覚書:日常漫画とアンビエント

それでも町は廻っているという名作漫画がある。
アニメ版のOPがシュガーベイブのDown Townだったということで名前だけは知っていたのだが色々あって読む機会がなく、中身を知らないでいた。

そんな中今週末無料公開するよ〜と云う情報を発見。無料期間中に全部読んでしまった。

お話はというと、探偵小説好きな女子高生の主人公が日常の中のちょっと不思議な小事件を探っていくことを中心に青春が描かれる、いわゆる日常系漫画である。

しかし面白い点が、そしてこれがこの漫画が名作と呼ばれる所以だろうが、日常漫画でありつつも様々なジャンルを横断する点である。例えばある話ではパラレルワールドや宇宙人を用いたSF的展開を見せたり、またある話では正しいホラー漫画のように振る舞ったりする。もちろん探偵物好きの女子高生が主人公なので、探偵物語のような話もいくつかある。カードバトルも青春ラブコメも不条理ギャグもファンタジーも、そして王道の日常系の話もある。このように同じ登場人物と舞台を用意しながらも、万華鏡の如く多彩にその姿を変えていくところに本作品の魅力があるといえよう。まさにひとりの高校生の視点から、廻る町を描いた漫画である。

そしてふと思ったのが、日常系アンビエント説も適用できそうだ、ということである。

日常系アンビエント説とは、僕が勝手に編み出した仮説である。すなわち、アンビエント音楽の主な性質が日常系漫画にも見られるのじゃないか、ということである。昔ゆるゆりのアニメを見ていた時、ぼーっと見ても良いし集中して見ても良いし、なんだかアンビエントみたいだな、と思ったことに端を発する。以降理論付けは全く行われていない。

さてアンビエントの面白い点はアンビエントとしての基本性質があれば成立する点、乱暴に言えば「静かなものならなんでもあり」な点だと思っている。クラシック風なものもあれば電子音楽もあり、自然音も大いに結構だろう。ギターでアルペジオを爪弾いても良いし、その上で歌ったりラップしても「歌ものアンビエント」「アンビエントヒップホップ」としてアンビエント性は保持されうる。すなわちジャンル内の自由度が高いのである。

アンビエント的性質を仮に日常漫画に求められるとするならば、それを最大限にまで活用したものこそがそれ町なのではないかと思う。日常の描写を中心としていると云う前提があるならば日常系漫画は何をやっても良いと知らしめた、ちょうどイーノのオブスキュアレーベルのような立ち位置の漫画なのかもしれない。



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