Erika Ueda

クルディスタン関係の旅行記、クルド文学作品の翻訳、コンサート・映画・舞台の感想など。

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クルディスタン関係の旅行記、クルド文学作品の翻訳、コンサート・映画・舞台の感想など。

マガジン

  • クルディスタン音楽修行の旅 2023春

    2023年4月4日〜6月30日、クルド音楽修行inトルコ、3ヶ月の旅記録。できれば毎日更新したい。

  • クルド文学

  • トルコクルディスタン(2019年3月)

  • トルコクルディスタン(2018年10月)

  • イラク&トルコクルディスタン(2019年9月)

最近の記事

『Şivan Perwer 50年間の創作』(著:Kakşar Oremar)

『Şivan Perwer 50年間の創作』(著:Kakşar Oremar) Şivan Perwerのような人は、単なる一個人としてではなく、己のアイデンティティの拠り所として見なされる。つまり、自分が自分自身として見られ、また民族的な属性をそれとして認識されるということである。70年代、北クルディスタンにおける「沈黙の断食」はŞivanの声によって打ち破られた。この時期、トルコ共和国建国に伴い、少数派の人々にとっては、虐殺、流血、蜂起、抵抗など、様々な困難に晒された時

    • 『“政治的”クルド音楽の2つのステージ -Koma BerxwedanとHunergeha Welat-』 (著:Darîn DOSKÎ)

      本稿は、Darîn Doskî氏がクルド語で執筆し、『Politik ART』に寄稿した論文を日本語に翻訳したものである。本日3月8日「国際女性デー」に先駆け、本稿でも取り上げられているグループ「Hunergeha Welat」が、新たな作品、"Stranên Kezîya Sor - Jin , Jiyan , Azadî" を発表した。「Hunergeha Welat」はこれまでにも演劇的な手法で音楽作品を制作しているが、今回の作品は組曲調で、そのスケールは圧巻。「女性の

      • 生ける伝説 Şivan Perwer 来日コンサート

        Şivan Perwerは、やはり生ける伝説だった。 主催者から、「Şivan Perwerを呼びたいけど大きな会場がないだろうか」と相談を受けたとき、私はその場ですぐに1000人以上を収容できる会場を探した。 そして最初に問い合わせたのが埼玉会館。1月14日のみ大ホールが空いているとのことで、即、仮予約した。 多分その翌日だったか、「ŞivanのOKが出た」と聞いた。 毎年のように「Şivan Perwerのコンサートをやる」と聞いていたが、さすがに大物すぎて、難し

        • Serdar Canan コンサートツアー 記憶を継ぐ 魂の歌声

          2023年10月8日〜11日、4日間4都市でのSerdar Cananコンサートツアーを開催した。Serdar Cananにとっては3度目の来日。 初来日が2022年5月。この時は京都大学のプロジェクトからの招きで、5月から8月までの4ヶ月間滞在していた。 2度目は2023年1月から2月にかけての10日間。東京藝術大学の招待による。 そして今回。背景事情は色々あるが、単刀直入にいうと私自身が招いた。この大掛かりな推し活について、記録しておきたい。 <Serdar Ca

        『Şivan Perwer 50年間の創作』(著:Kakşar Oremar)

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        • クルディスタン音楽修行の旅 2023春
          82本
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          4本
        • トルコクルディスタン(2019年3月)
          2本
        • トルコクルディスタン(2018年10月)
          17本
        • イラク&トルコクルディスタン(2019年9月)
          13本
        • イスタンブル(2018年6月)
          11本

        記事

          帰国しました@浅草

          楽器に優しい航空会社No.1トルコ航空で、イスタンブールから羽田へ12時間ひとっとび。機外へ出ると、まずその湿度の高さに日本を感じる。 空港でのサービスに関して、表面上丁寧なように見えて、実は外国人(非白人)に対しての言動が雑だなと感じるシーンがいくつか見えたりして、そこにも日本を感じる。 さて空港からの帰路。デカいスーツケース20kg×2個、サズ3本とリュック、というバカみたいな編成。サズ1本を背中に背負い、お腹側にはリュック、両肩にサズ1本ずつでスーツケース、というフ

          帰国しました@浅草

          サズ3本持ち込めるか問題@イスタンブール新空港

          朝からベッドシーツを洗濯して掃除機をブワッとかける。家主がバカンスに出かけているので、一人で好きなように過ごさせてもらいありがたかった。特にバルコニーで夜風にあたりビールを飲みながらタンブールをかき鳴らすのは最高だった。 引き続き体調が悪くなかなかエンジンがかからなかったが、よっこいしょとパッキングにとりかかる。本をたくさん買ったので、新しく購入したスーツケースとに分散させた。お土産に、瓶ものや陶器も結構買ってしまった。なんでこんなに重いものばかりチョイスしたんだろう。でも

          サズ3本持ち込めるか問題@イスタンブール新空港

          不調時の干渉はつらい 心配事だらけの最終日@イスタンブール

          クルドダンスナイトに参加したあと、Taksimのジーザス宅で一泊した。トルコではイベントやコンサートの開始時間が20:30や21:00とやや遅い。そのあとカドゥキョイまで帰ろうとすると、船の運航はもう終わっているので、メトロで何度か乗り換えてかなり遠回りしなければならない。 外泊は面倒なので気が進まないが、ジーザスの弟Fatihが「どこにいるんだ、何してるんだ、なんで来ないんだ」と頻繁に連絡してくるので、顔を出しておくことにした。 が、当のFatihは友達と外で飲んでいて

          不調時の干渉はつらい 心配事だらけの最終日@イスタンブール

          最後の最後にtembûr購入 Govendナイト@イスタンブール

          バルタサズを入手するまでは練習用に購入したkopuzでやりくりしようと思っていたが、やはり演奏会で使用するとなると心許ない。そもそもタンブール、セタールなどはNesimîという調弦で、リズムを刻みながら掻き鳴らす楽器だが、kopuzは調弦も異なるし、基本はアルペジオで奏でる楽器。つまり別物なのだ。そして私にkopuzに取り組むモチベーションは今のところない。 ショートネックのサズを購入した工房のAdnanに連絡してみた。彼が得意とするのはタンブール制作なので、きっと良い提案

          最後の最後にtembûr購入 Govendナイト@イスタンブール

          Waar TV “Pencereya Bakur” 放送日

          今日は5月にAmedで収録した番組の放送日。 Waar TVというメディアの新番組”Pencereya Bakur”(北の窓)の初回ゲストとして出演した。 リアルタイムで視聴してみる。 まるで若い女をフィーチャーしたみたいな演出に吹き出す。私が若い女ぶっているからだね、誠に申し訳ございません。 しどろもどろだし、内容も薄いけど、「なんかこの人楽しそうだな」という後味があるので、まあ良かったのかな。 などと思っていると、ジーザスから電話。 ジーザスは私が最初に知り合った

          Waar TV “Pencereya Bakur” 放送日

          私たちの退屈な日常@イスタンブール

          昨日Geverからイスタンブールに帰ってくると、Belgizが大きなハグで迎えてくれた。トルコ国内の移動なのに、「帰ってきた」という感覚。イスタンブールで過ごす残り一週間は、日常に戻るためのバッファだ。 遊びに来ていた彼女の友達と3人、バルコニーでビールを飲みながら、2週間の旅について話す。 Belgizは村の人たちをよく知っているので、あの人が結婚する、あの人には赤ちゃんが産まれる、あの人は昔あの人と昔付き合っていたけど、今はあの人と付き合っている、など、ゴシップも含め

          私たちの退屈な日常@イスタンブール

          Befircan クルドの村

          何をするでもなく、ぼんやり庭を眺めて過ごす。鳥の歌声、子羊や鶏の鳴声、流れる水の音、時折近所の人たちの話す声。太陽の光を浴びて輝く木々や草花の緑が眩しい。 夜は満点の星空の下で散歩する。虫の声、風に揺れる木々の葉の音、自分が歩く足音と村の犬GurzoとŞinoの足音。くっきりと浮かび上がる三日月と流れ星。Sinzîの木の葉の香りがどこまでも漂う。 Dengê Bêdeng 静寂の声、とSerdarが言っていた。 各家族の中で、Geverの街中で仕事を持つ人、村の仕事をす

          Befircan クルドの村

          お母さんのTenûr焼きたてナン@Befircan

          Nîşan以降の2日間は畑仕事を手伝ったり、ドイツから親の故郷を訪ねて来た女の子と会ったり、結婚式の招待状作りを手伝ったり、ゆるりゆるりと過ごしていた。 今日は朝起きてバルコニーで庭を眺めていると、重そうな鍋を持ったお母さんが家から出てきた。中には羊乳が入っていて、チーズ仕込み部屋に運ぶのだという。「これを置いたら、今からナン(パン)を作るんだよ」。 お母さんについていくと、Tenûr(タンドール)の部屋からモクモク煙が上がっていた。「これもクルドの仕事だよ」と言いながら

          お母さんのTenûr焼きたてナン@Befircan

          Nîşan 婚約披露式@Gever

          Serdarの弟SedatのNîşan(婚約披露式)。ベッドの上のお父さんの髪と髭もきれいに整えられる。私もJîyanに衣装を借りて身支度する。村のみんながCanan家の庭に集まってくる(というか、全員Cananだ)。 Serdarは家長として、お母さんと一緒に村の年輩の人たちをもてなす。Jîyanと従姉妹数人とでチャイの世話をする。私もチャイ係を手伝う。チャイグラスを下げてキッチンへ向かうとき、お父さんのベッドの側で、お母さんが一人、静かにお父さんの手を握っていた。 「

          Nîşan 婚約披露式@Gever

          ギャップがありすぎて危険@Befircan

          Bêroから昨日の夜「明日の朝ごはん、うちで一緒に食べよう!8:30ね!」と誘われていたので、8:25に訪ねていく。するとBêroが大笑いしながら迎えてくれる。 以前Bêroの姉のSemroに「明日一緒にGeverへ行こう。10時に来て!」と言われていて、9:55に行くとSemroはまだ寝ていて、「おっと!ここはクルディスタンだった!しかも村だった!」となったことがある。 その時、Bêroに「10時にってことだったから、8:30に起きて、シャワーして、朝ごはんを食べてきた

          ギャップがありすぎて危険@Befircan

          羊のいる高原へ ŞivanとBêrîvan@Gever

          朝からBêrîvan(羊の乳搾りをする女性)たちに混ぜてもらい、羊のいる高原へ向かう。15人くらいのBêrîvanがポリタンクを持って集まる。車が到着するとBêrîvanたちが大騒ぎしながらポリタンクを積み、乗り込んでいく。子羊も2匹乗せられる。 見知った人が何人かいて、彼女たちが他のBêrîvanに私のことを紹介してくれる。「さぁさぁここに座って、これにつかまって」座りやすいように設えてくれて、スカーフで顔を覆ってくれる。 車が走り出す。Zom(高原)までは30分くらい

          羊のいる高原へ ŞivanとBêrîvan@Gever

          Alîとお父さんの再会@Befircan

          朝ごはんを食べたあとは、バルコニーで庭を眺めながら1人でボーッと過ごす。聞こえるのは鳥のさえずりと風に揺れる木々のサワサワという音だけ。GurzoとŞîno(村の犬)も木陰で気持ち良さそうに寝そべっている。 村の人たちはみんなこの美しいBefircan村を愛している。ここで過ごしていると、ここから出て行きたくなくなる気持ちがわかる。 村の学校の年長組の卒園の日というので、ちらっとのぞきにいったり、隣の家の孫娘とお絵描きをして遊んだり、従兄弟のCivanとピスタチオを食べな

          Alîとお父さんの再会@Befircan