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読書記録:「ボクたちはみんな大人になれなかった」

2021年にはNetflixの映画にもなっているから、実はかなりメジャーな作品なんだろうし2017年に初版が発行されてるのになんで今まで気が付かなかったんだろう!っていうくらい面白かった。

Bar Bossaの林さんが日記で嫉妬の対象(もしくは、すごい人、という話だったか、あるいはその両方)として燃え殻さんを紹介されていて、しばらく気になっていたもの。

ところでこの本とは関係ないけど、ある人の「嫉妬の対象」を追っかけていくと、相手をよく知るきっかけになるかもしれない。誰しもそれぞれちょっとずつ違う物差しで生きている中で、「誰に嫉妬するか」を知るとその人にとって大事な尺度(場合によっては執着含めて)がわかる気がする。あなたは誰に、どのように嫉妬していますか?私はすぐに浮かぶ名前があまりなかったのだけど、人を羨ましがらないほど無欲な存在なわけがないから無意識のうちにないことにしてるか、望むことさえ躊躇しているだけだと思うので、ちゃんと考えてそれはまたどこかで書いてみようと思う。

さて。

今日は外は30度を超える暑さなのに、東京の外れにあるおばあちゃん家の庭の木陰はいつも涼しいので読書に最適でありがたい。

というのは嘘で、どんなに暑い日でも涼しい風が吹き抜ける目黒区の駒場公園へ出掛けてきた。ここは加賀百万石は前田家の東京本邸だったところで、見ての通り美しいお屋敷が目に入るし、タダで入れるし、トイレも綺麗だし、聞こえてくるのは鳥や虫の鳴き声がメインだしで都心にありながらすごく貴重な場所。さすがに30度を超えると訪問者は少ないみたいで、私はこれでもかっていうくらい全身にくまなく虫除けをスプレーして、魔法瓶に氷たっぷりで準備した麦茶と共に午前中から3時間ほどゆっくり本を読みながらベンチで過ごす。

で、前置きがすごく長くなってしまったのだけど、テーマはタイトルにもあるとおり「大人になりきれないこと」なのだと思う、多分。

主人公のボク43歳が、大好きだった昔の恋人にFacebookでうっかり友達申請をしてしまうところから始まり、その一日の終わりまでが描かれる。途中で20年、30年前の彼女と出会った95年頃の神泉のラブホテルや原宿のラフォーレの様子、小学生でいじめに遭っていた頃に迷い込んだストリップ小屋などのシーンがすごくリアルに描かれていて時間軸を何度もジャンプしながらあちこち連れて行ってもらう構造。

私は著者とほぼ同年代で、まだスマホがなかった時代の気分みたいなものや、PHSが普及したころの絶妙な不便さを「ああ、そういう感じだった」と共感して嬉しくなって引き込まれて一気に読んだ。

そしてこの本のボクは村上春樹のボクと同じ立ち位置だな、と感じるのはなんでだろう?と考えたのだけど、メインストリームに溶け込まない(あるいは溶け込めない)はみ出し意識と、それでいてこの人生において自分はお客様ではなくて当事者であるという覚悟が共通しているのかなと思った。

あんまり上手く整理できていないけどこんなイメージ↓

善悪は知らないけど、私が普段意識を置いている場所と燃え殻さんのそれはすごく近い気がして、他人とは思えないくらい共感してしまった。でも、現実に照らしたらもちろん他人(作者と読者)だし、私と同じように感じる人は国内だけでも100万人はいるだろうから要するに共感して他の作品も見たくなったということ!


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