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障害者雇用 会社の優しさに甘える

今の勤務先は、優しさが溢れている。

てっきり私が障害者だからだとか、てんかん患者だからだとか、そういう理由かと思ったら違っていた。

この会社はかつて、痛い思いをしたのだそうだ。

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以前の記事にも書いたように、部長はキャラが濃い。


この部長は何年か前に、人事部に配属されていたのだそう。

そのときに退職者がどんどん増えていくのを目の当たりにして、なんで辞めていくのだろうと彼は考えた。

退職者に理由を聞いていくと、そこには2点の特徴があったのだとか。

1点目は、言われた仕事をやるだけで、仕事そのものにやりがいを感じなくなったこと、

2点目は、残業漬けで育休も取りづらくて、家庭や自分の時間を犠牲にするのはもうこりごり、ということだったのだそう。

そこで部長は意を決した。

1点目は、仕事の上で命令するのではなく自分なりにアイディアをどんどん出してもらうようにうながすこと、

2点目は、ワークライフバランスを重視すること、だった。

この文化はその後脈々と受け継がれていて、部長→課長→課長代理、そして社員たち自身の理念・行動にも反映されているのだとか。

どう反映されているかというと、たとえば係長は転職して3週間ぽっちの私に、この会社で見たことをふまえて何を改善したらよいかを聞いてこられた。

たとえば在宅勤務をしたい日に遠慮なく取らせてくださった。(他のメンバーが皆、出張やフレックス勤務で不在のとき、課長代理は、自分がみんなの内線も取るからいいよ、在宅勤務取ってね、と言ってくださった。)

お言葉に甘えて、堂々と在宅勤務にした。


他にもたとえば、飲み会の一次会が終了して外に出たら、みなさんが私に無理はしないでくださいね、と言葉をかけてくださった。

私はその言葉に甘えて、堂々と笑顔で「ありがとうございました〜」とその場を離れることができた。

余談だが、数日後には課長代理がこっそりと、「飲み会の終了時間、遅すぎなかった?大丈夫だった?」と聞いてくださった。

私は満面の笑みで「はい!ありがとうございます」と返した。


こんなふうに、とてつもなく甘やかされているのである。

これはなにも私が障害者だからとか、てんかん患者だからとかいうことではなく、会社自体の考えが大きく変わったからである。

障害者をはじめ、女性だけでなく育児に励みたい男性社員も早く帰るし、定時きっかりに上がるとむしろ歓迎される。

朝礼時のホワイトボードには、残業時間の累積が書かれていて、累積時間の長い人は上司から時々言及される。

「定時で帰ろうね」と。

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「残業がすごかった時代は、なんだかんだいって効率悪い仕事の回し方してたなって思う」と課長代理は笑っていた。

「だから、気を遣わなくていいからね」と。

定時でさっさと帰るのも在宅勤務を取るのも、最初はなんだか後ろめたかったのだが、人事部で退職者を生々しく見てきた部長がワークライフバランスを重視するのだから、下々の者は分厚いバックアップのもと、この理念に堂々と従えばいいのだろう。

とても気が楽になって、この話を聞いた日からすがすがしい気持ちで「おつかれさまでした〜」と笑顔で帰れるようになった。

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障害者が働くうえで、障害者への配慮があるかどうかだけではなく、そもそもすべての社員への配慮が充分かどうかが重要だと思う。

健常者だろうと障害者だろうと、社員を大切にする会社は、あたたかい。

あたたかいから、がんばって会社に貢献しよう、という熱い思いが社員に芽生える。

社員ががんばっていて、さらにはワークライフバランスも整っていると、社員の目は輝いてくる。

必然的に効率が上がり、会社にも有意義に還元される。

この循環の仕組みは、いち社員にとっても会社にとっても、良好な仕組みなのだろう。


過去の失敗からしっかりと学び、改善する会社。

こういう会社なら、障害者も長く働き続けられる気がする。

こういう会社が日本中にあふれてほしい。

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