人は恋する義務がある

今日は簡潔に話をしよう。職場で尊敬する人から、「言いたいことは素晴らしいと思うけど、いかんせん君は話が長い。」と注意されたので。

わたしが所属する劇団「南極ゴジラ」がインスタライブで毎週配信している「桃源Q」。上記URLではIGTVでアーカイブ保存されているので、ぜひ見てほしい。各話20分程度の短編作品で、一応#1~カテゴライズされているが、どこから見ても大丈夫。でもまあ全部見てしまうと1本の映画を見られるような長さになってしまうのは事実なので、このnoteを見て、もし気になるお話があれば、1話だけでもぜひ見てください。なお、わたしは劇団員のひとりなので、あくまで演出・役者・脚本についてのみ、おすすめできる人に紹介していきます。ネタバレちょびっとありますが、見ても楽しめる仕様です。

【もっと】詳しい内容はこちらから↓
https://natalie.mu/stage/news/426081


#1「ウーピー、ミンミン、カンフーパンダ」


キーワード:不思議、中華、かわいい、ゲーム
作    :こんにち博士
すべての物語はここから始まる。順番はバラバラで問題ないのは変わらないが、やっぱりまずはこのお話から見るのがベストかも。ただ、演劇性が強いので、小劇場や舞台を見たことがない人は、まずは#2を見てみてね。
ファンタジー世界の、薬屋の娘と剣士のお話。「会ったことがあるような気がする」?「ゲームオーバー」?「パラレルワールド」?重要ワードがぽんぽんぽん。役者2人のキャラクターが可愛いし、「何かが始まる!」というワクワク感は圧倒的。

#2「染まれ 青春よりも青く汚い 空の果てまで」


キーワード:青春、お笑い、友情、夢
作    :あゆたろ
ミニドラマに近い。題名忘れちゃったけど、少し昔、15分くらいの短編ドラマが2話ずつ放送されていた。一番気軽に見やすい。
売れない女芸人のお話。役者のデコボコ感がたまらなく可愛い。スタイリッシュな見た目だけどお茶目でキュートなQと、ガーリーで可愛い雰囲気なのに、熱くて男勝りの赤星。絶対売れるやろこんなん。ためしに今年のM-1応募してくれ。

#3「かえるびっくりいつの間にお湯?」

キーワード:銭湯、秘密、恋、別れ
作    :太田垣百合子
映画をむぎゅっと20分にした感じ。はじめましてから最後までをこの短さで表すのは、脚本も演出も演技もすごい。
銭湯の番頭と、お客さんの恋のお話。少し前に話題になった「メランコリック」でも思ったけど、番頭とお客様の恋ってなんかもうバクバクやろ、心臓・・。下心なくすほうが難しいやん。いそうでいないキャラクターの役者二人も絶妙。

#4「ビー玉になった雨粒いつまでも溶けない」


キーワード:雨、記憶、ちょっとこわい、パラレルワールド
作    :太田垣百合子
こちらも短編映画を見ているような感覚。起承転結がすっごい。同じシーンが何度か繰り返すが、それが終わった後のビリビリ感よ。「観て!」というよりも、「体験して!」に尽きる。
パラレルワールドに迷い込んだ?夫婦のお話。役者の雰囲気がお互い違うから、アンバランスに見えるんだけど、それが最後・・・マッチするのよ。夫婦なんだよ。コメディチックなのに、なんでこう、暗闇が見えるのだろう。

#5「君の百点満点くれよ」

キーワード:未来、ロボット、愛、時空
作    :こんにち博士
映像、音楽、空間、素晴らしすぎ。この回にいたっては、男の子の役が3人出ており、全員同じ人物を演じている。それがまた、女の子の頭のなかのふわふわした記憶と重なって、めちゃくちゃ良い。顔も声も覚えていないけど、「そこにいた」記憶はふわふわあるの。
ロボットの女の子と古いロボットの、時空をこえた愛の話。この話は恋よりも愛を全面に押し出したい。Qの「クラスのマドンナ」「誰にでも優しい陽キャ」感は異常。そりゃイケてない系男子も好きになる。

#6「せーので発射するタイムカプセル」

キーワード:宇宙、ロケット、恋、憧れ
作    :あゆたろ
このnoteが出るころは、おそらくまだ未配信。唯一のリモート撮影を予定。男同士の友情?恋?憧れ?ブロマンスを演じる2人がたまらなく好青年なので、爽やかでそして痛くなる。こんなお話、嫌いな女子いないでしょ。
宇宙を目指すふたりのお話。前回までのお話のキーワードがたくさん出てくるので、きっと重要回。リモートならではの演出が楽しみ。

お話のもっと深い考察は、ぜひこのアカウントから↓
https://twitter.com/QkousatuQ

おすすめの順番

【演劇・小劇場が好きな人へ】
#1から順番でぜひ見てください 。そして最終章の#7にいくまでに、もう一度#1を見てください。「これってもしかして・・」ってなにかに気づくかも。


【演劇はあまり見たことがないけど、映画や連ドラが好きな人へ】
#4→#2→#3→#1→#5→#6かなあ。特に#4が起承転結はっきりとしていてわかりやすいので、まずはそこからチェックしてください。「面白いかも!」って興味を持ってくれたら、ぜひ#2と#3で楽しんでもらって、#1で「つまり・・・?」と困惑してください。そうしたら#5と#6でなにかに気づくと思います。

【演劇も映画もそんなに興味がない人へ】
#2→#3→#4→#1→#6→#5でご覧ください。#2と#3が映像として気軽に見られるので、別々のお話としてでも楽しめます。#4で桃源Qの雰囲気を少しつかんでもらって、#1を見た後はすぐに#6を見てください。#1と#6には微妙につながりがあります。そして最後に#5を見たら、「そういうことかぁ。」ってなります。

今回の脚本家

今回の脚本家は3人いらっしゃって、それぞれ色が違います。

こんにち博士(#1、#5)
南極ゴジラの大脚本家。浮世離れしたロマンチックな言葉遣いと、いそうでいない愛しいキャラクターが特徴。そしてそこに加わる「現実」が絶妙。演劇にすると「映像っぽい」って言われるし、映像にすると「演劇っぽい」ってなる。この新たなジャンルを作ってくれと祈っている。
#1の薬屋の娘 (絶対森見登美彦の作品のヒロイン)、剣士(熱くて一途で頑固でかわいい)なんてキャラクター、この世にいないでしょ。
#5の少年 (がり勉で一途で重くて意気地なし)、少女(明るくて人気者で優しくて短歌も詠む)もこの世にいません!でもそこに重くのしかかってくる、「飛行機事故(現実)」とかが絶妙。これ本人に言ったら怒られちゃうかもだけど、細田守みを感じる作風です。「絶対おらんで、そんな男の子!」とか、「ありえへんやろ、そんな世界!」とか思っていたのに、なんで現実突きつけちゃうんですか・・。夢見心地のままでいさせてよと願うのに、ことごとく裏切られる2話。

あゆたろ(#2、#6)
いい意味で痛い2話。現実でも、映像でも、舞台でも、「大好き」とか、「生き抜いてやるからな」とか、「ありがとう。」とか、なかなか面と向かって言えなくない?特に映像や舞台って、「あえて言わないこと」が主流だったりする。説明しすぎないのが様式美、みたいな。でもそんな様式美、ぶっ飛ばして清々しいほど心の内を叫んでくれる。だから胸に突き刺さって都合の良い方に逃げられない。目を逸らしたいのに、許してくれない。
この2話はそれぞれ女同士、男同士。すでに仲がそれなりにいい時点からスタートしている。場面も時間も関係性も大きく変わらない。会話を繰り返し、ラストに主人公の心の内が溢れかえってしまう。そこにいくまでの心の変化が繊細で、溢れかえったら誰にも止められない大胆さ。このギャップがたまらん。若い。観劇後、スカッとする2話。

太田垣百合子(#3、#4)
起承転結がはっきりとしている2話。場面も時間も大きく動く。純粋にこれを20分で収めているのは、めちゃくちゃすごいと思う。
#3は 、「出会い」、「仲良くなり」、「銭湯に来なくなって」、「お別れ」。#4は、「異変」、「続くパラレルワールド」、「発端の気づき」、「絶望」。単純にそれぞれ5分以内に終わらせているんだよ。スゴ。あゆたろさんの作風が「見ろ!逃げるな!」なら、太田垣さんの作風は「どうぞお好きにしてください。」みたいな感じ(ちなみにこんにち博士は「楽しいでしょ?まあここから絶望に突き落としますが・・。」って感じ笑)。ガチガチに設定とかお話とか決めてくれているのに、最後は余白がたんまりある。#3も#4も、それぞれの登場人物の人生は続くはずなのに、その人生のプランが全く見えない。モヤモヤは残るのに、その余白がたまらなく愛しいのです。


結局長くなっちゃった。。
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