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読書記録:「すべて忘れてしまうから」

先週の、「ボクたちはみんな大人になれなかった」に続いて、燃え殻さんのエッセイ集「すべて忘れてしまうから」を読む。SPA!に連載されていたエッセイをまとめたものらしく、数ページずつの小話がたくさん詰まっているので、ちょっとずつ読めてすごく面白い。そしてこの作品も阿部寛主演でドラマ化されていてDisney+で視聴できると気がついてしまった。Disney+は登録していないのとなんだか悔しいから見送る・・・多分。

冒頭の『セックスしなくても幸せだった夜』は声を出して笑いながら読んだ。他人の痔の話で笑えるから、私の中の小学生男子も健在だ。

『死にたいんじゃない、タヒチに行きたいんだ』と言うタイトルのエッセイでは、Twitterで「死にたいんですが、どうしたらいいですか」と送ってくる人に対してこんな返しをしている。

「ぼくも死にたいと日に一度は思います。『つらい』、これに至っては日に一度ではすみません。『死にたい』は感情の中ではメジャーです。でもあまりに無個性なので、『死にたい』を「タヒチに行きたい』に変えてみるとかどうでしょう。バカ言ってんじゃねえと思うかもしれませんが、ぼくはそうしてます。僕に相談した以上、受け入れてください。あなたは死にたいんじゃない。タヒチに行きたいんです。

死にたいんじゃない、タヒチに行きたいんだ

タヒチに行きたいって、あんな恋人同士以外侵入禁止みたいな地域に誰と行くのよ!と思ったらおかしくなってこれも笑ってしまった。今後はありがたく使わせていただきます。「タヒチに行きたい。」

ちなみに、私も週に一回くらいのペースで消えたいと思うことがある。仕事帰りに歩いている時とか、偉い人のビジョンの話に嘘を感じた時とか。そう言う時は「消えたい」とGoogleで検索して、大きく表示される自殺予防ダイヤルの番号を確認する。それでも今からここに相談しても絶対相手はわかってくれないし問題は解決しないと諦めて、とりあえずサウナに行って、冷えたビールを飲み、Tiktokを見すぎて気持ち悪くなってから眠るというのがワンセット。そして翌朝になると、仕事の予定があったりして一旦忘れてまた日常に戻ってしまう。そう、誰かと約束した予定があると私の体はちゃんと動くのだ。

ちなみに「消えたい」は「死にたい」とはちょっと違う。山手通りを歩いていて、大型トラックが前から走ってくると「こないだ消えたいって思ってたけど今このトラックの前に飛び出せる、ワカメちゃん?」って一人でよく検証するのだけど、毎回「んな危ないことするわけないでしょ!!死ぬわよ!!」と、むしろ歩道の内側を歩くようになる。私は別に死にたくはない。一方で、「消えたい」は、そもそも存在した事実からして消去する巻き戻しのイメージで、「死にたい」は「生」から「死」に早送りすることのように思う。

『悪いことが起きる気配もなかった』では、香川県は男木島の小さな図書館、男木島図書館での会田誠さんとのトークイベントやその後の宴の様子が描かれていて、手作りの小さな図書館とその島にすごく行ってみたくなった。最近は会社で人に会うと「夏休みのご予定は?」と聞かれることが多くて、そんなの挨拶代わりの社交辞令だし別に誰も本当には私の夏休みになんて興味がないのはわかっているんだけど、予定がないんですとは言いにくくて毎回しどろもどろになっている。「あぁむ、お盆休みはとってるんですが・・・子供が夏休みで・・・うぅむ、特に予定がなくて。」

ということで、私は別にタヒチには行きたくないけど、「瀬戸内海の男木島に行きたい。」


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