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「活動の目的すら変えてしまった」”さとおや制度”がくれた、想像以上の副産物【座談会】

ミャンマーとの国境近くにある学習センター兼養護施設「虹の学校」。運営を支援するためには①さとおや制度等の寄付、②オリジナルグッズ”Niji”を販売/購入する、③学校を訪問して子どもたちのために何かする、の主に3つの方法があります。

選択肢をご覧になるとお分かりになるように、”人との繋がり”を常に大切にしている虹の学校。今回は①の「さとおや制度」についてご紹介します。実際にさとおやになって虹の学校の子どもたちを応援しているお二人の座談会インタビューも行いましたので「さとおやって何?」「登録すると、どうなるの?」といった疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてみてくださいね。

▼「虹の学校」については、こちら。

マンスリーサポーター「さとおや制度」とは

虹の学校は子どもたちが学ぶだけでなく、生活している場所。そのため多くの運営資金が必要となります。加えて、現在は2018年に購入した新天地にて新しい校舎を建設中。活動場所を広げ、地域の発展にも貢献できるような空間を目指しており、そのためにも資金が必要なのです。

コロナ禍までは来校者からの支援に助けられてきた虹の学校ですが、コロナ禍の到来により、来校者がいなくなり、存続の危機に陥りました。そこで新しく生まれたのが「さとおや制度」です。この制度は、月額1000円から、特定の子どもを定期的に支援することができるもの。法的な里親とは異なりますが、支援者はFacebookのプライベートグループに参加したり、オンラインでさと子と交流したりすることができます。

さとおやとのオンライン通話の様子

なお、マンスリーサポーター「さとおや制度」以外にも「ワンポイントサポーター」という制度があります。一口5000円から行える「寄付」と、森合宿や大運動会など学校の恒例行事にスポットで寄付できる「お祝い・行事」の2部門から成っており「定期的な支援は難しいけれど、思い立った時だけ支援することもできるのかな?」とお考えの方にぴったりです。

さとおや座談会インタビュー

今回は、さとおや制度についてより具体的な内容をご紹介すべく、実際にさとおやとなり、虹の学校にも訪問した経験のあるお二人にお話を伺いました。

吉澤裕子さん(タイ在住歴11年)
諸熊麻帆さん(タイ在住歴5年)

虹の学校と出会って、変わったのは"私自身"

――お二人は、どのようにして虹の学校と出会ったのですか?

裕子さん:そもそもの始まりは、「ナデタイ」というグループのイベントに参加したことでした。ナデタイは、自作グッズ制作販売や、さまざまなチャリティー活動を通して虹の学校に寄付を行うボランティア団体です。

私がナデタイの活動に少しずつ参加するようになった頃、虹の学校が”大人向けスタディーツアー”を開催。参加者が一般向けに体験談を話すイベントがバンコクにて開かれ、私も参加したんです。そこで参加者の皆さんが「スタディーツアーに参加して、自分の人生が変わった」と感動の涙を流して話をされていたことに大きな衝撃を受けました。

「ここまで人の心を動かす虹の学校って、一体どんなところなんだろう」と強い興味を持つようになり、2017年に初めて子どもを連れて虹の学校を訪問。その頃はまだコロナ前で、さとおや制度はありませんでしたが、目がキラキラと輝いている子どもたちにたくさんパワーをもらって帰宅したことを今でもよく覚えています。

――ボランティアで訪問したつもりが、逆にパワーをもらったんですね。

裕子さん:そう。だって、子どもたちは自分で洗濯して、ご飯も自分たちで火を起こして作っていたんですよ。私から見ればすごく大変だろうなぁと思うのに、不平不満を言っている子は一人もいませんでした。

「洗えなかったから、昨日と同じ洋服を今日も着てるんだ~」と笑顔で話している子もいたし、自然の中で逞しく、そして幸せそうに暮らしている子どもたちの姿が本当に眩しかったです。過去、虹の学校を訪問した高校生が「ここには本物の豊かさがある」と言っていましたが、まさにその言葉がぴったりだと思います。

――訪問後、裕子さんご自身の活動は、どう変化しましたか?

裕子さん:それまでは、ほとんど自分の楽しみのためにナデタイの活動に参加していました。「人との繋がりが持てて嬉しい」「少なからず子どもたちの役に立てるなら嬉しい」そういった気持ちが原動力だったんです。

でも、訪問後は活動の目的がガラッと変わりましたね。「あのキラキラした子どもたちのために、もっと資金を生み出せるように”売れるもの”を作ろう!」と向上心が沸々と…。活動の意義をより強く感じられるようになったんです。

――すごい。そんなに大きな心境の変化があったんですね。麻帆さんは、どのようにして虹の学校と出会ったのですか?

麻帆さん:5年ほど前から、イベントなどでナデタイの販売ブースはよく目にしていたので、虹の学校についても、なんとなくは知っていました。

コロナ禍に入り、SNSで虹の学校のさとおや制度のことを知って「大変そうだな」と思って登録したのが、本格的に虹の学校との繋がりが生まれた瞬間でした。

実は当時「私がさとおやになったところで、大変な世界の状況が大きく変わるわけじゃないし、焼け石に水なのかな」と迷っていたんです。でも、さとおやになったことで変わったのは、”私自身”でした。

それまでも数多くの寄付やマンスリーサポーターなどを見てきましたが、いつも「支払って終わり」でした。でも虹の学校のさとおやになると、遠く離れていても実際に子どもたちとの関わりが持てるんですよ。

校長先生(以下、「とこ先生」)から「さと子と話してみませんか?」と連絡をいただいて、オンライン通話をしたり、学期末にさと子からビデオメッセージをもらったり…。昨年末には学校も訪問したので、さと子とリアル対面できて感動しましたね。

「微力だけど、役に立っているんだ」と思えることで、私自身が救われた気がします。虹の学校を訪れるとピュアな気持ちになれると言うか「これまでの自分勝手な不平不満って何だったんだろう?」と気付かされます。

裕子さん:SNSでさとおや制度のことを知ったんですね。嬉しい!

と言うのも、コロナ禍で学校に人が来なくなってしまって運営資金が底をつきかけていた時、とこ先生ご夫妻や私、その他のボランティアメンバーで「どうにかしなければ」と作戦会議を開いたんです。

その結果、生まれたのがさとおや制度。アイデア自体はもっと前からあったのですが、これを機に本格的に募集を始めよう!となり、スタートしたものです。

さと子に対する想い「やっぱり特別」


――裕子さんも、さとおや制度立ち上げメンバーのおひとりだったのですね!お二人はどのようにして知り合ったのですか?

麻帆さん:私たち二人が出会ったのは、さとおや限定のFacebookプライベートグループでしたね。裕子さんが「バンコクでさとおやお茶会をしませんか?」と呼びかけていて、私が「ぜひ!」と回答して、初対面が叶いました。

裕子さん:プライベートグループはきっと同じ想いや志を持っている人の集まりだから、皆で集まって話をすれば、運営資金を生み出す方法など良いアイデアが出るんじゃないかな~と思って声をかけました。

実際、反応してくれたのは麻帆さんだけだったけど(笑)。あの時は本当に嬉しかったです!

――お二人とも、さと子とはオンラインでの交流だけでなく、直接会っているわけですよね。先ほどの雑談でも「うちの子は…」と言ってさと子の話をされていましたが(笑)、さと子はやっぱり特別な存在ですか?

お二人:特別ですね~!

麻帆さん:虹の学校の子どもたちは皆平等に大切な存在ですが、さと子はその中でも特別かもしれません。

この間、さと子が誕生日だったので、欲しいと言っていた漫画を送ってあげようかな?と思ったんですよ。でも「その子だけ特別扱いするのも、どうなんだろう?」という迷いもあって…。かと言って、全員の誕生日にそれぞれプレゼントを送るのも現実的ではないし…。

色々考えたけど、やっぱり送りました。「自分のことを気にかけてくれている人がいる」と知って欲しかったので。

裕子さん:そうやって迷ったり葛藤したりするのも”想い”があるから。とこ先生も、そうした”想い”をいつも尊重してくれますよね。

麻帆さん:そうそう。

昔から抱いていた関心が今、形に


――お二人はもともと、国際協力に興味をお持ちだったんですか?

裕子さん:私は、高校時代からずっと興味がありました。ユニセフのCMなどを見ては「私は世界中の子どもたちの母親になる!」と思っていたんです。

大学卒業後は保育士の資格を取って、どうしても就職したかった養護施設の選考を受けたのですが、採用に至らず…。当時は他の施設を受ける気になれなかったので、カナダに行ってベビーシッターをしてみたり、帰国後に保育士として働いてみたりして、そのうち結婚してタイに来ました。色々なことに夢中になっているうちに、高校時代に持っていた想いを忘れてしまっていたんです。

でも、とこ先生に出会った時「私がずっとやりたかったことを、この人がやってくれている!」と感動しました。だから、私はこれからも、とこ先生や虹の学校をできる限り応援していくつもりです。

麻帆さん:感動的な話…。私も、もともと関心はありました。タイに来て、道で物乞いをしている人を見かけるたびに耐えられなくて、お金や物もあげていました。

でも、さとおやになってから変わりました。物乞いの人たちにお金をあげることは簡単かもしれないけど、やっぱり根本的な問題解決には”教育”が必要だと思うので、私はそれを信じて虹の学校を応援している。そう考えられるようになったんです。

自分の子どもたちにも、物乞いの人の前を通り過ぎる理由として「お母さんは”世界”が変わるように行動しているから」と、ちゃんと説明できるようになりました。

――最後の質問をしてよかったです…!お話を聞いていて、お二人とも、ボランティアを通じて”想像以上の副産物”を得られているんだなぁと感じました。ありがとうございました。

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