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『奈良少年刑務所詩集』寮美千子・編

私は普段、だいたい
「あの本買いたいな」と検討をつけてから、
本屋に行く。
そしてだいたい毎回、
思っていたのと全く違う本に出会ってしまい、
そちらと御帰宅の運びとなる。

今回の
『奈良少年刑務所詩集
空が青いから白を選んだのです』
寮美千子・編
単行本:長崎出版
文庫本:新潮文庫
も、そんな出会いの一つ。

この本を見つけた時、
その場から動けなくなってしまった。
もともと買うつもりのなかった本だと思ったけど
この本を買わずにはここを出られないと
直感した。

普段詩集なんてほぼ買わないし、買うとすれば
海外の有名詩人の詩集くらいだったけど、
この本は、すぐに買った。
買ってきたその日の晩に読みはじめた。
一晩でほぼ読了。
残りも次の日に読みおえた。

号泣に次ぐ号泣。
隣で横になっていた彼が心配するほどに、
大号泣。

父方の祖父が医療刑務所の看守だったとはいえ
少年刑務所の事なんて何も知らないし
少年刑務所には
どんな傾向のどんな人たちが
入ってるかも想像つかなかった。
そもそも、少年院と勘違いしていて
未成年ばかりの所かと思っていた。
(実際は17-24歳なので、成年者も混ざっている)
周りにも受刑者やその家族はいない。
だから、どんな詩が編まれているかも
全く予想できなかった。

読んでみたら、
本当に素晴らしかった。
素直な言葉で、
簡潔な表現もあれば
垢抜けない作品もあったけれど
それぞれに
心から紡いだ言葉がキラキラと輝いていた。

苦い想いでも、
寂しい想いでも、
悔しい想いでも、
彼らの心を通って濾過された言葉たちは、
やっぱり輝いていた。

彼らは犯罪を犯した人たちで、
罪を償っている途中で、
犯罪の裏には被害者がいる。
だから彼らのことを美化して語るのは
筋ではない。

でも同時に、
編者の寮美千子さんが何度も書いているように
「何でこんなに美しい言葉を紡げる人たちが?」
と思わせるような作品の数々である。

作品自体も素晴らしかったけれど、
私の心の琴線に触れたのは、
寮美千子さんの解説。

受刑者たちが、
詩を通して自分の心のうちを表現することを学び
自分を省みたり、心が安定していったり、
「やりたい事」を見つけていったり。
その過程を、自分の事のように
心から喜んでいるのが伝わってきて、
私まで嬉しくなった。

私自身、中学校でサポーターとして
「困り感」のある子供たちと接してきて、
その子たちが学年を経るにつれて
成長していく姿を見るのは
本当に、本当に、嬉しかったし、感動だった。
私自身が学ばせてもらってると思うことも
多々あった。
犯罪者であろうがなかろうが、
人の成長を目の当たりにすることは
自分の成長を実感できるのとはまた違う
格別の喜びがある。

編者の寮美千子さん、講義助手の旦那さん、
刑務所の教官やその他の職員の方々なども
そうやって一人一人の受刑者が
罪を償いつつ、
人間として成長していくのを見るのは
感動もひとしおだろうなと想像して、
後から後から涙が出てきてしまった。

こういった輝ける作品を通して、
普段あまり考えることのない
少年犯罪とそれを引き起こす背景や
少年刑務所について
想いを馳せてみるのは無駄ではないし、
彼らとこの社会を共有する一員として、
必要なことだと思う。

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