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絵が下手でも自分で線を引いてみたくなる『だれでもデザイン』

去年(2022年)の1月、プロダクトデザインの山中俊治さんと、グラフィックデザインの寄藤文平さんというちょっと異色のとりあわせのトークイベントがありまして。オンラインで聴きました。

本はその前に買ってあったんですけど、トークの日はまだ読んでいませんでした。トークは軽妙で深く、ライブドローイングも見事で、心に水をやるようないい時間でした。

で、後日、あらためて本を開いて読み始めると、この本、思っていたより読者参加型の本だったんです。わたしは文字ならいくら書いても苦にならないけど(完成度は別として)、絵とかイラストとか図解となるとすごく気が重くなる。自分の思ったものとは全然違うものが現出しちゃうから。

でもそのわたしでも、本書につられて、フリーハンドで線を引いたり丸を描いたりしたくなり……本に導かれるままに見本の動画を見ながら、フリーハンドで線や丸を楽しく描いていました。

直線は縦のほうが難しい。円は直径が小さくなるほど難しい。楕円は一番難しい

線や円の中では、楕円が断トツに難しい。ともすると「長円」になっちゃう。でも、正円からだんだん楕円っぽいのが描けるとちょっと楽しい。これで「コップ」の絵は怖くない(わたしでも描けた)。

手も目もすごく苦手だったはずだけど…これはギリギリなんとかなってない?
苦手な人にとっては、この「なんとかできてるかも」感を手に入れることがすごく大事な気がする

山中さんは楕円を描く練習をふだんからしょっちゅうしているのだそう。スポーツにおける基礎練習みたいなものらしい。

(アートとして、ではなく)正円や楕円や直線を描くのは、センスより鍛錬なんだろうな~。絵を描くのが苦手でも(←わたし)、線や丸などのパーツが描ければできることは増える気がしました。

ちょうど今日、山中さんの「素振り」にtwitterで出会いました。

美しい……こんなにつぶれた楕円を描くのはより難しい。LAMYだとよけいに難しい気もするけど、用紙との相性次第でもあるのかな。少しひっかかるぐらいのほうがいいのかも。文字は明らかに、つるつるじゃない紙のほうが書きやすいし。

ひさしぶりに書棚から本を取り出してみたら、自分で貼った付箋が5つありました。そのうちの2つはよく覚えています。ちょうど、思い入れのあった企画がぽしゃったときだったから。

 アイデアを生み出す人は、自分のアイデアに長くかかわるほど、深く思い入れてしまいます。だから、それが評価されると自分が褒められたかのように嬉しくなるし、評価されないと自分が否定されたように感じてしまう。これは仕方のないことです。 人に感覚的なものを提案することは、自分の感覚の提案でもある。だから結果は、とても残酷です。

 僕もデザイナーとして、様々なアイデアを生み出してきました。 (中略)ウケなかったアイデアのほうがはるかに多くて、死屍累々です。どれも最高にヒットすると思って提案しているから、いちいちショックを受ける。もうそれは仕方がない。サッカーのシュートだって大半は外しますよね。 ひと試合に10本以上シュートして、入るのは1、2本なんだから。だから、外しても腐っちゃだめです。高い評価を受けたからと言って、いつもそれがやれるわけではない。共感されなかった人も、それにいつまでも引きずられてはいけない。
 自分のアイデアが人前に晒されること。その評価を、まずはきちんと受け入れましょう。

『だれでもデザイン』

ここを読んで、ちょっと泣いちゃいましたね。フリーランスだと、だれも「否定されたって腐っちゃダメだよ」なんて声かけてくれないですから、ひっさびさに上司や先輩に声をかけてもらったような気がしました。

この本は中高生向けに語ったお話をまとめたものだけれど、ものをつくったり、アイデアを出したり、図を描いて仕事仲間に渡したりする大人にも、よく効きます。

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