだろうなと思う。私はまだうまく出来てないけど、これが出来る人は昨日の自分と今日の自分を切り離せて、結果としてPDCAサイクルが回るから、どんどんパフォーマンスが良くなるのも知ってる。仕事には魂入れたり幽体離脱したりが自由にできるようになるといいに決まってる!

#3. 人間関係は流動的でいい と あとがき

林さんが職場の人との人間関係に娘さんに「人間関係は流動的でいいんだよ」と伝える場面があるのだけど、渋谷のバーという場を25年も維持し続ける中でそこを訪れる人(延べ15万人とのこと)がいかに流動的かを体感しきったマスターの言葉だから重みが全然違う。言われてみれば、自ら誰かに会いに行くことはほとんどなくて、あくまでもお店を訪れる人との徹底した受動的なやり取りをひたすら続けてるってすごい。これぞまさに定点観測で、一箇所でずっと人の流れを見つめているということ。

そして最後に、林さんが聞いてくれます。

あなたはこれまでの人生でどんな人、どんなものに出会いましたか?その出会いはあなたを幸せにしましたか?
僕はこの本が、あなたの人生をほんの少し、楽しい時間にしていたら嬉しいです。

あとがきより

人間関係は常に流れている前提こその出会いについての問い。ほんと、幸せにしてくれる出会いって、ありますよね。私はこの本を読んで「あ、私のうだうだした悩みを、伝えてもいないのにわかってくれる人がいる!」って思って嬉しくなって、あとがきのこの問いを読んで今まで出会った大事な人の顔がたくさん浮かびました。


今日も一日、お疲れ様でした。

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