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「ファッションショー」を終えて。

倒れるように寝て、朝娘の声で目覚めた時、なんだか全部が夢だったんじゃないかって思った。


昨日は自分のブランドの秋冬のファッションショーをした。


東京国際フォーラムで、朝から夕方まで合計260名のお客様が来てくださり、ショーを楽しんでくれ、実際にお洋服もたくさん予約を頂けた、夢のような一日だった。


「デザイナーです」と自己紹介をするのだが、私は今でも、その言葉にフィット感がない。それはショーに出てくるお洋服たちに使われている「糸」から、最後のお洋服が作られるまでを、全て「インド」で完結する、そのプロセスからものづくりをしているからだ。ミシンで形を作るのは本当にものづくりの最後の段階だといつも思ってきた。


つい二週間前も南インドのコインバトールという農村部に行き、「日本人は初めてきた」と言われながら手織りをするおばあちゃんたちとオリジナルの生地開発について話をしていた。

南インド、Erodeという地域の手織り工房。

糸からはじまり、国際フォーラムのこのショーまでが一本の線で繋がって見えることは、私にとって、それが何より作品であり、アートだった。

前回のショーの倍ほどの予約を受けられたことは、純粋に嬉しい。けれど、現代の日本でこのアートを実現し、表現できた喜びは何より自分の誇りになった。


最後のショーのフィナーレで挨拶するためステージに出て、引き返している時、来てくださったお客様からの拍手が本当に大きくて、だんだん、大きくなっていくように感じて、会場の裏についた瞬間に「ああ、涙が出てきた・・・・。」と一緒に引き上げたチームメンバーの尾崎さんと若松さんに言った。


「私もです・・・。」って二人も涙目で私の気持ちを受け止めてくれた。


その後すぐに予約会場にいるパタンナーの後藤のところに行ったら、もっともっとたくさんの涙が出てきた。私が作るラフで、実現したいけれどできないコンセプトを、ずっと受け止めてきてくれたから。そんな後藤さんに泣き崩れるように抱きついてしまった。


「ありがとうねえ。私の無茶振りをいつも受け止めてくれて。」と泣きながら伝えると彼女は「これからだと思っています。」って力強く私に言ってくれた。


ショーの裏でモデルさんを指揮する仲間、ものづくりを支えてくれる仲間と、同じ瞬間に、同じ深さの喜びを抱き、なおかつ同じ未来を既に見据えられている。私はこれは「夢」だと感じていた。


でも、朝起きても夢じゃなかった。


1日に4回のショーをしたが、2回目に、元イッセイミヤケの社長さんが来てくださった。

社長さんから10年くらい前に「アパレルはビジネスとしてリスクがすごく高い。危ないんだから、やるなよ」とバッグ(鞄)をしてきた私にアドバイスをくれた時があった。


ずっとその言葉は引っかかってはいたけれど、初めて、ショーに招待をした。


「頂いたアドバイスと逆なことを言ってすみませんが、ショーに来てください。」ってメールをした笑。


来てくれるなんて思わなかったから、前列に座っている彼を見た時に心臓の音が聞こえた。


ショーが終えて、どんな感想を一言目に言われるんだろう・・・と内心ビクビクしていた。


予約会場で会った瞬間に

「照明が暗いぞ。」と言われた。。。。苦笑。


「す、す、すみません。」(内心、何度もチェックしているからそんなことない!って思っているんだけど)


驚くべきことに、その後30分かけて、山ほど、心にグサグサ刺さる、具体的なマーチャンダイジングのポイントをくれた。


厳しい意見もたくさんあったけれど、批判が嬉しかった。


最後に、彼は「ファッションはリスクがでかいぞ」ってまた10年前と同じことを言った。


でも今回は付け加えてくれた一言があった。

「当たればでかいぞ」って。

昭和のドラマのワンシーンのような、彼の去り際のセリフに、地球くらい大きな愛情に包まれた感じとエールをもらったような気がした。

思えば、これまでの人生、本気で指摘してくれたり、批判してくれた人が、私に本当に進むべき道を教えてくれてきたように思った。


賛同することは容易でも、本気で反対することはエネルギーと愛情が必要だ。


でもそれがエールであることを私は馬鹿だから、長年かけてようやく気がつく。


そして、本気の表現で恩返しをするんだ、って心に決める。


ショーが終わって、放心状態の中にいたとき、洋服を作ってくれたインドの自社工場のトップ、スヤシさんからwhat’s upがきた。


私は、ステージ裏から、モデルさんの動画やショーが始まる前に上映した現場の手紡ぎや手織の動画をwhat’s upで中継していたから、同じタイミングで工場も見れたんだ。そしたら

「涙が出るよ。こんなふうに、インドを表現してくれて、こんなふうに、たくさんのお客様が見にきてくれて。出会えたことに心から感謝しています」って書かれていた。

なんと彼のお母さんも、ショーの動画を見て、感想を送ってくれた。

「今回、インドの伝統音楽と融合させ、インドの伝統工芸をプロモーションしてくれたそのやり方に、涙をしています」と。


私はそんな大それたことを企画したつもりはなかったんだけれど、ショーという形態そのものへの挑戦は、「メッセージを伝える」ことがデザイナーの究極目的なら意欲的にやりたいと思って、素晴らしいシタールとタブラというインド伝統楽器の奏者さんをお呼びして協力してくれた。


そのことがなんとインドにいるみんなにとっては、とても嬉しかったんだと後から知った。


色んなことが、前向きなエネルギーとして循環しながら進んでいく。


誰が始点とか、終点って本当になくて、それぞれが何かのきっかけで、小さなポイントに共鳴しながら動き始め、気がつくと徐々にある種の気が生まれ、エネルギーの総体が視認できるようになる時がある。

昨日のショーは、それを視認性あるものに変える瞬間だったと思う。

視認性のあるものに変える機会は、ある意味、今の自分を直視することだから、ちょっと怖いし、できれば避けたいって、私もそう。

でも今自分がいる場所に気がつけることは、痛みやストレスがあっても、必ず次の場所を照らしてくれるんだなって思ったから、これからも逃げないで、進みたい。

昨日一日の思い出のアルバムをこちらに貼っておこう♪

シタール奏者の武藤 景介さんと、タブラ奏者のディネーシュ・ チャンドラ・ ディヨンディさん。
会場のポスター。ショーのテーマは「Chaotic Street」でした。
クリエイティブを発揮してくれたヘアメイクチームの皆さん♪
舞台裏で、出番待ちのモデルさんたち。プロフェッショナルでした。
ルックの一部です。上下共に、手織り生地です。
イギリスの植民地時代からあるトラッドなチェック柄。
ルックのほとんどがユニセックスです。
糸から、五色のカラーで染めたトップス。
このボストンバッグは、バングラデシュで作った。
セーターはネパール!
同じ青でも、素材によって、違う。Beyond the Difference, Something in Common.


フィナーレを終わって、挨拶し会場を去る時。カメラマンさんこんな瞬間まで撮ってくれてたんですね!(涙)会場の壁画もインドのアーティスト作品。
ショーが終わり、予約会場でパタンナーの後藤さんに泣き崩れる私。
予約会場
チームEY!本当に、感謝しかありません涙。。。。
左から尾崎さん、若松さん、私の右が佐藤さん、右端が立石さんです。
みんな役割があるけど、それを超えてやっているので、ちょっと省略します笑。
EYチームボスの大島ちゃんと控室で。(シーズン超えるほど、強くなってる!)
イベントを共に作ってくれたスタッフみんなと奏者のお二人と。(私だけヤンキー座り健在)
この手はEYってことだけど複数名逆になっているよ♪ あはは。
お洋服を作ってくれたインド、コルカタ工場のみんな。

これからも愛も希望も届けるぞ〜!!!!  

素晴らしい一日を共にしてくれた皆さん、本当にありがとうございました。

そして、今回来れなかった方も次回は是非!(今のところノープランですが!笑)

                        
                        2023, 7, 30 山口絵理子

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