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たまごやき

 むかしはたまごやさんで卵を買っていた。籾殻のはいった台に置かれた卵をいっこいっこライトに当てながら買うのって楽しかった。そんな命をいただくおごそかなたべものだった。

 卵焼きはなれないとむずかしい。それに、むきあったのは結婚後だ。なぜなら、夫の実家ではお正月のおせちに京風の出汁巻きたまごを必ず入れるからだ。どうやら、それを売って、ご先祖様が生計を立てていたありがたいたべものらしい。だから、真剣にたまごやきをつくるようになった。それまで、玉子焼き機の出来不出来や、出汁のあじ、配分についてかんがえたことがなかった。美味しく作ることに真剣になれば、考えることになるものです。きちんと卵液の三分の一のおだしをはかる。そしてしっかりまぜる。油をうっすらとひく。じゅうと一滴おとして、さいばしにくっつくぐらいの熱さにする。あとは経験だ。何本やいたかな。夫はこれさえ作り、かまぼこをそえればりっぱなハレの料理あつかいしてくれるのでありがたい。そのかわり、お雑煮はうちの実家の田舎風の白味噌雑煮をつくっています。にんじんごぼうさといもだいこん、お野菜の出汁でたべる。

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