見出し画像

【アニメ】プリンセス・プリンシパル

10月10日いっぱいまでニコニコ動画のチャンネルで全話無料配信をやっていて、にわかに話題になっていたアニメ『プリンセス・プリンシパル』全12話を観ました。1日で!
別に無料期間でなくともアニメは好きなときにお金払って観るし、名作と謳われているなら尚更と思っていましたが、たまたま連休明けで仕事の波が落ち着いていたので、観ちゃうかみたいな。

「スパイ」×「スチームパンク」×「女子高校生」という触れ込みの本作、ニンジャヘッズタイムラインでの評価が異様に高く、まず間違いないとの確信はありつつも、通して観てみた。確かにおもしろかった。パンク性を持ったスチームパンクかどうかはさておき、いわゆる"スチームパンク的"な小道具とガジェット、なによりパラレル世界の19世紀ロンドンを描いた背景美術のこだわりが美しく、見どころがたくさんありました。

⚙ ⚙ ⚙

1話がヤバイ

まず1話「case13 Wired Liar」がとんでもなくいい。本作はニンジャスレイヤーと同じような時系列シャッフルのオムニバス作品で、その手掛かりが各話タイトルのcase~の連番で示されている。つまり物語の途中から始まるわけですが、ここでは主人公アンジェらが「スパイ」であり、スパイは「うそつき」であることをキーワードに、コンパクトにお話が展開する。アバンで王国と共和国、そしてロンドンに壁ができるに至った歴史的なあらましが紹介される、まずここでわくわくしてしまう。

反重力装置というギミックを使った派手な空中アクションや、その装置のエネルギー源である物質「ケイバーライト」、そしていかにも不穏な「ケイバーライト障害」などのワードが散りばめられた世界観に感心しつつ、本心を隠したアンジェがクライマックスで「いいえ、いいえ」と言いながら迷いなく銃を撃つシーンで一気に引き込まれた。そうかーこういう作品か!みたいな。

真実と嘘が入り乱れ、裏切っては裏切られ、なおかつ平然と命のやり取りもある。そういう、ある種人間のグロテスクな"負"の要素を、女の子キャラクターの「カワイイ」とスチームパンク的ビジュアルの「カッコイイ」とで正面から描いてやるぞ、という堂々たる宣言のようにもとれる1話なのでした。この1話の評価の高さは、全12話を観た今でも私のなかでは変わっていなくて、むしろこの1話を超えてくる話がもっと見たかったというのも、正直なところ少しあります。

いやらしくない「無慈悲さ」

そのほかに特に印象的だった話といえば、何といっても6話こと「case18 Rouge Morgue」。これは話型としては時代劇でよくある古典の人情噺なんだけど、明るい笑顔と歌声によって強烈にダークサイドを浮き出させた変則エンディングの演出がぞくぞくするほど良かった。そしてこのカワイイ絵で、検死所というハードな題材にずかずか踏み込んでいく意気もいい。

そのあたりは、わりと多くの人々の血が流れる5話「case7 Bullet & Blade's Ballad」(列車の屋根上でアイサツし暴走列車を止めるためにカラテするので実質サンスイ+シンカンセンだ)、アンジェの養成所時代の同期のスパイの末路を描いた10話「case22 Comfort Comrade」でも徹底していて、なんというか、カワイイ女の子がビシバシ殺して無慈悲に振る舞っていても露悪的でないというか、悪趣味ないやらしさを感じないのです。私はこのへん気になるほうで、ただ殺しを嬉々として見せるような趣味の悪いのが大変にニガテなので、このバランス感覚というか舵取りには好感が持てました(ニュアンスの違いが上手く表現できないけれど)。

スパイというテーマはスタイリッシュなだけじゃなくて、本来"重い"のです。そこを避けると、ややもするとお嬢様のスパイごっこに終始してしまいそうなところを、本作では逃げずにやっている…といったら褒めすぎかな。

時系列上の第1話にあたる「case1 Dancy Conspiracy」は、入り組んだ話を無理なく1話分の尺に収めていてスゴイ。全体として脚本上手いですよね。本来くどくど説明しないと伝わらないようなバックグラウンドを、短いセリフに散りばめることで解決している。しかも初見であらかた分かるようにできている。これ、基本的にどの話でも共通しているのです。お話の密度が濃い。

8話「case20 Ripper Dipper」は、アンジェとプリンセスのそもそもの成り行きが明かされる重要な回。ここまで、どちらかというと影に隠れていたプリンセスというキャラが一気に掘り下げられて、新鮮な驚きがあった。そういう感じのシチュエーションなのかなとは薄々思っていたけれど、時間の経過とともに彼女が抱えていたものの大きさを改めて示されると重いなあ…みたいな。

2期はあります

ありますというか、あってくれないと困る!「case23 Humble Double」は、シリーズもののアニメのプレ最終話としては最高のヒキで、いいねいいねという感じだったのです。それを受けた最終話も決して悪くはなくて、本作"らしい"ところに落ち着いたなあという納得感はあったのですが、その一方でやはり未解決の要素が多すぎて。これはシーズン2前提の構成なのでしょうね。

個人的な好みとしては、もっとスパーンとカッコよく終わって伝説になってほしかった。ニンジャスレイヤーならラオモトを殺したところで第一部完になる、ああいうカタルシスがほしかった。それでいて、どうなったら続くのってとこからもう一度始まるのってもっとカッコいいじゃないですか。

スパイのその後の人生って、case22で暗示されたようにその多くが幸せなものではなさそうだし、プリンセスにしたって女王になったところで最終話で彼女自身が語ったような不穏な未来が待っているかもしれない。「壁」は依然残っているし、王国側の不満分子によるクーデターの行く末も、共和国側の政府と軍部の諍いもどうなるか。それでも、もし彼女たち5人の話が続くのであれば、ぜひ作者が描こうとしている結末まで見届けたい。

キャラクターそれぞれに魅力があり、かつ、まだまだ掘り下げ甲斐がある。このままにしておくのはもったいない…2期待ってます。

欲を言えば、もっと仲間内でもウソが飛び交って疑心暗鬼になる感じや、後半にもっと大きなプロットツイストがあってもよかったけど、やりすぎるとドロドロになりそうだし、そこまでダークなものが見たいわけじゃない。一話完結のエンターテイメントとして気軽に楽しめるあたりで、バランスよくまとまった作品だなあと思いました。

というわけで、大変おもしろかったです。観てよかった!

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』公式サイト
http://www.pripri-anime.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?