見出し画像

Ali Tekbaş初レッスン / イスタンブール・クルド研究所訪問 / Dînoレッスンメモ

遂にAliのレッスンが始まる!と昨日からワクワクが加速していて、今朝目覚めて、「どうせならクルド研究所も今日訪問しよう!」というモチベーションがオマケで発動した。イスタンブールにいるとどうしてもクルド語で会話する機会が減るので、飢えているということもある。

ワッカス先生に紹介してもらったEyyup先生に「今日伺っていいですか?」と連絡すると「どうぞどうぞ」と返答をもらった。

イスタンブール・クルド研究所では主にクルド語の研究がなされていて、辞書を編纂したりクルド語の教育を行っていたりする。

到着すると、想像していたよりもずっと若いEyyup先生が迎えてくれた。さすがに研究所の方ということもあり、私とって最高にわかりやすい、標準的なクルド語で話してくれる。

チャイをいただきながら、私のトルコ滞在の話、彼らの仕事の話、互いの文化の話などをする。毎週土曜日にクルド語のレッスンを行っているとのことなので、参加してみようと思う。

お土産に、と本を一冊いただいた。とてもありがたいことなのだが、行く先々で本をいただくので、既にかなりの数と重量になっている。本を持ち帰るために何かしらのバッグを買い足す必要があるかも知れない。

さて、午後3時からはスタジオでAliのレッスン。午後2時55分にスタジオに到着すると、Aliから「今日はレッスンだね!」とメッセージ。
「そうですね、もう到着してます!」
「OK!3時45分に到着するよ!」
出た!そうだった!クルディッシュタイムだった!
「OKです!待ってます!」
Aliが来るまでの間、ピアノを弾いたり歌ったりしていた。

Aliが到着すると、「先生、遅れてすみません、入っていいですか?」とボケてくる。
互いの近況について少し話したあと、「ちょっと座ってレッスンをどうやって進めるか話そう!」ということで、改めて、学びたいことを直接伝える。

・クルド音楽の歌い方を身につけたい←西洋音楽とは異なる
・特にColemêrg、Botanの民謡について知りたい。多数ある歌の形式についてのより詳細な知識を得たい。

これらを踏まえ、レッスンは週2回、2時間ずつ行う。曲を1曲ずつ、背景知識も含めて仕上げていく。ということに決定する。

最初に取り組む曲は「Dîno」。
Aliがまずはこの曲の形式のこと、この曲が歌われる地域のこと、部族のこと、一つ一つ丁寧に解説してくれる。

そして曲として歌う前に、歌詞を読むということから始める。日本語にはない発音が多く存在し、それが大きなハードルになることをAliもよく知っている。

それから発声方法。西洋音楽とは異なる喉の使い方をするので、これも難関だ。

一つのフレーズに「○」をもらうまでにかなりの時間を費やす。「OK」を言われたバージョンと、「違う」と言われたバージョンの違いがわからない、ということも多々ある。想像していたよりもずっとハードで、「これは前途多難だな」と感じる。

次回までの課題として、
・録音したAliの歌をよくよく聴いて練習する。
・特に苦手な「ê」と「j」の発音を改善する。

Ali Tekbaşの歌を至近距離で聴きながら学べるなんて、こんなに贅沢なことはない。時間は限られているので、フル回転で取り組む。
次回は来週月曜日。

今日レッスンのあと、Aliと奥さんのRubar、まだ小さい息子RonîがみんなでBelgîz家に遊びに来るかも知れないと聞いていたのでAliに尋ねてみると、
「この後も大事なレッスンがあるから、自分はいけないけど、RubarとRonîは行くと思うよ」とのこと。

楽しみにして帰宅すると、まもなく帰ってきたBelgîzが、「Aliがレッスンで来られないからRubarも来ないんだって」。

画面越しには話したことがあったけど、まだ会ったことがなかったRubarに会えるのが楽しみだったのでちょっとがっかりする。

「まあ、Rubarはいつもこんな感じだから!近いうちに会えると思うよ!」近いうちに会えるといいな。

Belgîzと一緒に晩御飯を食べる。さっとサラダを作って、昨日作ったカレーと一緒に。
「すごく美味しい!」と喜んで食べてくれた。

食べながら、色々とヘビーな話をした。私は二つのことを同時にできないので、話をしていると食べる手が止まってしまう。

「全然食べてないじゃない!少し黙るから食べて!」

気を遣わせてしまう不器用な私。手が止まる、というだけでなく、楽しい話をしていると食べることがどうでも良くなる、という感じもある。

ササっと平げて、またヘビーな話をする。カレーのせいなのか、話のせいなのか、わからないけど満腹になって今日はおしまい。

明日は歌の練習をたくさんする。

以下、自分(と関心ある人)のためのレッスンメモ:
***********
「Dîno」。
形式:Şeşbendî(結婚式後に応接間で座った状態で歌われる歌)。
地域:Colemêrg(Eşîre:Pinyanişî)

Colemêrgに多数存在する部族の中で最も大きいのがPinyanişîとErtoşî。それぞれがより小さな複数のグループに分かれる。
Pinyanişî:歌中心
Ertoşî:ズルナやダウルなどの楽器を用いた音楽中心

「Dîno」というのはNasiroという男性のLakap(愛称)。
ある時争いが勃発し、アッシリア人のクリスチャンと、Dînoの親類とが共謀して、Dînoは殺害される。
「Dîno」はDînoのために歌われた哀悼歌。

Colemêrgは山間部の雪深い地域。かつては1年のうちの7ヶ月ほどが冬だった。冬以外の季節にはやるべき仕事がたくさんあるが、冬にはできることが少ない。
ということもあり、冬の間に結婚式が行われていた。10組ほど合同で行うこともあった。
Şeşbendîという形式をとる歌は、結婚式後に応接間で座った状態で歌われる。
同じ歌でもリズムのあるものとないもの、複数のパターンが存在する。
Şeşbendî以外にも多数の形式が存在する。例えばHeyranokやPayzenok。
クルド人は伝統的に、夏の間はZozan(高原)で過ごし、冬が来るまでにまた下山する、という生活を送っていた(現在もそのパターンで生活する人が多く存在する)。
Heyranokは、夏の間に若い男女の間に生まれる愛の歌だ。青々と輝く緑。花々が咲き誇る。そんな中で密やかに交わされる愛と、若者たちの溌剌とした高揚感が歌にあらわされる。
それと対になるのがPayzenok。草木は枯れ、冬に向かっていく。人々は下山して冬支度をする。2mもの雪が積もり、夏の間に出会った男女は互いに行き来することができない(そして次の夏になると、焦がれていた相手は既に別の誰かと結婚していたりする)。別れの哀しさ、また老いていく哀しさが歌い込まれることもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?