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Essay|予定調和はいらない

2016年、ニューヨークのイーストヴィレッジにあったレコードショップ「OTHER MUSIC」が多くの音楽ファンから惜しまれながら閉店した。本作を撮った監督のロブ・ハッチ=ミラーとプロマ・バスーは、その知らせを知ってすぐにカメラを回し映画にすることを決意したらしい。二人は公私共にパートナーであり、このOTHER MUSICが縁で出会った過去があった。

OTHER MUSICを見ていると「場」の力を感じずにはいられない。そこには音楽があり、音楽が好きなスタッフがいて、OTHER MUSICに訪れた客はスタッフと共に音楽を探す。

サブスクリプションの到来で音楽との出会い方は変わった。私も使っている一人だし、もちろん悪いことばかりではない。でも便利さと共に無くしてしまったものが確実にある。インターネットの外にある音楽との出会い方は格別だ。お気に入りのカフェで、フェスで、レコードショップで、あの予想もしていない音楽と出会って心が跳ねる瞬間は何事にも変え難い。

映画「OTHER MUSIC」を見ていると、音楽に人が集まり、人が集まるところに、カルチャーが生まれる。生まれた場所も、バックボーンも異なる人間が集まって同じ音楽について語り合う。有名だとか流行だとか、そんなことは関係ない。ただ自分がいい!と思ったものを「これよくない?」と子供みたいになって、遊ぶのだ。想像もしていなかったものに出会った時、人生は思いもよらない方へぐっと広がっていく。

予測できない未来こそが、人生を彩る。世界は想像以上に、驚きに満ち溢れている。

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