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春の発見

その子 二十歳 櫛にながるる 黒髪の おごりの花の うつくしきかな
みだれ髪
与謝野 晶子


歌集みだれ髪の名前の元になった短歌。

自分の中の官能を堂々と歌ったナルシズムが心地いい。

明治の大きな特徴は思春期の発見じゃないかと思っている。それまでは16歳ぐらいになると結婚と子育てが始まってしまっていた。高等教育がはじまって青春を楽しむようになったと思う。

夏目漱石なんか読んでると、娘義太夫に通ったりすることがはやったみたいだ。今で言うアイドルですね。遊郭に行くようなことはいやがられた。
勉強は家族を養わない子供のすることで、親もだけど、本人も子供でありたかったのだろう。
 
女性もそれにふさわしく、西洋では、教養は対等でなければいけないらしいので女学校に通った。実は、アメリカなんかでも中退者が多く建前ですが。


男性と対等だ、そして、選べるのだというのがあっての、女学生文化があっての、与謝野晶子のみだれ髪だと思う。
 
私がこの歌にぐっと来たのはそういった解放感だ。人生を楽しんでいい。

家族という大きな単位を守るためのシステムからのしばしの逸脱。

与謝野晶子は年上の夫を立て、12人もの子供を産み育て、文学上の功績をたてた、スーパーウーマン。彼女はいい。世の秩序を見返すため、信念をもって生きたのだ。

しかし、豊かになった今、それが女性たちをより追い込む形になってる。
かくも世の中はせちがらい。

(画像はみだれ髪の装丁の藤島武二 蝶)


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